あらゆるものを超越していく魂の共鳴
いつになく優しい語りが展開されると、映し出されたのは雪の降りしきる異界の風景。舞い散る雪に愛おしそうに手を伸ばすと、新形態「花譜 第五形態 雷鳥」が姿を現した。 まさしく冬の装いな新形態のお披露目は、登場が予告されていたゲストの1人目、佐倉綾音さんとのデュエットで飾る。様々なアーティストとのコラボプロジェクト「組曲」シリーズからの一曲「あさひ」は、儚くも力強い2人の歌声が美しく重なり合う珠玉の名曲。“集めたピースはそこら中に散らばして お願い ただわたしに触れて”
朗読のような語りから始まり、奥底から湧き上がる想いの絶叫まで、様々な心のありようを声で表現する2人によって強大なユニゾンが生み出される。あらゆるものを超越していく魂の共鳴に、誰もがただ言葉を失って立ち尽くす。
Mori Calliopeさんのシャープなライミングと、花譜さんのゆったりとした歌唱のコントラストで魅せたかと思えば、性質の異なる歌声を見事に融和させて、スペシャルなステージを2人で余すことなく楽しんでいく。 ハッピーなフィールをいっぱいに振り撒いたところで次なるゲストを呼び込むと、今度は#KTちゃんが賑やかにオンステージ。「組曲」シリーズの新展開「組曲2」のスタートが発表され、新曲「ギミギミ逃避行 feat.#KTちゃん」をドロップ。
花譜さんがリリックとフロウづくりに初めて挑戦したこの曲は、等身大でリリカルなリリックが表現者としての幅の広さを感じさせる。梅田サイファーのpekoさんがトラックを手がけた、跳ね回るディスコサウンドが楽しい一曲を、陽の権化たる#KTちゃんと一緒に歌う姿に、花譜さんの新たな一面を見た。
崩壊するリアルとバーチャルの境界
独特な言葉選びから滲む違和感がどうにも心地よい語りパートから、エキサイティングなDJタイム「KAF DISCOTHEQUE」へ。激ダンサブルアレンジのかかった「不埒な喝采」や「飛翔するmeme」にのせて、弾け飛ばんばかりに四肢を振り回すダンスグループ・elevenplayメンバーのダンスの熱狂ぶりは見事だが、観測者たちも負けじとペンライトを振り上げて狂乱の渦を巻き起こす。“微笑みや遠回りな言葉は きっとほの暗いダンスホールで ごちゃごちゃとした静寂に飲み込まれる”
締めの「魔的」でボルテージが上がりきったところで、花譜さんが再びステージに舞い戻る。「じゃじゃーん!早着替えの術~!」と茶目っ気たっぷりで披露したのは、花譜さんが自らデザインした新衣装「犀鳥」(読み:サイチョウ)だ。 長めのツインテ―ルにしっぽまで生えて、今までとガラッと印象の変わるキュートな新形態になったところで、音楽的同位体(音声創作ソフトウェア)の可不を呼び込み2人で「CAN-VERSE feat.可不」を披露。
身長差が生まれて姉妹のようにも見える2人が、仲睦まじく歌う姿に和まされるが、ORESAMAの本領発揮たるスーパーエレクトロポップでテンションがガッツリ引き上げられる。
そのまま2人で「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ feat.可不」へ。シーンを飛び越えてヒットしたハイパーキラーチューンを楽しそうに掛け合いながら歌い上げ、時折クラップやステップを揃える姿はなんとも微笑ましい。最後は揃ってポーズまでキメれば、観測者たちの上げる大歓声が、雷鳴の如くアリーナに轟いた。 そんな平和な一幕から一転、スクリーンに建設中のビル群が映し出され、一気にミステリアスな雰囲気が漂い始める。鉄骨の重なる無骨な風景の中を落下していく一つの影、その正体は花譜さんの新たな姿「VIRTUAL BEING KAF」だ。
今までより格段にフォトリアルになったという点ではリアルな一方、いくつものチューブに繋がれサイバーな雰囲気のスーツに身を包んだその姿は、リアルな人間の何倍もの大きさ。バーチャルの特性を活かして顕現する新表現に、好奇心が掻き立てられる。 目の前の光景に理解が追いつかないでいると不可思議な旋律が鳴り始め、そのまま「蕾に雷 feat.長谷川白紙」へ。
長谷川白紙さんがキーボードで幻想的なメロディを奏で、花譜さんが指揮をするように腕を揺らしながら歌う。2人の生み出す絶妙なアンサンブルも合わさって現実感がどんどん希薄になる。 すると、続いては大沢伸一さんが登場し、「わたしの声 feat.大沢伸一 (MONDO GROSSO)」を披露。
後光を背負ってパフォーマンスを繰り広げる2人の姿を目の当たりにし、バーチャルとリアルの境界が曖昧になる。腹の底まで響く重低音が、確かに肉体を現実に結びつける不思議な体験へと引きずり込まれていく。
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