株式会社ポケモンと筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)が合同で、アプリ『Pokémon Sleep』のデータをもとに「睡眠と労働生産性」に関する調査を行った。
それによると、平日と休日における寝る時間・起きる時間のズレ(ソーシャルジェットラグ)があるユーザーは労働生産性の低下が著しく、その差は年間で13.6万円の経済損失に繋がっているほど。
不規則な睡眠習慣による経済損失は、日本全体で年間約1兆円にのぼると推定されている。
3月の調査では、日本人の平均睡眠時間は世界ワーストだった
『Pokémon Sleep』は、枕元にスマートフォンを置いておくと睡眠データを計測してくれる人気アプリ。全世界累計で2800万ダウンロードを突破しており、これまでに計測された睡眠データは10億件以上。
今回の調査にも携わっているIIISの機構長をつとめる柳沢正史さんが監修をつとめている。
3月にも睡眠に関する調査を発表しており、その際、日本の平均睡眠時間は平日7時間1分、休日7時間28分で世界ワーストとなっている。
今回の調査は、アプリ内での睡眠計測を7日間以上行っている日本のユーザー約8万人を対象に実施。
210万件以上の睡眠データにユーザアンケートの結果を交え、何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し、生産性が低下している状態「プレゼンティーズム」、不眠、日中の眠気を算出した。
生産性を下げる危険な睡眠「ソーシャルジェットラグ」
『Pokémon Sleep』で記録された睡眠データに基づいてクラスター分析を行った結果、ユーザーは「健康的な睡眠」「長時間睡眠」「中途覚醒が多い」「寝付きが悪く中途覚醒が多い」「ソーシャルジェットラグ」という5つの睡眠グループに分類された。
調査データをもとに分類された5つの睡眠グループ
その中で「プレゼンティーズム」の値が最も高かったのは、「ソーシャルジェットラグ」のグループ。そこに「寝付きが悪く中途覚醒が多い」「長時間睡眠」が続いている。
「ソーシャルジェットラグ」グループの労働生産性は特に低く、年間13.6万円分の損失に相当。
これは男女に分けたユーザー層別の調査でも同様の傾向が見られている。
「ソーシャルジェットラグ」に陥っているユーザーの労働生産性が最も低い
不眠や日中の眠気も「ソーシャルジェットラグ」が最高の値に
不眠の訴えについては、「健康的な睡眠」グループ以外の全てが高い結果に。
特に高かったのは「ソーシャルジェットラグ」グループで、「寝付きが悪く中途覚醒が多い」グループが続いている。
日中の眠気評価についても、「長時間睡眠」群を除く全グループで同様の傾向が見られ、やはり「ソーシャルジェットラグ」群がもっとも悪い結果を示している。
不眠の訴えの指標として使用されているのは、WHO)が中心となって作成した、不眠症のリスクを評価するための世界共通の尺度「アテネ不眠尺度(AIS)」。日中の眠気評価には、「エプワース眠気尺度(ESS)」が使用されている
日中に高いパフォーマンスを発揮するには、規則正しい睡眠のリズムが重要
今回の調査について、柳沢正史さんは「日中に高いパフォーマンスを発揮するために、毎日の睡眠の規則正しい『リズム』が重要」だと語っている。
今回の調査結果は論文「スマートフォンアプリによって客観的に計測された睡眠パターンと、日本人労働者における生産性損失との関連」として発表されている(外部リンク)。
なお、論文は査読前のプレプリントとして公開されたものであり、今後、学術雑誌での査読により記載内容の一部が修正される可能性がある点は注意が必要だ。
柳沢正史さん
【柳沢正史教授(睡眠学者・『Pokémon Sleep』 監修者)コメント】
今回の研究では、日中に高いパフォーマンスを発揮するために、毎日の睡眠の規則正しい「リズム」が重要であることがあらためて示されました。多くの先行研究と一致する結果でもありますが、『Pokémon Sleep』の大規模かつ客観的なデータを活用し、睡眠の「リズム」が「量」や「質」とともにきわめて大切であることが分かったという点で大きな価値があると考えています。つまり、睡眠の「量」や「質」を追求するだけでは不十分なのです。
規則正しい睡眠リズムを維持するためには、理想的には平日から十分な睡眠をとること、また、休日に睡眠を延ばすにしても「ミッドスリープタイム」をできるだけ変えないように、休日の前の晩こそ早寝をすることがひとつのコツになります。毎日の睡眠リズムを『Pokémon Sleep』のようなゲームで楽しみながら可視化し、睡眠リズムを整えることで、毎日を充実して過ごしていただければと思います。
にじさんじ一橋綾人も「健康的な睡眠」の解説動画を投稿
健康的な睡眠をとる方法については、VTuberグループ・にじさんじから4月にデビューした、一橋綾人さんも複数の解説動画を投稿している。
一橋綾人さんの動画は、筑波大学で精神神経科の講師をつとめる松崎朝樹さんが監修。
柳沢正史さんの著書なども参考文献として引かれているほか、「ソーシャルジェットラグ」の概念などについても説明されている。
動画として見やすくまとめられているので、自分の睡眠に不満がある場合は、こちらも参考になるだろう。
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