英国伝奇TRPG『リミナル』レビュー 日常と幻想の境界を生きる

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『リミナル』のキャラクター作成のやり方

では、キャラクター作成のやり方をみていこう。

Concept(コンセプト)

まず、どのようなキャラクターを作るか「コンセプト」を決める。つくりたいキャラクターに合わせて自由に考えていいが、「先祖返りの魔術師」など、一言で表せるようなものが良いだろう。

Drive(原動力)

そのキャラクターがなぜ普通の世界と「隠された世界」の両方に関わっているのかを決める。例えば「自らの力の源流を探し求めるため」などだ。

Skills(技能)

次に、技能を割り振る。

技能は大きく分けて3系統ある。1つ目は「Athletics(運動)」などの肉体系技能。2つ目は魔術の行使や「隠された世界」の知識に関わる「Lore(伝承)」などの精神系技能。3つ目は他者との共感しやすさを表す「Empathy(共感)」など社会系技能だ。

技能はぜんぶで20種類ほどあり、ここに合計17ポイントを割り振る。一つの技能に最大4ポイントまで割り振れるが、技能の総数より割り振れるポイントの方がかなり少ないため、必然的に取れない技能が一定数出てくる。パーティメンバーと相談しながら決めると良いだろう。

判定は6面サイコロを2個振り、出た目に技能レベルを足して8以上が出れば成功というシンプルなもの。技能を持ってない場合は出目が10以上必要だ。

Traits(特質)

『リミナル』は、Traits(特質)を組み合わせてさまざまなキャラクターを表現できる。魔術や特殊能力は、ここでポイントを支払って獲得することになる。コンセプトに沿ったものを選んでいくといい。

Traitsは、Focus(フォーカス)と呼ばれる、いわば資質の「中心」により選べるものが多少変わってくる。特定のFocus(フォーカス)でなければ獲得できないTraitsもあるので注意したい。

あとはアイテムを取得し(特にアイテム表などはなく、一定額以下の持ち物を自由に決めて良いというもの)、キャラクター設定を決める。

Faction(派閥)

設定を決めたら、そのキャラクターが「隠された世界」の派閥から自分がどういった印象を持たれているかを決定する。

良い印象を持たれている組織を1つ、悪い印象を持たれている組織を1つ決めよう。「隠された世界」に絡んだ事件を捜査する警察の部署(表向きは窓際族)や、伝統的な魔術師のグループがそれにあたる。

Crews(クルー)

『リミナル』でともに時間を過ごすパーティメンバーたちはいわば、「同じ船に乗り合わせた、運命を共にする仲間たち」だ。このように行動を共にするプレイヤーキャラクターたちを総称して「クルー」と呼ぶ。

キャラクターを作成したらクルー名(チーム名)と、クルーとしてのDrive(原動力)を決定する。それから、クルーひとりにつきasset(資産)を取得できる。「Workshop(工房)」「Hideout(隠れ家)」などルールブックに記載されたものから選ぶことになるが、解釈は比較的自由だ。ちなみに、資産はモノだけではなく、「Informant(情報提供者)」などのヒトも含まれる。

これでキャラクター作成は完了だ。

『リミナル』を実際に遊んでみた感想

筆者は実際にキャラクターをつくったあと、短めのシナリオをプレイヤーとして遊んでみた。

内容は「いわくつきの魔術書が、その価値をろくに知らないギャングによって盗み出されたため、危ういことになる前にそれを取り返す」というもの。魔術書は人の命を喰らううえ、周囲に人狼がいる状態で発動したらその場にいる全員を狂気に陥らせるという呪われた品。依頼を受けたのは、よりによって「人狼」の探偵と、仲間(クルー)であるティーンエイジャーの「妖精」の混血児と言葉の力を操る「魔術師」だ。

廃墟にあった魔術書は案の定ギャングの命を貪り食らっており、魔術書を回収しようとしたら血走った目をした「人狼」が出てきて──。

そこから先は読者の想像に委ねるとする。

実在の地名を通して語られる幻想物語。私たちが住む日常のすぐそばに、非日常がある──ということを体感できて、非常に面白かった。

2023年注目の一作となるTRPG『リミナル』

『リミナル』の「薄皮を隔てた二つの世界との境目に生きるキャラクターになって遊ぶ」というコンセプトは非常にキャッチーだ。

しかもキャラクター作成の自由度は高く、それでいてルールはシンプル。何より「自分の力をこういう風に使えないだろうか」という提案を通じて、自分のキャラクターを存分にロールプレイする余地がある(演技だけではなく、キャラクターデータを生かしてサイコロを振る方もだ)。

『リミナル』が、2023年の日本TRPGシーンにおいて、注目の一作となるのは間違いない。
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1件のコメント

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:6424)

ワールド オブ ダークネス イン イングランドと言った感じに聞こえますね。

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