連載 | #2 「新潟国際アニメーション映画祭」特集

押井守「アニメの裾野の広さを確かめて」世界を見据える映画祭、新潟で開幕

押井守「アニメの裾野の広さを確かめて」世界を見据える映画祭、新潟で開幕
押井守「アニメの裾野の広さを確かめて」世界を見据える映画祭、新潟で開幕

「第1回新潟国際アニメーション映画祭」コンペティション部門の審査委員長をつとめる押井守監督

アジア最大の長編アニメーション映画祭となる「第1回新潟国際アニメーション映画祭」が3月17日に開幕した。

3月22日(水)までの期間中は、新潟市内の複数の会場で約50本のアニメーション映画の上映やトークイベントを実施。

初日、新潟市の古町ルフル広場で開催されたオープニングセレモニーには、コンペティション部門審査員長の押井守監督も登壇。

郷土芸能の万代太鼓のエネルギッシュな演奏や薩摩琵琶の音色が街中に響く中、フェスティバルディレクターの井上伸一郎さんが開幕を宣言した。

【画像】映画『スラダン』など新設された技術賞受賞作品

押井守「アニメは非常に裾野が広い表現」

オープニングセレモニーに登壇した押井守監督

「第1回新潟国際アニメーション映画祭」は、これまで多かったアート寄りの短編アニメを扱う映画祭とは異なり、長編商業アニメーション部門にスポットを当てている。

コンペティション部門を設けており、初開催ながら日本、オランダ、フランス、スペイン、アルジェリア、アメリカなど世界15ヶ国から10本の作品がエントリー。

審査委員長は『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』などで知られる押井守監督。セレモニーでは国際審査員のジンコ・ゴトウさん、デヴィッド・ジェステッドさんとともに壇上に上がり、映画祭の意義や抱負を語った。

「僕やみなさんがご存知の日本のアニメーションがアニメーションの代表ではなく、アニメーションという形式にはいろんな可能性があると思います。10本が10本ともすべて絵柄も違えばスタイルも違う。非常に裾野が広い表現であることをぜひ自分の目で確かめていただきたい。10本の中から、今日的な意味がある新しい形式の作品を僕は選びたいと思います。この3人で慎重に審査いたします」

東映動画の不思議な縁? 大川=蕗谷賞

大川=蕗谷賞の授賞式

初日には、アニメーション制作における技術職やスタジオを讃える賞として新設された「大川=蕗谷賞」の授賞式も行われた。

この賞は新潟出身の2人の名前を冠している。東映動画(現・東映アニメーション)創設者であり東映初代社長の大川博さん、創設直後の東映動画に参加した蕗谷虹児(ふきやこうじ)さんだ。

【大川=蕗谷賞受賞者】※2月に発表済み
亀田祥倫、中野悟史『犬王』(総作画監督)
木村真二『漁港の肉子ちゃん』(美術監督)
寺尾優一『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(撮影監督)
東映アニメーション/ダンデライオンアニメーションスタジオ『THE FIRST SLAM DUNK』(CGアニメーション)
MAPPA『劇場版 呪術廻戦 0』(アニメーション制作スタジオ)

2022年12月公開と最も直近の作品である『THE FIRST SLAM DUNK』は、井上雄彦さんのバスケットボール漫画『SLAM DUNK(スラムダンク)』を巧みにアニメ化。

スポーツアニメとしての評価も高く、興行収入は現在までに119億円を突破。2Dアニメへの支持が強い日本において、CGアニメとしての可能性を示した作品だ。

東映アニメーション出身のダンデライオンアニメーションスタジオ・西川和宏さんは、「大川さんの名前がついた賞をいただいたのは不思議な縁を感じます。『君たちよくやった』と言われたような気分です」と感慨深げに語った。

作品・監督が世界へと進出する映画祭

「第1回新潟国際アニメーション映画祭」はコンペティション以外にも、大友克洋監督の作品を特集するレトロスペクティブ、りんたろう監督、永野護監督、片渕須直監督、磯光雄監督らが登壇するイベントを実施。

国内だけでなく、ポスト・スタジオジブリとも評されるアイルランドのアニメスタジオであるカートゥーン・サルーンをはじめ、海外の注目作品も上映される。

映画祭のプログラムディレクターをつとめるアニメジャーナリスト・数土直志さんは著書『日本のアニメ監督はいかにして世界へ打って出たのか?』(星海社)の中で、日本のアニメ監督が海外進出を果たしたきっかけのひとつとして映画祭を挙げている。

今後、「新潟国際アニメーション映画祭」を通じて世界へと躍進する長編アニメーション作品や監督が生まれるかもしれない──日本発、世界へ向けた映画祭の第一歩に注目だ。


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「新潟国際アニメーション映画祭」特集

アジア最大の長編アニメーション映画祭として開催される「第1回新潟国際アニメーション映画祭」。 2023年3月17日〜22日までの期間中、これまで多かったアート寄りの短編アニメを扱う映画祭とは異なり、長編商業アニメーション部門にフォーカス。 審査委員長を押井守監督がつとめ、世界15ヶ国から10本の作品がエントリーしたコンペティションのほか、大友克洋監督の作品を特集するレトロスペクティブ、りんたろう監督、永野護監督、片渕須直監督、磯光雄監督らが登壇するイベントを実施。 現地取材を交えながら、世界を見据えるアニメ映画祭の模様をレポート。

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