時事とリンクするタイトルを新作・旧作問わず取り上げて、“今読むべき漫画”や“今改めて読むと面白い漫画”を紹介していく本連載「漫画百景」。
二景目は、『九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子』を紹介!
先日TVアニメの放送が開始された『ダンジョン飯』の作者・九井諒子さんによる作品集です。TVアニメ「ダンジョン飯」ノンクレジットオープニング
2023年末に最終巻が刊行された『ダンジョン飯』は、異色のグルメ漫画として名を馳せ、筆者の中では万雷の拍手と共にラストを迎えました(最高でした!)。
そんな傑作を世に送り出した九井諒子さんが、2012年に発表した『竜のかわいい七つの子』。収録作からは、後の『ダンジョン飯』へと繋がっていくエッセンスが確かに感じられます。
原作の完結と時を同じくして『ダンジョン飯』のアニメが放送されている今だからこそ、『竜のかわいい七つの子』を改めて読むべき作品として紹介します。
収録されている短編は、シリアスな復讐劇からちょっと泣けるいい話、直球のコメディまで様々なジャンルを網羅。世界観も、ファンタジーから日本昔話風まで幅広いものがそろっています。
さらに、ものによっては絵柄さえもガラリと変化している短編も。九井諒子さんの奔放なアイデアがギュッと詰め込まれた短編集になっています。
紛争状態の2つの国、似ているようで全く違う人間と人魚、すれ違って疎遠になった親子、古今東西でテーマとされてきた人間と自然など、反目する何かと何かがモチーフとして物語に組み込まれているのです。 これは『ダンジョン飯』とも共通した構造です。全面戦争を経験したエルフとドワーフに代表される種族間の対立をはじめ、各勢力のパワーバランスの均衡が背景にあることで、物語全体に奥行きが生まれていました。
『竜のかわいい七つの子』に収録されている短編も、キャラクター個人や作中世界が持つ背景・歴史がそれとなく示唆されており、短いながら読後感を印象的なものにしています。九井諒子さんの巧妙なストーリーテリングはこの頃から光っていたのですね。
不愉快なことや不都合なこともたくさんある生を、それでも精一杯に楽しみたいという、希望のようなメッセージを感じ取りました(そのほかにもいろんな読み方ができる滋味深い一作です)。
『竜のかわいい七つの子』の短編もそう。全く異なる7つの物語のそこここに、生きることの難しさと希望という相反する2つの要素が感じられます。
『ダンジョン飯』は読んだけれど『竜のかわいい七つの子』は読んでいない。あるいはアニメ『ダンジョン飯』から九井諒子さんの世界観にハマったという方は、ぜひこの機会に読んでみてください。
読めばお気に入りの一編がきっと見つかるはずです。
二景目は、『九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子』を紹介!
先日TVアニメの放送が開始された『ダンジョン飯』の作者・九井諒子さんによる作品集です。
そんな傑作を世に送り出した九井諒子さんが、2012年に発表した『竜のかわいい七つの子』。収録作からは、後の『ダンジョン飯』へと繋がっていくエッセンスが確かに感じられます。
原作の完結と時を同じくして『ダンジョン飯』のアニメが放送されている今だからこそ、『竜のかわいい七つの子』を改めて読むべき作品として紹介します。
九井諒子による7つの短編を収録した『竜のかわいい七つの子』
『竜のかわいい七つの子』に収録されているのは、戦争状態にある2ヶ国に住む青年と少女の交流を描いた「竜の小塔」、異種族間の埋められない溝と向き合う「人魚禁猟区」などの7つの短編。収録されている短編は、シリアスな復讐劇からちょっと泣けるいい話、直球のコメディまで様々なジャンルを網羅。世界観も、ファンタジーから日本昔話風まで幅広いものがそろっています。
さらに、ものによっては絵柄さえもガラリと変化している短編も。九井諒子さんの奔放なアイデアがギュッと詰め込まれた短編集になっています。
『竜のかわいい七つの子』と『ダンジョン飯』の共通点
『竜のかわいい七つの子』に収録されている短編は、ジャンルはバラバラであるものの、そのほとんどで相反する2者が描かれています。紛争状態の2つの国、似ているようで全く違う人間と人魚、すれ違って疎遠になった親子、古今東西でテーマとされてきた人間と自然など、反目する何かと何かがモチーフとして物語に組み込まれているのです。 これは『ダンジョン飯』とも共通した構造です。全面戦争を経験したエルフとドワーフに代表される種族間の対立をはじめ、各勢力のパワーバランスの均衡が背景にあることで、物語全体に奥行きが生まれていました。
『竜のかわいい七つの子』に収録されている短編も、キャラクター個人や作中世界が持つ背景・歴史がそれとなく示唆されており、短いながら読後感を印象的なものにしています。九井諒子さんの巧妙なストーリーテリングはこの頃から光っていたのですね。
生きることの難しさと希望を描く
筆者は『ダンジョン飯』を、終始一貫して描かれた食べること(=生)と食べられること(=死)を通した人間讃歌の物語──有限の命の循環のなかで、思い思いの生を全うすることを是とする物語だと捉えています(生死も相反する2つの要素ですね)。不愉快なことや不都合なこともたくさんある生を、それでも精一杯に楽しみたいという、希望のようなメッセージを感じ取りました(そのほかにもいろんな読み方ができる滋味深い一作です)。
『竜のかわいい七つの子』の短編もそう。全く異なる7つの物語のそこここに、生きることの難しさと希望という相反する2つの要素が感じられます。
『ダンジョン飯』は読んだけれど『竜のかわいい七つの子』は読んでいない。あるいはアニメ『ダンジョン飯』から九井諒子さんの世界観にハマったという方は、ぜひこの機会に読んでみてください。
読めばお気に入りの一編がきっと見つかるはずです。
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連載
テーマは「漫画を通して社会を知る」。 国内外の情勢、突発的なバズ、アニメ化・ドラマ化、周年記念……。 年間で数百タイトルの漫画を読む筆者が、時事とリンクする作品を新作・旧作問わず取り上げ、"いま読むべき漫画"や"いま改めて読むと面白い漫画"を紹介します。
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