「アオイのままでいるよ」MC後にみせた”覚悟”の叫び
「一音一音、ひとこと一言に今の自分を込めて、感情を全開でみんなに伝えるので、ついてきてください。一緒に楽しみましょう!」とMCをまとめ、次に歌い始めたのは富士葵さん自身についてを歌ったバラード曲「Eidos」。会場のボルテージが一層上昇し、楽曲途中で会場の気温も少し高くなったように感じた。続けて歌う「MY ONLY GRADATION」では、グルーヴィーなロックサウンドで会場を盛り上げる。富士葵さんも「まだまだ!」と自分を鼓舞するように、叫ぶ。会場のボルテージも「Eidos」のパフォーマンスもあって、より一層熱く、より激しくサイリウムの光が揺れる。
サビではVisual Artist/空間演出ユニット・huezが手掛ける(外部リンク)レーザーの演出がロックサウンドに合わせて様々な色に明滅する。オーディエンスたちも、「グラデーション」という歌詞にあわせるように、サイリウムの色を赤と青を中心に黄色、緑と様々な色に点灯させる。富士葵さんの持ち味であるクリアな声と力強いボーカルを聞くことができ、彼女の歌の魅力が詰まっていた。
6曲目「Coke=High」では、富士葵さんがBメロで手を上にあげて手拍子。オーディエンスもそれに合わせ、手拍子。ここまで3曲も続けて激しいボーカルがあり、「Coke=High」もハイトーンを基調としたロックであるため、ラストは段々と息がつらくなっていたのか、下を向いて歌う様子もみえた。
曲を歌い終えた後に、すぐに水を飲む富士葵さん。「ちょっと待ってね」と息を少し切らしながら曲を紹介。セトリを自分で考えたという富士葵さんだが「このブロックきつすぎだろ! 過去の葵! 無理があるだろ!」と自らで突っ込みを入れていた。
富士葵の駆け抜けた6年
富士葵さんはここで自身の活動を少し振り返る。富士葵さんの音楽活動は、RADWIMPSの楽曲「なんでもないや」のカバーを2017年12月16日にYouTubeに投稿したことから始まった。
当時、バーチャルYouTuberの総数は2桁程度──現在のライブ配信を中心にした情景とは一切異なるバーチャルYouTuberの世界。バーチャルYouTuberという存在が流行を見せ始めた過渡期だった。
現在は星街すいせいさんや花譜さんなど、富士葵さんの他にもシーンを代表するような“歌姫”は多く存在する。
しかし、その当時に音楽をメインに活動するバーチャルYouTuberは、過去の当メディアのインタビューでも「歌のカバー動画というか、本格的に歌をメインに活動されている方は、当時はいなかったように思います! たぶん(笑)」と答えているように、その姿は見られなかった。そうした物珍しさや、たしかな歌唱力が注目を集めるきっかけになったのだ。 富士葵さんは「『なんでもないや』がみなさんに注目していただけて、それによって葵は引退せずに、こうして皆の前で6周年のライブが出来ています。ありがとうございます」とファンに感謝の気持ちを伝える。会場のファンたちも「ありがとう」と声援を送り、配信のコメントでも富士葵さんを称えるコメントが見られた。
この様子に富士葵さんは「エアドラムが聞こえますね(笑) ドゥクドゥン(笑)」と反応。バンドライブでは「あるある」の、ファンへ感謝を伝えるMC間にドラムパーカッションが入る様子を連想したしぐさをみせ、生バンドライブへの意欲も語った。
これまで富士葵さんは140本以上(年30本程度)のカバー動画を投稿(外部リンク)している。新しいスタートを切ったことで、いろんな歌をどんどん歌いたいとも話していた。
「それでは次の曲行きましょうか」とMCを終えると、富士葵さんは決め位置に立ってポーズを決める。
オーディエンスは曲がわかったのだろう。「おー!」という声が響き、「クリティカルシンキング」を歌う富士葵さん。背景映像には、リリックモーションが映し出され、MVの演出が再現されていた。楽曲は緩急のある拍子変化が特徴で、Aメロではゆっくりとした早さだが、サビに入ると歌詞が流れ込んでいく。
後方のスクリーンには先ほどの「クリティカルシンキング」のように、リリックモーションが流れる一方で、富士葵さんの踊る様子に合わせて影が入る演出が。リズムと共にに音程も次々に変わるこの楽曲。富士葵さんだからこそ歌える一曲だろう。
影が映える富士葵さんのダンス(筆者撮影)
4年間、声出しがライブができなかった
富士葵さんは1度ここで下手幕側へと移り、早着替え。再び現れると、富士葵さんを知る人にとってはおなじみの衣装に。クラウドファンディングでファンからの声援を受け取ったことで実現した、ヘアメイクをお披露目した際の姿に。
しかし、そこは富士葵さん。「興奮しすぎです」「なんか多分ちょっとだけ腰痛くなってきたみたいなのを、興奮で押し切ろうとしているのが見えてます(笑)」と無理してそうな年齢層の高い観客に向けて制止を促す場面も。
富士葵さんは今回のライブに来たきっかけを観客に問いかける。「チャリで富士山1周 フジイチをきっかけにライブ来てくれた人!」「チャリで山手線1周 ヤマイチをきっかけの人!」──ライブの集客を目指し、頑張って自転車をこいだ動画がきっかけの人を探す。
そして、「その中で今日レイパン(レーサーパンツ)を履いてきた人!」と聞くと、ごく少数のオーディエンスが手を挙げた。手を挙げたオーディエンスは筆者の近くにもいて、被っていたヘルメットがその手に。富士葵さんは「優勝だー! ありがとうね!」と喜ぶ。
実際にライブ会場に来場していたレーススーツを来た来場者(筆者撮影、撮影許諾済)
一方女性も3〜4割ほどいて「女子ー!」も負けじと応えようとする大きな声が聞こえた。そして「葵のこと好きな人ー!」には大きな歓声があがった。
「ちょっと応援するかな~!」と“キミの心の応援団長”をコンセプトに活動する富士葵さんらしい応援曲パートに移る。
「エールアンドエール」はコール&レスポンスを基調とした曲で、富士葵さんが「飛べー!」と煽るとオーディエンスもこの日最も高いボルテージに。オーディエンスは歌詞の「応援だ」の歌詞に息を合わせてレスポンス。配信も「うおおおおお」と興奮気味なコメントが多くみられた。
こうした応援曲は4年以上前につくられたものが多く、こうして息のあったオーディエンスをみると、富士葵さんを長年応援してきたファンが多く訪れていることが分かる。ファンも4年のブランクがあるはずなのに、さらに熱気が出るほどに息の合ったレスポンスを行えていたことには驚かされた。それだけの愛が、富士葵さんにおくられている。

この記事どう思う?
関連リンク
1件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:9403)
現地でライブ参加しました!
その時の感動が蘇ってくる素敵な記事でした。
これからも葵ちゃんのこと応援していきます!