「ずっと真夜中でいいのに。」の楽曲「正しくなれない」のMVやTikTokでのショートアニメで知られる新進気鋭のアニメ作家・安田現象さん。
短編3Dアニメ『メイクラブ』では、近代を舞台にしたオリジナリティ溢れるボーイミーツガールを描いた一方で、SNSで反響を呼ぶショートアニメでは温かみを感じさせる物語を紡ぐなど、変幻自在の表現方法でシーンの最前線に立っている。
現在は株式会社ゼノトゥーンとともにスタジオを立ち上げ、初の長編オリジナルアニメーション作品『メイク ア ガール』の劇場公開へ向けたクラウドファンディングを実施中。9月末には、支援金額が晴れて目標額である1000万円を突破した。
それに伴い、ストレッチゴールを設定。安田現象さんの描きおろしイラストを用いたオリジナルグッズや、公式サイト上に名前がクレジットされる権利など、様々なリターン品が追加されている。 今まさに新たなフェーズへと歩みを進める稀代のアーティストにインタビューを実施。現在に至るまでの波乱万丈の道のりや、作品を生み出す上での哲学、そして制作中の『メイク ア ガール』について話を聞いた。
取材・文:オグマフミヤ 編集:小林優介
安田現象 まったく興味がなかったわけではなくて、ゲームやアニメにはあくまで消費者として触れていました。
中学受験後、反動で勉強をしなくなった結果、ぶっちぎりでワースト1位の成績をとるようになりまして。2年ほど引きこもっている間、ご飯すら片手間ですませて、あとは死ぬほどアニメやゲーム……という廃人のような生活を送っていたんです。 ──当時は将来について、モノづくりを仕事にしようとは考えていなかったということですね。
安田現象 その頃は、将来サラリーマンをやりつつアニメやゲームにまみれながら生きていこうと思っていたんですけど。そのうちこのままだと安定してアニメやゲームを享受することすらできないのではないか? という恐怖を覚え始めました。
それから環境を変えて社会復帰しようと思い、転校したんです。転校先の学校で油絵に触れ、そこではじめてモノをつくることの面白さに出会いました。
なので最初からアニメや物語をつくろうと思っていたわけではなくて、筆やペインティングナイフを動かして何かが生まれることに面白さを感じて、創作活動にのめり込んでいったんです。
──アニメやゲームにのめり込んだ経験が現在に活きているのでしょうか?
安田現象 過去の偉人たちは、オタクとしてなぜ自分がその作品を好きなのかを意識しながらインプットをしています。自分は彼らのように分析をせず、ただ垂れ流していただけなのでインプットはほぼゼロと言っていいい状態でした。
だから一つモノをつくり上げる上でも、知らないといけないことがたくさんありましたし、集中力も人並なので、創作にはのめり込むものの日の目を見るまでにかなり長い時間を要しました。
その後に始めることになるシナリオ執筆やCG制作にしてもそうなんですが、他の人より始めるのが遅い状態がスタートだったので、逆にこの道で生きていくんだって覚悟を決めるきっかけになったのかなと思います。 ──ちなみにアニメやゲームを大いに享受していた時代は、特にどんな作品にハマっていたんでしょう?
安田現象 オンラインゲームをはじめ様々なゲームにハマっていました。それまで小学生として触れていたゲームとは全く違うつくりをしていて、のめり込んでいったんです。
大学生の時にはニトロプラスのゲームにハマっていて、自分も制作に関わりたいと、その後ニトロプラスに入ったんです。ただ、僕が就職したタイミングではつくりたかったゲームジャンル自体が右肩下がりで、継続するのは難しいと思って業界を離れることにしました。
ゲームのために社会復帰したのに……。
安田現象 ニトロプラス退職後は、フリーランスで仕事をしながらライトノベル作家を目指していて、その後自主制作でアニメをつくり始めました。アニメ作家としても仕事をいただいていたんですが、その頃にコロナが流行り始めたんです。
決まっていた仕事もなくなってしまい、アニメーターとして出向するようになったものの、自分の考えたものをつくりたいという欲が増してうずうずするようになってしまいまして。
自主制作でアニメをつくろうとしたものの、数分の尺のアニメをつくるには時間が足りず、より短いショート作品をつくってみたところ、思いのほか反応が良かったんです。安田現象さんが制作した「正しくなれない」MV
──そこから試行錯誤が始まったんですね。
安田現象 ショートアニメは本当に毎回がチャレンジなんですよね。よく“ショートアニメはどういう考えでつくっているのか”と聞かれるんですが、決まったセオリーなんかなくて。トライ&エラーを繰り返すしかないので、こうすればいい、と答えられることがないんです。
──安田さんの作品はTikTokのアフレコ機能で誰かが勝手に声を付け、その投稿がさらに拡散されていくという特徴的な広がり方をしています。
安田現象 自分の作品で遊んでいただけているのは嬉しいです。セリフを入れずに口パクで表現するやり方はショートだからこそできたんですが、それがまさかTikTokのアフレコ機能とハマるとは思ってもみませんでした。
安田現象 視聴者のみなさんに、自分の制作の一部に参加してもらうのは面白いかもしれないと思っています。
最近はSNSで迷ったときに質問を投げて意見を聞いてみていまして。仕上がったものをあとから修正したりはしないですが、制作中にもらったご意見はありがたく見させてもらってます。
視聴者と距離が近い配信者の方々と違って、アニメ作家と視聴者が絡める機会はリプライくらいしかないので、自分なりの絡み方はないかと模索しているところです。
短編3Dアニメ『メイクラブ』では、近代を舞台にしたオリジナリティ溢れるボーイミーツガールを描いた一方で、SNSで反響を呼ぶショートアニメでは温かみを感じさせる物語を紡ぐなど、変幻自在の表現方法でシーンの最前線に立っている。
現在は株式会社ゼノトゥーンとともにスタジオを立ち上げ、初の長編オリジナルアニメーション作品『メイク ア ガール』の劇場公開へ向けたクラウドファンディングを実施中。9月末には、支援金額が晴れて目標額である1000万円を突破した。
それに伴い、ストレッチゴールを設定。安田現象さんの描きおろしイラストを用いたオリジナルグッズや、公式サイト上に名前がクレジットされる権利など、様々なリターン品が追加されている。 今まさに新たなフェーズへと歩みを進める稀代のアーティストにインタビューを実施。現在に至るまでの波乱万丈の道のりや、作品を生み出す上での哲学、そして制作中の『メイク ア ガール』について話を聞いた。
取材・文:オグマフミヤ 編集:小林優介
目次
成績ワースト1位がアニメ作家になるまで
──安田現象さんは高校で油絵に出会うまで創作活動にあまり触れてこなかったと聞いています。安田現象 まったく興味がなかったわけではなくて、ゲームやアニメにはあくまで消費者として触れていました。
中学受験後、反動で勉強をしなくなった結果、ぶっちぎりでワースト1位の成績をとるようになりまして。2年ほど引きこもっている間、ご飯すら片手間ですませて、あとは死ぬほどアニメやゲーム……という廃人のような生活を送っていたんです。 ──当時は将来について、モノづくりを仕事にしようとは考えていなかったということですね。
安田現象 その頃は、将来サラリーマンをやりつつアニメやゲームにまみれながら生きていこうと思っていたんですけど。そのうちこのままだと安定してアニメやゲームを享受することすらできないのではないか? という恐怖を覚え始めました。
それから環境を変えて社会復帰しようと思い、転校したんです。転校先の学校で油絵に触れ、そこではじめてモノをつくることの面白さに出会いました。
なので最初からアニメや物語をつくろうと思っていたわけではなくて、筆やペインティングナイフを動かして何かが生まれることに面白さを感じて、創作活動にのめり込んでいったんです。
──アニメやゲームにのめり込んだ経験が現在に活きているのでしょうか?
安田現象 過去の偉人たちは、オタクとしてなぜ自分がその作品を好きなのかを意識しながらインプットをしています。自分は彼らのように分析をせず、ただ垂れ流していただけなのでインプットはほぼゼロと言っていいい状態でした。
だから一つモノをつくり上げる上でも、知らないといけないことがたくさんありましたし、集中力も人並なので、創作にはのめり込むものの日の目を見るまでにかなり長い時間を要しました。
その後に始めることになるシナリオ執筆やCG制作にしてもそうなんですが、他の人より始めるのが遅い状態がスタートだったので、逆にこの道で生きていくんだって覚悟を決めるきっかけになったのかなと思います。 ──ちなみにアニメやゲームを大いに享受していた時代は、特にどんな作品にハマっていたんでしょう?
安田現象 オンラインゲームをはじめ様々なゲームにハマっていました。それまで小学生として触れていたゲームとは全く違うつくりをしていて、のめり込んでいったんです。
大学生の時にはニトロプラスのゲームにハマっていて、自分も制作に関わりたいと、その後ニトロプラスに入ったんです。ただ、僕が就職したタイミングではつくりたかったゲームジャンル自体が右肩下がりで、継続するのは難しいと思って業界を離れることにしました。
ゲームのために社会復帰したのに……。
ショートアニメは毎回がチャレンジ
──安田さんの代表的な作品としてショートアニメがありますが、どのように制作を始められたのでしょう?安田現象 ニトロプラス退職後は、フリーランスで仕事をしながらライトノベル作家を目指していて、その後自主制作でアニメをつくり始めました。アニメ作家としても仕事をいただいていたんですが、その頃にコロナが流行り始めたんです。
決まっていた仕事もなくなってしまい、アニメーターとして出向するようになったものの、自分の考えたものをつくりたいという欲が増してうずうずするようになってしまいまして。
自主制作でアニメをつくろうとしたものの、数分の尺のアニメをつくるには時間が足りず、より短いショート作品をつくってみたところ、思いのほか反応が良かったんです。
安田現象 ショートアニメは本当に毎回がチャレンジなんですよね。よく“ショートアニメはどういう考えでつくっているのか”と聞かれるんですが、決まったセオリーなんかなくて。トライ&エラーを繰り返すしかないので、こうすればいい、と答えられることがないんです。
──安田さんの作品はTikTokのアフレコ機能で誰かが勝手に声を付け、その投稿がさらに拡散されていくという特徴的な広がり方をしています。
安田現象 自分の作品で遊んでいただけているのは嬉しいです。セリフを入れずに口パクで表現するやり方はショートだからこそできたんですが、それがまさかTikTokのアフレコ機能とハマるとは思ってもみませんでした。
──SNSの反応を見て作品にフィードバックすることはあるのでしょうか?自主制作した呪いの人形アニメまとめました! pic.twitter.com/utB8Sn4Whw
— 安田現象 🧬クラファン中🧬目指せ劇場アニメ! (@gensho_yasuda) July 30, 2022
安田現象 視聴者のみなさんに、自分の制作の一部に参加してもらうのは面白いかもしれないと思っています。
最近はSNSで迷ったときに質問を投げて意見を聞いてみていまして。仕上がったものをあとから修正したりはしないですが、制作中にもらったご意見はありがたく見させてもらってます。
視聴者と距離が近い配信者の方々と違って、アニメ作家と視聴者が絡める機会はリプライくらいしかないので、自分なりの絡み方はないかと模索しているところです。
新作ショートアニメで幽霊と巫女さん一緒に登場させたい
— 安田現象 🧬クラファン中🧬目指せ劇場アニメ! (@gensho_yasuda) August 30, 2022
となると場所は神社でもお寺でもないところ…
どこがいいかしら
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