連載 | #2 カイユウクリエイターズファイル

映像チーム・ONIONSKINインタビュー ──MVとアニメーションの可能性

──様々なアーティストのMVを手掛けられている中で、他の方の作品に影響されることはありますか? またONIONSKINはどういう思想で活動されているのでしょうか?

田村 最近だと細金卓也さんと杉山峻輔さんが監督をされていたtofubeats「No.1」のMVは、モーショングラファーの人が実写を素材として扱って動画をつくるとこんな風になるんだ、と勉強になったし痛快でした。
tofubeats - No.1 feat.G.RINA(official MV)
田村 ONIONSKINという名義での活動に関しては、100%アニメーションにこだわってアニメという枠でどんなチャレンジができるかを考えています。アニメーションって動画の中でも特にコストがかかるのですが、その考え方も変えたいですね。

あとはエンターテインメントの気持ちは大事にしています。学校の関係もあるんですが、例えば「アートアニメーション」や「短編アニメーション」と呼ばれているジャンルに僕らはどっぷり浸かっている。ただ、どうしても日本では短いアニメをつくる場が学校にしかなくて、息が詰まりそうなくらい窮屈なんですよ。アウトプットとしても、いろんな可能性を探っていきたい。

日本のアニメーション作家でも、例えば水江未来さんが制作したトクマルシューゴさん「Poker」のMVが公開になりましたね。僕らも手描きで作品をつくっているし、トクマルシューゴさんの「Decorate」MVを僕らが制作したこともあり、水江さんは気になる存在です。水江さんのような方がどんどん先陣を切って世に出て行ってくれるのは、心強いです。
トクマルシューゴ - Decorate
トクマルシューゴ - Poker
田村 短編アニメーションの話をすると、どうしても「海外のほうが良い」といわれる風潮がありますけど、海外でもビジネスとして成功している人がほとんどいないという点では、日本と変わらない。むしろ、アニメというジャンルが受けいれられやすく、マーケットが整備されている日本の方が幸せだという見方もあります。

「アートアニメーション」の息苦しさから、広い場所へ

──Vampilliaも無国籍感がありますよね。日本人が演奏しているけど、ブラックメタルを源流にしていたり、ポストロックやハードコアの要素もあります。ONIONSKINの作品も、日本人がつくったようには見えないです。

田村 それは言われるんですけど、海外にウケるものをつくろうとかは考えたことはありません。単純に商業アニメ的な表現があまり得意じゃないのも理由なのかもしれませんが。担当させてもらうアーティストにもこだわりはなくて、いままではオルタナティブな方々が多かったので、今はポップスの人とやりたいです。ポップスのMVは、ある種のグラビアみたいな需要のされ方もしていて、その本人が映っていれば成立してしまうという側面がある。

特にアイドル関係はそういう方向性が多いのですが、逆にその領域でアニメーションがどんな風に影響を与えられるか挑戦したいです。あとは、海外やニコニコ動画でもそうですけど、リリックビデオが隆盛をきわめている。アニメーションとリリックを組み合わせた作品もつくってみたい。

小野 Twitterとかで反応を見ると、今回のVampilliaのMVがアートアニメーションだって言われて、私はそれが意外でした。「これアートアニメーションになるのか!」ってびっくりして(笑)。手描きでアニメーションをつくるという手段を使うだけでも、そう見られてしまう状況があります。

実写で映像を撮ることとか、CGで動かしたりとか、それと同じように手で描いているアニメもあるっていうことが浸透してくれればいいなと思います。アートアニメーションの抱える重さ、とっつきにくさみたいなものはなくしていきたい。いろんな曲を聞いていてもアニメーションを見ていない人たちの中に、曲と一緒に浸透していければいいですね。

田村 今の若い人たちってアートアニメーションって言われたら90%ぐらいの人が嫌がるよね。世代的に「アートアニメーション」というワードに対して閉じた印象を受けてしまう。そんなの関係なく、商業アニメと平行して見てもらえるのが本当は良いんだと思う。YouTubeをクロールしているとき、萌えアニメが映って、そのままVampilliaが映るっていうフラットな状況が理想。

小野 商業アニメには商業アニメの動かし方とか止め方とか表情の描き方とか、「アニメの文法」みたいなものが一般的に浸透していると思うんですけど、私たちの作品には、それとは違う思考回路でつくったものを挟んだり、忍ばせています。それだけじゃないよっていう指標になれたらいいですね。その動かし方だけが普通ではないんだよみたいな。

田村 Vampilliaにはもっともっと売れていただいて(笑)、僕らも人数も増やしながらさらに大きな仕事がしたいですね。映像のほかにもマンガとかもやりたい。そんな風に多角的に事業展開しながら、同じ世代のサラリーマンと変わらない生活ができるようになるのが目標です(笑)。全然仕事として成立していない後輩たちにとっての、アニメーションというジャンルにとっての、いい未来をつくっていきたい。
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ONIONSKIN

東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻在学中の、田村聡和、菅谷愛、小野ハナによるアニメーションユニット。2011年春結成。クレイ、ロトスコープ、モーショングラフィックなど様々なアニメーション手法を用いながら、ミュージックビデオを中心に制作している。電子書籍『a nimation&motiongraphicsVIEW2012』のリリース等も行っている。

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