連載 | #3 コミックマーケット102特集

「“コミケは戦場”と必要以上に煽らないで」代表が語る、同人誌即売会を取り巻く環境

「コミケは戦場」と必要以上に煽らないで

──近年は女性向けジャンルが縮小し、男性向け即売会の傾向が強くなっているようにも感じます。コミックマーケットとして、今後どういった立ち位置の即売会を目指すのでしょうか?

市川孝一 コミックマーケットはオールジャンル即売会なので、今後も来るものを拒まずの姿勢を貫いていきたいと考えています。

当然ジャンルの流行り廃りはあるので、人気ジャンルによって参加者の男女比は変化すると思います。過去を振り返っても『キャプテン翼』や『聖闘士星矢』が流行っていた時代は、参加者の多くのが女性でした。今後も新たなブームに伴って、男女比は変わってくるでしょうが、「場」を提供する者として我々が、そこをあまり誘導してはいけないと思っています。

コミケットはあくまでも、オールジャンルの即売会という場。そのスタンスは今後も変わりません。

──最後に改めて、1日当たりの来場者数の上限撤廃と、東京ビッグサイト全ホール使用となる「コミックマーケット102」に向けて、一言いただけないでしょうか?

市川孝一 現状、サークルさんの申込数や、リストバンド型参加証の売れ行きなどの動向を見ると、来場者数は予想通り十数万人の見込みです。その中で、東京ビッグサイトの全ホールフル使用という初めての状況下、予想できないトラブルが起きないとも限りません。

ただ参加する方々の多くは、コミケットが大変なイベントであることを知っているので、運営にも協力的です。「全員が参加者でお客様はいない」という意識があるからこそ、この規模のイベントを続けられているんだと思います。 ──確かに参加者の協力なくしてコミケは開催できないと思います。

市川孝一 そういった参加者の方々の協力はありがたい一方で、あまり声高にコミケット参加のハードルを上げるのは、ちょっと控えて欲しいという思いもあります。例えば「コミケは戦場だ!」と煽るように言われることがありますが、実際そこまで殺伐とした空気感ではないですから。

注意喚起は必要ですし、お祭り感を盛り上げる一種のジョークというのもわかります。でも、知らない人からすると、本当におっかない場所だと思われてしまう可能性もある。我々としては、むしろハードルを下げていきたい。

もちろん無防備で来てもらっては困るし、大変なイベントであることに偽りはありません。とはいえ、新しい人が参加しやすい環境はつくっていきたいですし、厳しいことばかり言って、将来的に来場者数が落ち込んでいくような流れは避けたいと思っています。

だからこそ、公式サイトで初心者ガイドの公開をはじめ、新たな情報発信を行っています。今後は、これまで以上に新たに参加する人にとっても優しいイベントでありたいです。
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コミックマーケット102特集

2023年8月12日(土)・13日(日)の2日間にわたって東京ビッグサイトの東・西・南展示棟(サークル・企業ブース)で開催される「コミックマーケット102」(C102)を特集。 近年はコロナ禍の影響で、来場者数の上限をはじめ様々な制限を設けてきたコミケ/コミケット。しかし、今回の夏コミではそれらを大幅に緩和。 各種のガイドラインが廃止されたことを受け、1日あたりの来場者数の上限を撤廃し、さらに当日午後からの入場が可能になるなど、かつての熱狂を取り戻す準備が整いつつある。

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