連載 | #2 カイユウクリエイターズファイル

映像チーム・ONIONSKINインタビュー ──MVとアニメーションの可能性

映像チーム・ONIONSKINインタビュー ──MVとアニメーションの可能性
映像チーム・ONIONSKINインタビュー ──MVとアニメーションの可能性

ONIONSKI( 左:小野はなさん 右:田村聡和さん)

neco眠る、トクマルシューゴ、来来来チームといった一癖も二癖もあるアーティストたちの楽曲のMVを手がけ、役者の動きをアニメに取り込むロトスコープ、クレイなどのあくまで「アニメーション」の手法にこだわり続ける映像ユニット・ONIONSKIN(田村聡和、菅谷愛、小野ハナ)。気鋭の映像作家を集めた書籍『映像作家100人 2013』にも選出されるなど、その作品の評価は高い。
Vampillia - ice fist
大阪出身のブルータルオーケストラ・VampilliaのMVでは、その静寂と怒濤が押し寄せる楽曲の世界観を手描きアニメーションで表現。楽曲「endless summer」「mirror mirror」、そして4月23日に公開された「ice fist」のMVをてがけ、近年のバンドの勢いもさることながら、MVの高いクオリティもソーシャルメディア上などで話題となっている。

まだ全員20代の若い映像作家たちが目指すものは何か、映像シーンに何を観ているのか。VampilliaのMVの制作秘話と共に語ってもらった。彼らがてがけた作品や、関連するMVと共に掲載!

映像制作チーム・ONIONSKINの成り立ち

Vampillia - mirror mirror (bombs BiS)
────今回のVampilliaとBiSによる楽曲「mirror mirror」のMV、とてもすばらしい出来で、BiSのファンからも好評だと思います。ONIONSKINはいまどのようなメンバー構成なのでしょうか。

田村 2011年のはじめに菅谷(愛)さんと僕で結成して、「mirror mirror」から小野ハナさんが正式にメンバーとして参加してもらっています。みんな東京藝術大学大学院のアニメーション学科を専攻しているんです。小野さんは卒業しちゃいましたけど。僕と菅谷さんが本当に絵ができなくて……多分藝大の中で一番絵が下手だと思います(笑)。小野さんが加勢してくれたのは本当にありがたかった。

VampilliaのMVは、今までの手法とは違うやり方でやろうというのがまずありました。すごく物語を感じる曲だなと思っていたので、キャラクターがいて、ストーリーがあるような作品をつくりたかったんです。

制作にとりかかる前に、小野さんが、学校と関係なく「Origami of landscape」というタイトルの短い1分ぐらいの抽象アニメーション作品をアップロードしていて。たまたま同じ学校というのもあって、動かすのは僕らがやるので絵を描いてもらえませんかとお願いしました。

彼女は仕事がすごく早くて、お願いしたら次の日ぐらいに上がってくるんですよ。そのあたりからすぐにメンバーになってほしいなと思っていたんですが、結構、誘うほうも心配じゃないですか(笑)。単純に卒業したら就職とかするのかな? っていう疑問もあったから。
Onohana - Origami of landscape
──未来まで責任持てるのかな? みたいな心配ですよね(笑)。

田村 そうなんですよ。僕らも羽振りがいいわけではないので(笑)。でもその頃、2人で活動を続けるのも飽きてきていた。僕らは特定の手法とか、イラストレーター的な決まったビジュアルやキャラクターとかがいるわけじゃないので、毎回一からその曲にあった作風を考えるという手法でやっていて、2人で幅広い表現を持つのにも限界を感じていた。もっと人を巻き込んでワイワイやりたいな、と。

だから、どこかでまた小野さんを誘えるタイミングがないかなーと思っていたら、またVampilliaのMVのお話が来たので、正式に誘おうと決心しました。何となく「この人、就職しないな」って察知したのもあります(笑)。

ボーカロイドから手描きアニメーションの世界へ

──小野さんも、もともとMVの制作に興味があったんですか?

小野 私は、実はニコニコ動画出身で、もともとがっつりとボカロ曲のMVをつくっていたんです。そのうちの一曲はミリオン(100万再生)までいったこともあります。

大学院に入ってからは別のジャンルで活動していて、MVをつくるのは趣味の範囲で続けていたのですが、ONIONSKINから「MV制作に興味ありますか」と聞かれて、もう一回できればいいなって。
【初音ミク】ドミノ倒シ【オリジナル曲PV付】

田村 そういう出自もあったので、誘いやすかったです。アニメーションつくっている人ってMVをやる人/やらない人ではっきり分かれていて。小野さんの場合はボカロの曲をやっていると知っていたので、当然やるだろう! と思っていました(笑)。

小野 アニメーション専攻に入る人って「自分のアニメーション」がつくりたい人が多いと思うんですが、ニコニコ動画でのボカロシーンのように匿名性のある活動にも興味があったし、私はいろんな人と一緒につくるのも楽しい。自分の名前は出さなくても、アウトプットされるものに関われるのは嬉しいので、お誘いいただいたときも二つ返事でOKでした(笑)。

──最初、作風的には抽象的な「短編アニメーション」と呼ばれるジャンルにいる方なのかと思っていたので、まさかのボカロ出身だったとは、驚きました。

小野 2009年にニコニコ動画にアップしたのが初めてで、それまではアニメーションはほとんどやっていなくて、イラストの上に歌詞を順番に出すという形が多かったです。アニメーションをやった作品は5つぐらいだと思います。先ほどお話に挙げてもらった「Origami of landscape」のような抽象的な作品だけではなく、普通のストーリーもののアニメーションも制作しています。

田村 小野さんにとってMV制作は「実家に帰ってきた」みたいな感覚ですよね。

──「mirror mirror」も「endless summer」も手描きアニメーションですよね。制作にどれくらいの時間をかけているのでしょうか?

小野 描くのはそこまで時間はかからないです。

田村 いや、本当は凄く大変なんです(笑)。ただ、小野さんは描くのが早いんですよ。MVで手描きのアニメーションをやるのはリスキーで、普通はみんなやらない。絵は描いてもデジタルで動かすものが多い。でもアニメーションでMVをつくるんだったら、がっつり動かしたいという欲望がありました。

【次のページ】ミュージックビデオのシーン、Vampilliaというバンド
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