1次創作、2次創作、ゲーム、同人誌、音楽、コスプレなどコンテンツの種類を問わず、多くの参加者が自分の成果物を持ち寄るこのイベントで、KAI-YOUとして注目したいジャンルがあった。
それが、ライブ配信やメディアミックスでも注目を集めているTRPGだ。
TRPGは、コミケ公式のジャンルとしては「ゲーム(電源不要)」、つまりアナログゲームに分類されている。一方KAI-YOUではこれまで、タレントやVTuber、ストリーマーらがライブ配信でTRPGをプレイするようになっているという、デジタルな側面に注目してきた。
配信だけでなく、オンラインで遊ぶ際の支援ツール「ココフォリア」や、シナリオ・素材を頒布できる「BOOTH」など関連サービスの盛り上がりもあって、コロナ禍に大きな盛り上がりを見せている。
では、その盛り上がりを背景に、オフラインの場でTRPGがどこまで盛り上がっているのか。コミケでシナリオ本を頒布している出展者たちに、率直な意見を聞いた。
目次
コロナ禍でオンライン化が進んだTRPG
元々はコミケのジャンル分けの通り、アナログゲームとして親しまれていたが、技術の発展と共にオンラインで遊べる環境が整備。コロナ禍で家から出られなかったことも影響し、ここ数年でさらにオンライン環境が発展している。
また、そういった盛り上がりには、プレイ動画・配信も大きく影響している。ニコニコ動画に投稿されたプレイ動画から始まり、現在ではプラットフォームを問わず生配信でプレイする人も増加。それまでハードルの高かったTRPGの遊び方が広まる一因となった。
即売会での同人誌頒布がTRPGを支えてきた
昔からネットにシナリオを投稿する人はいたものの、界隈として投稿するSNSやWebサイトが統一されておらず、どのシナリオが面白いのかなどの情報が集積されていなかった。そのため、即売会で有名なサークルのシナリオ本を買うというのが、一定以上のクオリティのシナリオに出会うための手段として重宝されていた。
しかし現在では、ココフォリアの開発元が提供しているシナリオ投稿サイト「TALTO」の存在や、前述した「BOOTH」がシナリオ流通の主流の場となっていることもあり、必ずしもオフラインの即売会で買う必要がなくなっているという状況がある。
まだら牛に聞くTRPG島の盛り上がり「今回はようやくコミケが戻ってきた」
今回、TRPGエリアには、『クトゥルフ神話TRPG』向けの人気シナリオ「狂気山脈 ~邪神の山嶺~」や、TRPGシステム『エモクロアTRPG』の作者の一人であるまだら牛さんが出展していた。コミケ、なんとか本が出せそうです。
— まだら牛🏔🎲 (@m_Usi) August 10, 2023
新クトゥルフ神話TRPGシナリオブック
『新世界より』 (2,500円)
1日目 東Y-45bでお待ちしております。
(動画、ページめくるのでよく目を凝らすとネタバレありますご注意) pic.twitter.com/jsNXr0mYvW
まだら牛さんは、KAI-YOU Premiumのインタビューでも、コミケでTRPGのシナリオ本などを頒布していた経験を語っており、長らくTRPGに携わり続けている人物。今回は、『新クトゥルフ神話TRPG』のシナリオブック「新世界より」を頒布している。 シナリオ作者として、TRPG界隈の内外を問わず知名度を獲得しているまだら牛さんに、今回のシナリオブックの反響を聞いてみると「ありがたいことに、たくさん(反響を)いただいています」と好評な様子。
実際に、筆者がコメントをもらっている間もひっきりなしに人が訪れており、新刊を購入した人たちに「応援してます」「『狂気山脈 ネイキッド・ピーク』(※)楽しみにしてます」と声をかけられていた。
※『狂気山脈 ネイキッド・ピーク』 まだら牛さんが現在制作している、「狂気山脈 ~邪神の山嶺~」を原作とするアニメ映画。同作の制作のために「CAMPFIRE」を用いて行われたクラウドファンディングには2億円以上の支援金が集まり、同サービスの全プロジェクトのなかでも歴代5位という結果を収めた
コロナ禍の間もコミケに出展し続けていた目線から見る、今回の盛り上がりについて聞くと「コロナ禍(のコミケ)は本当に静かだったので、今回はようやくコミケが戻ってきたなと感じています」と語ってくれた。
一方で、TRPGエリアが特筆して盛り上がっているかというと、そういうわけではないようだ。「10年前とかと比べたら、間違いなく人は増えています。ここ数年も盛り上がってはいますが、どちらかというと(コミケにおいては)横ばいという印象ですね」と客観的な意見を聞かせてもらった。
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連載
2023年8月12日(土)・13日(日)の2日間にわたって東京ビッグサイトの東・西・南展示棟(サークル・企業ブース)で開催される「コミックマーケット102」(C102)を特集。 近年はコロナ禍の影響で、来場者数の上限をはじめ様々な制限を設けてきたコミケ/コミケット。しかし、今回の夏コミではそれらを大幅に緩和。 各種のガイドラインが廃止されたことを受け、1日あたりの来場者数の上限を撤廃し、さらに当日午後からの入場が可能になるなど、かつての熱狂を取り戻す準備が整いつつある。
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