日常をロマンティックな非日常に変える妖しげな光
会話劇における独特の空気感は、劇中の背景や画面のデザインにも現れている。『よふかしのうた』の舞台は団地や繁華街であり、いずれもほぼ「真夜中」だ。「夜」をいかにミステリアスかつ魅力的に描くかが重要になってくる。アニメでは、紫、ピンク、黄色、青と様々な色味を薄く重ねつつ、風景を彩るために大胆に使ってみせる。それに加え、街灯、車のヘッドライト、自販機やマンションの光に、看板のネオンサインといった様々な光を的確に描き分けているのだ。 ともすれば全体の色味を暗くして画一的な夜になるところを、暗闇の中にある物体から放たれる光、または物体を照らす光を丁寧に描き分けることで、真夜中特有の妖しさ、非日常的な空気感を生み出すことに成功している。
「親しみある風景」を別世界のような背景・風景として表現する手法は〈物語〉シリーズでも見られた。しかし『よふかしのうた』のそれは、さながら夜化粧した日常風景。見慣れた光景なのに、どこかロマンティックでドキドキさせられる魅力を放っている。
漫画『よふかしのうた』に影響を与えたCreepy Nuts
初登場時の夜守コウは中学2年生、14歳の年齢である。初めてお前を跨いだのは、
いや初めて跨ったのは確か14
俺は何も知らねワナビー
手取り足取り全てが新しい
七草ナズナは吸血鬼でありつつ、作中ではエロネタを口走って夜守を驚かせたり、多くの人を魅了する体質を持っていたりと、男性に淫らな夢を見せては性行為を迫るといわれる伝承上の存在=サキュバスのような側面も併せ持つ。I'm a day dream believer
俺の若さを日々吸い上げる
まるでサキュバスまたはインキュバス
近いうちに朽ち果てる
それからお前は音楽をくれた
女の裸も見せてくれた
飲んだ事ねぇ酒に口つけて
オトンのタバコくすね火を付けた
やっちゃいけないが溢れて
知っちゃいけないに塗れてる
迎えに来る闇に紛れて
お前はいつも気まぐれで…
アンモラルでイリーガルに引き込もうとする引力、そんな時間にキミを咎める者はほとんどいない、その一瞬だけ感じられる自由の感覚。ハマってしまったら最後まで抜け出せない。
実は、同じようにハマっちまった奴らがたくさんいるのだ。 アニメのED主題歌であもる楽曲「よふかしのうた」は、ラジオ番組『オードリーのオールナイトニッポン10周年全国ツアー』のテーマソングに起用されたということもあり、番組のリスナーやCreepy Nutsのファンに向けられていることを考えれば、そのリリックの奥深さやポップさがうかがえる。
曲と曲が歌う夜にハマってしまったなかに作者・コトヤマさんがいて、『よふかしのうた』を描いたのだから、クリエイティブな作品とは反響・反応・共鳴によって生まれるものなのだとつくづく感じさせられる。
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