タバコ風のパッケージと、中に入っているシャボン玉スティックのギャップが心をくすぐる「バブルシガレット」。
東京藝術大学の学生が制作したこのアイデア商品が、最近注目を集めたのを知っているでしょうか?
はじめて発売された2023年の藝祭(大学祭)では開催から間もなく完売。9月に開催された2024年の藝祭でも早々に完売しており、2年連続で反響を呼びました。
そんな「バブルシガレット」について、今回の藝祭で中心的な役割を果たした伊藤来晏さん(プロデューサー/モデラー)と、市丸蓉さん(アートディレクター)に話を聞きました。
なお、「バブルシガレット」は9月11日から10月14日(月)まで、ECサイト・王様のアイディアで予約販売を実施中。好評であれば、予約終了後の通常販売も検討するとのことです。
学生たちが技能を持ち寄って制作した「バブルシガレット」
──前回の藝祭では、東京藝術大学の工芸科2年生の方を中心に制作したそうですが、今回も同じメンバーで制作されたのでしょうか?
伊藤来晏 今回は開発というよりも運営の面が大きかったので、プロデューサーの伊藤とアートディレクターの市丸のみでほとんどの業務を行っています。
──なるほど。では、どのような経緯で「バブルシガレット」開発当初の制作に関わるメンバーが集まったのでしょうか?
伊藤来晏 アートディレクターの市丸が、アイデアを実現できそうな友人に声をかけたのがはじまりです。声のかかったメンバーが、モデリングやグラフィック制作・映像・灰皿制作など、得意なことを持ち寄り、少数精鋭で分業しながら制作しました。
ちなみに今回の藝祭では、前回販売した灰皿は取り扱いませんでした。オンライン対応も未定ですが、Instagramで灰皿を制作した作家の名前を記載しているので、DMをいただければ作家に繋ぐことはできます。
友人との他愛のない会話から生まれた「バブルシガレット」のアイデア
──タバコとシャボン玉の吹き棒を組み合わせるアイデアは、どこで生まれたものなのでしょうか?
市丸蓉 大学生活を過ごす中で、喫煙者同士のコミュニティがあることを知りました。ただ、知らない人とも仲良くなる姿に羨ましさも感じつつも、喫煙したいわけではないと。
そのことを友人に話すと、「タバコのフリしてシャボン玉を吹いたら面白いのではないか?」というジョークで盛り上がったんです。
藝大はせっかく色々なことができる友人もいる環境なので、このジョークを本当に形にしてみたいと思ったのがはじまりです。
──友人同士のやり取りから面白いアイデアが生まれ、販売までこぎつけたのが凄いです。ところで、シャボン玉の吹き棒は、当初の3Dプリントが壊れやすかったという理由で、製造方法が途中から金型成形に変更されていますよね。
伊藤来晏 開発当初は藝祭2023のみの販売を想定していました。壊れやすさもそうですが、数もそこまで用意するつもりがなく、自宅と学校の3Dプリンターで地道に少しずつ制作していたんです。
ですが、藝祭2023が終わった後の受注生産の注文が想像以上で。生産が全く追いつかなくなり、それが工場生産に切り替える最大のきっかけになりました。
当時は脆いまま広まる商品と、お客様をお待たせしている申し訳なさで、藁にもすがる思いであちこち問い合わせていました。もっと早く対応できればよかったとも思いますね。
──反響の裏ではかなりの苦労があったんですね。
学内の人気がない場所でミーティング、テストを行った日々
──制作を振り返って、造形やデザインでこだわった点はありますか?
伊藤来晏 本体の開発においては、タバコのイメージを崩さずにシャボン玉がうまく出る形状をつくるのが非常に難しかったです。
何回もテストを繰り返し、内部にシャボン液を溜める溝とテーパーを設計し、液の逆流を防ぐ空気穴をタバコのフィルターに見せて、機能とタバコらしさを兼ね揃えた良い形に落ち着けたと思っています。
伊藤来晏 また、プロデュースの観点から、パッケージの色が全8種で被らないようにしています。今回の藝祭で販売した2種類の新しいパッケージの制作では、新たにデザイン科2年生の堀翔太さんにご協力いただきました。
業者の方々などを含めると前回よりもずっと大規模になっていて、家族などたくさんの方の協力で成り立っています。ありがたい限りです。
市丸蓉 パッケージに関して言えば、タバコの箱と同様にポケットに入れやすく、内容物がぴったり入ること、一見タバコのように見えることを追求しました。
──制作中の印象に残っているエピソードがあれば教えていただけますか?
市丸蓉 藝祭で発表するサプライズ感を出したかったので、実はメンバー以外には、家族にも情報を漏らさないようにしていて。開発中はずっと学内の人気がない場所で隠れてミーティングやテストを行っていました。
本体の最初のモデルが出来たとき、みんなで集まってこっそりシャボン玉を吹いたときのワクワクした瞬間は特に忘れられない思い出です。
──青春ですね! では最後に、これまでの反響を受けて、何か変わったことがあれば教えて下さい。
伊藤来晏 これまで業者様やECサイト様など、たくさんの方にお声がけやご協力をしていただきました。社会で大人と対等に話す経験を学生のうちにできたことは、とても貴重で有意義で、成長に繋がったなと感じています。
アルバイトだけでは経験できないことばかりで。こうして記事にしてもらうことも、「バブルシガレット」がなければ得られない社会経験だったと思います。ありがとうございました。
【伊藤来晏さん、市丸蓉さんのプロフィール】
伊藤 来晏(プロデューサー/モデラー)
鍛金という金属工芸の専攻(工芸科鍛金専攻)に所属しています。
鍛金技法で代表的なものは刀剣や雪平鍋などです。
プロダクトデザインに興味があり、工芸だけでなく様々な分野を横断した技術を用いて素材研究や作品製作を行っています。
市丸 蓉(アートディレクター)
普段は彫金という金属工芸の専攻に所属しています。
主にジュエリーや七宝など繊細な金属加工を勉強しています。
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