女性監督の映画を紐解く評論集 山田尚子、タナダユキらの作家論を収録

女性監督の映画を紐解く評論集 山田尚子、タナダユキらの作家論を収録
女性監督の映画を紐解く評論集 山田尚子、タナダユキらの作家論を収録

『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』書影

映画研究者/批評家の北村匡平さんと、映画文筆家の児玉美月さんによる共著『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』(フィルムアート社)が、12月26日(火)に刊行される。

2人による西川美和さん、山田尚子さん、山戸結希さんらの作家論、女性作家作品ガイド100本、日本映画史における女性監督の系譜、次世代の新進作家の紹介などを収録。価格は2640円(税込)。

日本映画における女性作家の功績を取り上げ、歴史的な視座を交えながらその系譜をたどり、日本映画の過去・現在・未来を読み替えていくことを試みている。

日本映画界の性の不平等や不均衡の問題にせまる書籍

“「映画監督」と呼ばれる人々が一人残らず女性であったなら、当然そこに「女性監督」という呼称は生まれえない。かつて映画監督には、男性しかいないとされていた時代があった。”『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』序論より

そのような時代は果たして、本当の意味で過去になっているのか。本書『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』は、この問題提起を出発点とした書籍だ。

批評の対象を女性作家のみとし、大勢の男性作家のなかに含まれる数少ない女性作家、という図式を解体することからアプローチを開始。

日本映画の歴史にひそむ性の不平等や権力の不均衡の問題に迫り、日本映画史の捉え直しを目指した。

ゆれる』の西川美和さん、アニメ『平家物語』の山田尚子さん、『溺れるナイフ』の山戸結希さん、『マイ・ブロークン・マリコ』のタナダユキさんらが取り上げられている。

『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』で取り上げられる主な作家
西川美和、荻上直子、タナダユキ、河瀨直美、三島有紀子、山田尚子、瀬田なつき、蜷川実花、山戸結希、中川奈月、大九明子、小森はるか、清原惟、風間志織、浜野佐知、田中絹代……ほか多数

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書籍で論じられる女性作家たち

書籍情報

『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』

著者
北村匡平、児玉美月
発売日
2023年12月26日
定価
2,400円+税
ISBN
978-4-8459-2314-4
発売・発行
株式会社フィルムアート社

【目次】
序論 児玉美月

第1章 日本映画における女性監督の歴史 北村匡平
1 女性監督のパイオニア/2 胎動期──1950〜1980年代/3 黎明期──1990年代/4 ニューウェーヴ──2000年代/5 黄金期──2010年代以降

第2章 16人の作家が照らす映画の現在地 北村匡平+児玉美月
1 西川美和論──虚実、あるいは人間の多面性
2 荻上直子論──「癒し系」に「波紋」を起こすまで
3 タナダユキ論──重力に抗う軽やかさ
4 河瀨直美論──喪失と再生を描く私映画
5 三島有紀子論──陰翳の閉塞空間とスクリーン
6 山田尚子論──彼女たちの空気感と日常性
7 瀬田なつき論──どこにもない「時間」を生きる
8 蜷川実花論──恋と革命に捧げられた虚構の色彩
9 山戸結希論──すべての「女の子」たちへ
10 中川奈月論──世界の崩壊/解放と階段のサスペンス
11 大九明子論──意外と「だいじょうぶ」な女たち
12 小森はるか論──記録運動としての積層と霊媒
13 清原惟論──マルチバースで交感する女性身体
14 風間志織論──日常の細部を照らし出すフィルム
15 浜野佐知論──男根的要請とフェミニズム的欲望の闘争
16 田中絹代論──欲望する身体とセクシュアリティ

第3章 次世代の作家たち 児玉美月
「映画」が孕む暴力性への自覚/日本の社会問題と向き合う/独自の作家性を貫く/学園映画の異性愛規範に抗する/オルタナティヴな関係性を模索する/新たな属性を可視化させる/まだ見ぬ未来へのシスターフッド

〈付録〉女性映画作家作品ガイド100 児玉美月+北村匡平

あとがき 北村匡平


【著者プロフィール】
北村匡平(きたむら・きょうへい)
映画研究者/批評家。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。単著に『椎名林檎論——乱調の音楽』(文藝春秋、2022年)、『アクター・ジェンダー・イメージズ——転覆の身振り』(青土社、2021年)、『24フレームの映画学——映像表現を解体する』(晃洋書房、2021年)、『美と破壊の女優 京マチ子』(筑摩書房、2019年)、『スター女優の文化社会学——戦後日本が欲望した聖女と魔女』(作品社、2017年)、共編著に『川島雄三は二度生まれる』(水声社、2018年)、『リメイク映画の創造力』(水声社、2017年)、翻訳書にポール・アンドラ『黒澤明の羅生門——フィルムに籠めた告白と鎮魂』(新潮社、2019年)などがある。

児玉美月(こだま・みづき)
映画文筆家。共著に『反=恋愛映画論——『花束みたいな恋をした』からホン・サンスまで』(ele-king books、2022年)、『「百合映画」完全ガイド』(星海社新書、2020年)、分担執筆に『ロウ・イエ 作家主義』(A PEOPLE、2023年)、『デヴィッド・クローネンバーグ 進化と倒錯のメタフィジックス』(ele-king books、2023年)、『フィルムメーカーズ24 ホン・サンス』(宮帯出版社、2023年)、『ジャン=リュック・ゴダールの革命』(ele-king books、2023年)、『韓国女性映画 わたしたちの物語』(河出書房新社、2022年)、『アニエス・ヴァルダ——愛と記憶のシネアスト (ドキュメンタリー叢書)』(neoneo編集室、2021年)、『岩井俊二 『Love Letter』から『ラストレター』、そして『チィファの手紙』へ』(河出書房新社、2020年)、『フィルムメーカーズ21 ジャン=リュック・ゴダール』(宮帯出版社、2020年)など多数。『朝日新聞』、『キネマ旬報』、『文藝』、『ユリイカ』、『文學界』などに寄稿。

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