連載 | #3 コミックマーケット102特集

「“コミケは戦場”と必要以上に煽らないで」代表が語る、同人誌即売会を取り巻く環境

「“コミケは戦場”と必要以上に煽らないで」代表が語る、同人誌即売会を取り巻く環境
「“コミケは戦場”と必要以上に煽らないで」代表が語る、同人誌即売会を取り巻く環境

「コミックマーケット102」の会場となる東京ビッグサイト

世界最大級の同人誌即売会「コミックマーケット102」が、8月12日(土)・13日(日)に東京ビッグサイトで開催される。

例年8月と12月に行われ、それぞれ夏コミ・冬コミと呼ばれるコミックマーケット(通称・コミケット、コミケ)。近年はコロナ禍の影響で、来場者数の上限をはじめ様々な制限を設けてきたコミケ。しかし、今回の夏コミではそれらを大幅に緩和。

コロナ禍でイベント開催について設けられた各種のガイドラインが廃止されたことを受け、1日あたりの来場者数の上限を撤廃し、さらに当日午後からの入場が可能になるなど、かつての熱狂を取り戻す準備が整いつつある。

とはいえ、現在の東京ビッグサイト全16ホールを使っての、1日当たりの上限撤廃後の開催は今回が初めて。コミックマーケット準備会共同代表・市川孝一さんも、「最後に人数上限を設けなかったのは2019年冬のコミケット97」と、運営面におけるブランクも指摘する。

コロナ禍ともそれ以前とも違う、新たな形での開催を前に、準備会代表が語る今後のコミケの立ち位置とは──(取材は2023年7月25日に行われた)。

取材:恩田雄多 文:オグマフミヤ

目次

“1日あたり十数万人”という来場者数の導き出し方

「コミックマーケット102」における変更点/画像は公式サイトより

──「コミケット102」では、1日当たりの来場者数の上限の撤廃という非常に大きな変更があります。決定にあたって、どんな経緯があったのでしょうか?

市川孝一 2022年12月冬の「コミケット101」以降、政府における新型コロナウイルス感染症の位置づけが、法律に基づき行政が様々な要請・関与する「2類相当」から、自主的な取り組みをベースとした「5類」に変わりました。

そうした変化を受けて、国、東京都、会場のガイドラインが廃止され、様々なイベント開催制限がなくなった。これを受けて、コミケットでも入場制限をなくしたいと思ったんです。我々も自主的に規制することはせず、1日当たりの来場者数の上限撤廃に踏み切りました。

──一方で、安全確保を目的とした人数のコントロールは行い、1日あたり十数万人の来場を目処としています。コントロールの目的や、十数万人という数字の導き出し方について、もう少し具体的にうかがえますか?

市川孝一 最後に人数の上限を設けなかったのは、2019年12月に4日間開催した「コミケット97」です。3年半のブランクは、我々スタッフの練度という意味で懸念点でした。参加者の方々にとっても久しぶりという状況の中で、いきなり上限をなくす影響は慎重に考えないといけません。

そもそも2019年冬の「コミケット97」では、東京オリンピックの影響で東京ビッグサイトの全ホールが使えず、西と南、そして仮設の青海展示棟の2拠点開催でした。1日当たりの人数上限なく、東京ビッグサイトの東・西・南の展示棟全16ホールを使っての開催は、今回が初めてなんです。

今までの経験からある程度の予測は立てられるものの、それでも東から西、西から南へといった人の流れが上手くいくのか、確証は持てないというのが正直なところでした。

──そういった意味での1日あたり十数万人であると?

市川孝一 ゴールデンウィークに開催された他の即売会イベントの動向を見ると、どこもコロナ禍に比べて来場者は増えていました。参加する方々のマインドも戻ってきているように感じるものの、さすがに来場者が以前のように20万人を超えるほどにはならないのではないかと考えています。

そうした状況も含め、ちょっと読み切れない部分はあります。その上で、あまりに多くの人が殺到して何かトラブルが起きてしまっては、今後の開催に響いてしまう。そうならないための運営側のコントロールを踏まえて、“十数万人”を目処にしています。

ふらっと来て入れるコミケが段階的に復活

4日間開催された2019年8月の「コミックマーケット96」。東京ビッグサイトと青海展示棟との2拠点開催だった。

──ちなみに1日で20万人というと、2019年に4日間開催された「コミケット96・97」と同規模です。当時と同じ数となると、現状ではまだリスクがあるということですか?

市川孝一 先ほど言った通り、過去に4日間開催したときは東京ビッグサイトと、一駅分離れた場所にある青海展示棟が会場だったので、両施設の間にも参加者の方々が移動していたんです。だから20万人全てが会場に入っていたわけではありませんでした。もちろん、その一方で一番人を収容できる東展示棟は使用できなかったりしたわけですが。

今回東京ビッグサイトの全16ホールが使えるからといって、上限を撤廃するのは「無謀なんじゃないか?」と思われる方もおられるかもしれません。しかし、実際にやってみないとわからない部分もある。年に2回しかないコミケットですから、1回ごとに経験を積み重ねて検証していきたいと思います。 ──入場に必要な証券の面でも大きな変化があります。午前・午後入場のリストバンド型参加証の販売において、抽選は行わず、午後入場のリストバンド型参加証は当日も会場外で販売されます。ここ数年はチケットの抽選入場制のため、当日行きたいと思った人が参加できない状況でした。

市川孝一 抽選入場制の場合、せっかくコミケットに行きたいのに、抽選が外れて会場に入れないという状況が生まれてしまっていた。我々としても、それだけは避けたい、改善したいと考えていました。

今回から当日も販売する午後入場のリストバンド型参加証も同様です。例えば初日の報道などを見てコミケットの存在を知って、「行ってみようかな?」と思った人が参加できる。「ふらっと来ても入れるコミケットに戻したい」という思いは、コロナ禍でチケットの事前・抽選販売を導入して以降、常にありました。

一方で、同じくコロナ禍での開催となった2021年12月の「コミケット99」から導入した「アーリー入場チケット」(午前入場より早く入場可能)は継続しています。導入以降、かねてから問題になっていた深夜来場者が激減しました。

ただし、チケットやリストバンド型参加証については来場者数に直結する部分でもあるので、今後も試行錯誤を続けつつ、その時々で最適な形を模索したいと思います。

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コミックマーケット102特集

2023年8月12日(土)・13日(日)の2日間にわたって東京ビッグサイトの東・西・南展示棟(サークル・企業ブース)で開催される「コミックマーケット102」(C102)を特集。 近年はコロナ禍の影響で、来場者数の上限をはじめ様々な制限を設けてきたコミケ/コミケット。しかし、今回の夏コミではそれらを大幅に緩和。 各種のガイドラインが廃止されたことを受け、1日あたりの来場者数の上限を撤廃し、さらに当日午後からの入場が可能になるなど、かつての熱狂を取り戻す準備が整いつつある。

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