連載 | #3 漫画百景 いま読むべき漫画たち

アジア杯の今こそ読むべき“異色”サッカー漫画 『GIANT KILLING』レビュー

アジア杯の今こそ読むべき“異色”サッカー漫画 『GIANT KILLING』レビュー
アジア杯の今こそ読むべき“異色”サッカー漫画 『GIANT KILLING』レビュー

『GIANT KILLING』9巻の書影/画像はAmazonから

時事とリンクするタイトルを新作・旧作問わず取り上げて、“今読むべき漫画”や“今改めて読むと面白い漫画”を紹介していく本連載「漫画百景」。

三景目は、『GIANT KILLING』です!

本作をこのタイミングで取り上げる理由は、ずばり「AFCアジアカップ2023」。1月13日からカタールで開催されている、アジアでサッカーが最も強い国を決定する4年に1度の国際大会です。

日本は1月14日に行われたベトナムとの初戦に4-2で勝利し白星スタート。目標である優勝に向けて一歩前進しました。

このアジアカップも描かれる『GIANT KILLING』を、今読むべき漫画として紹介します。

目次

監督が主人公の異色作『GIANT KILLING』

『GIANT KILLING』は、主人公が選手ではなく監督という異色作にして、今も進化を続けるサッカー漫画の革命児。

講談社の漫画誌『モーニング』連載されており、ツジトモさんが漫画、綱本将也さんが原案を担当している漫画作品です。

格上に勝利する番狂わせ=ジャイアントキリングが見どころ

本作の中心になるのは、日本のプロサッカーリーグで戦う弱小チーム・ETUとその選手、運営スタッフ、サポーターといった関係者たち。

主人公はかつてETUを牽引した元日本代表選手の達海猛(たつみたけし)で、彼が監督としてチームに帰還し、チームを再生させていく物語になっています。

毎年のように下部リーグへの降格の危機に瀕していたETUが、格上のチームから勝利を掴み取る番狂わせ=ジャイアントキリングが見どころです。

ETUの中心メンバーが集まった『GIANT KILLING』8巻の書影。右上の眼光鋭いキャラクターが達海

また、作者の画力も注目ポイントの一つ。

サッカーは広大なフィールドで計22人の選手が入り乱れるスポーツだけに、試合中どの場面にフォーカスを当てるのかが難しい題材です。

極端に言えば、シュートとゴール以外のシーンはボールが右往左往しているだけなので、漫画として山場をつくりにくい

野球のバッター対ピッチャー、バレーのスパイクとブロックの攻防と、わかりやすく盛り上がる場面をつくりづらいのです(サッカーではPKやFKがそれに当たりますが、そう頻繁に起こりません)。

そんなサッカーを多彩なコマ割り、要所での大胆な見開き、緩急巧みな演出でワクワクするものに仕立て上げる作者・ツジトモさんの画力は終始際立っています。

そして最後に作中における経過時間に触れておくべきでしょう。

2007年に連載がはじまり2024年に連載17年目を迎える本作は、本格的に物語が動き出すリーグ戦の開幕からまだ1年も経過していません。

なぜそれほどまでにゆっくりなのか? それは約1年に渡るリーグ戦で巻き起こるドラマを、多数のキャラクターの目線からじっくり丹念に描いているからです。次のページから詳しく見ていきます。

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テーマは「漫画を通して社会を知る」。 国内外の情勢、突発的なバズ、アニメ化・ドラマ化、周年記念……。 年間で数百タイトルの漫画を読む筆者が、時事とリンクする作品を新作・旧作問わず取り上げ、"いま読むべき漫画"や"いま改めて読むと面白い漫画"を紹介します。

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