就職先としてのアニメ業界ってどうなの? アニメコンテスト主催美大生に聞く

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作画王グランプリ主催・Sakuga Baud'zインタビュー

POPなポイントを3行で

  • 作画王グランプリ主催・Sakuga Baud'z
  • グローバルなNFTプラットフォームとタイアップ
  • 学生から見る就職先としてのアニメ業界
世界一のアニメーターを決める作画のバトルロワイヤル」と銘打ち、Twitter上で開催されている「作画王グランプリ」。経験や年齢を問わず参加でき、個人が制作したアニメーション作品の中から1位を決める、まさしく実力一本勝負の場だ。

個人開催でスタートしたが、8月に行われた第3回では、シンガポールに運営拠点を置くNFTのソーシャルプラットフォーム「OURSONG」とタイアップ。「OURSONG 作画王グランプリ~夏の陣~」と題され、10日間の制作期間にエントリーされたアニメ作品は、218を超えた。

作画王グランプリ主催のSakuga Baud'zさんは、東京造形大学の造形学部デザイン学科でアニメーションを専攻する現役の学生だ。作画王グランプリを立ち上げた経緯や、自主制作アニメの隆盛などについてうかがっていく中、学生が抱く日本のアニメ業界に対する危機感も明らかになった。

取材・文:ヒガキユウカ 企画・編集:小林優介

目次

仲間内から企業も巻き込む「作画王グランプリ」

──まずは「作画王グランプリ」を立ち上げた背景からうかがえますか?

Sakuga Baud'z 最初はそこまで深い意味はなかったんですよ。仲間内で、制作時間を5時間くらいに設定して作品を出し合おうっていう話だったんですけど、先輩に話したら「おもしろいね」って言ってもらえて

企画として練っていくうちに制作時間が伸びていって、今の形になりました。

──最初に想定していた仲間内というのは、同じ東京造形大学の仲間ですか?

Sakuga Baud'z 同じ大学の人もいるし、主に「クリエイターズギルド(Creator's Guild)」というDiscordサーバーに集まっている人たちですね。高校生や大学生、学生以外もいます。

「作画王グランプリ」を立ち上げた当初はまだクリエイターズギルドではなくて、前身の「クロッキーダンジョン」というサーバーだったんですけど。 ──「クロッキーダンジョン」はどんな経緯で生まれたんでしょうか? 

Sakuga Baud'z もともとは大学の先輩であるアニメーター・グレンズそうさんが主催されていた、クロッキー会がありまして。

そこがグレンズそうさんの卒業に伴って閉鎖になったので、僕が引き継いで後継のサーバーをつくったんです。

──そのコミュニティ内で行うつもりだったものがオープンになったんですね。

Sakuga Baud'z オープンにしたというか、第1回を開いた時点では集まって30作品ぐらいの規模になるかなと思っていたんですよ。それがふたを開けてみたら70作品ぐらい集まって、第2回では187作品まで増えて

「すごいねー」なんて話していたら、今回のような企業コラボの話が入ってきたて、大きくなっていったんです。

──時期的にはこむぎこ2000さんのつくられたインディーアニメを投稿する「#indie_anime」の盛り上がりと重なる部分もあったように見えました。

Sakuga Baud'z こむぎこ先輩はリスペクトしてますね。もちろん参加してくれた人たちや審査員を引き受けてくださった方々の力が大きいんですが、こむぎこ2000さんも、「『作画王グランプリ』の発信に#indie_animeのタグをつけたらRTするよ」みたいな感じで言ってくださっていました。

作画という“スポーツ”とNFTが起こした環境変化

──以前、「作画王グランプリ」の企業コラボの条件として「スポーツ性・ゲーム性を損なわないこと」を挙げられていましたね。 Sakuga Baud'z はい。サッカーがボールを使ってやる遊びだとするなら、「作画王グランプリ」は作画を使う遊びだと思っています

伝わりやすいよう「コンテスト」とは言っていますが、僕自身はあんまりその言い方はしたくなくて、あくまでゲーム・スポーツとしてツールやテクニックでも新しいものをどんどん取り入れて、遊びまくってほしいんですよね。

何日も時間を拘束されて、楽しくなかったら参加したくないと思うんですよ。だから、自由に遊んで生まれた作品を見せ合って、さらに賞金や審査員のコメントまでついてきちゃうっていう場でありたいです

──「作画王グランプリ」として、目指すところはありますか?

Sakuga Baud'z 長期的な目標として「個人アニメの市場を広げたい」というのはあるんですけど、今はまず参加してくれた人に「楽しかった」と言ってもらえるような企画にしようと集中しています

でも将来的に、「作画王グランプリ」出身のクリエイターが世界に名前を羽ばたかせるような展開は、あってほしいなと思いますね。

──Sakuga Baud'zさんから見て、投稿されている作品にはどんな傾向がありますか?

Sakuga Baud'z 「エモい」と言いますか、きらきらして可愛い作品が多いかなとは思います。短い時間で何かを伝えようとすると、やっぱり感情を呼び起こすような作品が多くなるのかなと

ただ、これからはアニメのスタイルも変わっていくと思います。それとともに現在の作画王における、「きらきらして可愛いものが一強の時代」が変わっていくのもおもしろそうです。「作画王グランプリ」の投稿作品の傾向が、アニメ全体の流行の先取りをしてるような状態になったらいいですね

──9月開催の第3回はNFTのプラットフォーム「OURSONG」とのタイアップ。レギュレーションとしても音楽に合わせたループアニメ作品が指定されていました。作品の傾向が変わったり、幅が広がったりはしましたか? Sakuga Baud'z 第2回は結構派手なアクションが多かったんですが、今回はローファイ・ヒップホップに合わせるということで、上品なアニメが増えた気がしますね。

音楽に合わせることを意識している、音がなかったら「ん?」ってなるけど、音楽をつけることで映えるような。そういう音楽を活用した表現の軸が生まれたのは、今回大きく進化したところだと思います

音楽がないと、どうしてもド派手な「THE・作画!」みたいな方向になりがちで。それもいいんですけど、似たり寄ったりにはなっちゃうんですよね。そのぶん、今回はバランスよく表現がばらけたんじゃないでしょうか。

──海外の方からの参加もありましたね。国内と国外でクリエイターの作風の違いは感じましたか?

Sakuga Baud'z もちろん、双方にいろいろな人がいるので一概には言えないんですけど、それぞれの特徴は出たと思います。海外からの作品は、映画のワンシーンを切り取ったようなものが多かったように感じます。

日本の場合はイラストレーション的と言いますか、イラストを動かしたようなアニメがもともと多いので、そういう違いもあるんだなと。 ──「OURSONGS」とのタイアップによって、参加作品をNFTで販売するという取り組みも実現しました。アニメーターが描いた作品を直接販売できるというのは画期的だと思うのですが、流行ると思いますか?

Sakuga Baud'z 3〜4年くらいすれば流行るんじゃないかなと思いますね。日本で流行るかと言われると、またちょっと課題があると思いますが。

──メディアでの扱われ方などの影響もありますが、日本だと投機やお金儲けのための技術というイメージが先行してしまっていて、拒否感を持っている人もいますね。

Sakuga Baud'z 仕組みのわかりにくさとか、新しいものに対して抵抗感を抱く人にどうアプローチしていくかとかも、NFTを提供する側の課題ではありますよね。今回で、「作画王グランプリ」がその流れをちょっとだけ加速させられたかな、とは思っています。

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