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『オッドタクシー』に見る、ならず者のカウンター アニメとHIP HOPの接続史

『オッドタクシー』に見る、ならず者のカウンター アニメとHIP HOPの接続史

『オッドタクシー』

POPなポイントを3行で

  • 動物たちによるサスペンスアニメ『オッドタクシー』
  • PUNPEE、OMSB、VaVaというラッパーが劇伴担当
  • 影響を与え合ってきたアニメとヒップホップ
オリジナルアニメ『オッドタクシー』が4月よりテレビ東京・AT-X、Amazon Prime Videoにて放送・配信されている。

キャストには『鬼滅の刃』の竈門炭治郎役で知られる花江夏樹が主演をつとめ、三森すずこ、木村良平、飯田里穂、山口勝平ら実力派声優が揃う。さらに、ミキ、ダイアン、ガーリィレコード、たかし(トレンディエンジェル)、村上知子(森三中)ら、吉本興業に所属する芸人が声優として参加している。

脚本は漫画『セトウツミ』やドラマ『ブラック校則』の此元和津也(このもとかづや)が担当、映像クリエイティブカンパニー・P.I.C.S.(ピクス)の木下麦がTVアニメ初監督として手腕を発揮する。

そして『オッドタクシー』で特筆すべきなのが、PUNPEEOMSBVaVaという3人のラッパーが、劇中の音楽を担当している点だ。今回は劇伴を手がける彼らにフォーカスしつつ、ヒップホップとアニメとの接続について紐解いていきたい。

文:草野虹

目次

動物に擬人化したキャラによるシリアスな会話劇

アニメ『オッドタクシー』。一見「こどもちゃれんじ」の教材と見間違いそうになるビジュアルだが、物語はシリアスかつミステリアスかつサスペンス。複数のキャラクターの行動が、やがて交わり、1本の糸へと収束していく(※現状そのような展開をしている)。

平凡な毎日を送るタクシー運転手・小戸川。
身寄りはなく、他人とあまり関わらない、少し偏屈で無口な変わり者。
趣味は寝る前に聞く落語と仕事中に聞くラジオ。
一応、友人と呼べるのはかかりつけでもある医者の剛力と、高校からの同級生、柿花ぐらい。
彼が運ぶのは、どこかクセのある客ばかり。
バズりたくてしょうがない大学生・樺沢、何かを隠す看護師・白川、いまいち売れない芸人コンビ・ホモサピエンス、街のゴロツキ・ドブ、売出し中のアイドル・ミステリーキッス…
何でも無いはずの人々の会話は、やがて失踪した1人の少女へと繋がっていく。
『オッドタクシー』ストーリー

タクシードライバーである小戸川(CV:花江夏樹)に、友達は多くない。周囲の登場人物らは一様に「アイツは変わり者」と評していく。だがタクシードライバーとして東京都内を周り続けたり、自身が患った病のために病院に通ったり、昔なじみの飲み屋に行く先々で、彼は様々な人と出会う。

彼らにはそれぞれ、大なり小なり問題や熱中していることがある。スマホゲーのガチャやアイテム、アイドルのチェキ券、婚活アプリと虚像のようなプロフィール、SNSでのバズや承認欲求、あるいは精神的な病、少女失踪事件、警察とチンピラの癒着──などなど。

無口でどこか悟ったようなタクシー運転手・小戸川。少女失踪事件への関与が疑われるなど、トラブルに巻き込まれる一方で、本人も何かを隠している模様。

バズりたくてしょうがない大学生・樺沢は、偶然バズってしまったことで生活が一変する。

小戸川が通う病院の看護師・白川。彼女が自分に対して見せる好意に小戸川は振り回される。

ゴロツキ・ドブ。少女失踪事件に関連して、警察とグルになって小戸川に接近するが、その後自身が狙われることに。

ゲーム会社に勤務する会社員・田中。物語を大きく動かすもう1つの事件の首謀者。ある出来事をきっけに小戸川の命を狙う。

小戸川ないしは視聴者の視界に飛び込んでくるこれらのイシューは、現代の日本社会や個々人が抱えこんでしまった、昏(くら)い闇の部分に他ならない。

偏屈で変わり者な小戸川は、時たまにこういったシリアスな部分に口を挟む。もちろんそのたびに反発は起こるのだが、脚本家・此元のセリフ回しや声優陣の演技力によって、軽妙なトーク・会話劇となって一種のギャグへと変わり、心を許すかのような懺悔、自身の迷いを告白するキャラクターも出てくる。

こうした会話劇はとても濃厚で、あまりにもシリアス。最新話では暴力団やヤクザとアイドルの繋がりも描かれ「だったら実写でやればいいじゃないか!」なんてツッコミも出てきそうだ。本作の素晴らしいところは、擬人化した動物のキャラクターデザインや軽妙洒脱な会話劇を通すことで、深刻かつシリアスなイシューをポップな表現に塗り替え、よりわかりやすく受け取れるように仕上げた点だ。

現代的なイシューを動物化したキャラクターを通して届ける」という手法・作品は、『BNA ビー・エヌ・エー』『BEASTARS』『アグレッシブ烈子』『ズートピア』など、ここ数年で話題を呼んだ作品にも繋がっていく。

『オッドタクシー』劇伴はSUMMIT所属のラッパー

そんな『オッドタクシー』で音楽を担当するのは、ヒップホップレーベル・SUMMITに所属するPUNPEE、VaVa、OMSBの3人だ。

PUNPEE/Photo by Ryo Mitamura

OMSB/Photo by cherry chill will.

VaVa

P.S.GとSIMI LABという強力なヒップホップクルーで中心を担い、ラップスキル・トラックメイクで随一の力を持っていたPUNPEEとOMSB、THE OTOGIBANASHI'S(BIM・in-d・PalBedStockの3MCによるユニット)で楽曲プロデュースに携わり、2017年以降はSUMMITに所属しソロ活動を続けるVaVa。

彼らのキャリアを詳らかに記すには、今回の記事ではあまりにも紙幅が少ないわけだが、彼ら3人を含めたSUMMITが残した足跡は大きい。

ストリートのしがらみ、アウトロー&イリーガルに手を染める生活、あるいは男性的かつ体育会系的なタテ社会のムード、危険な香りが漂いがちな日本のヒップホップシーンのなかで、SUMMITはそういった世界とは無縁の磁場とムードを生み出し続けた。

スチャダラパー、RHYMESTER、KICK THE CAN CREW、RIP SLYME、そういったレジェンドにも繋がっていくような、文系なB-BOYのDNAをそこに見ることができる。

Creative Drug Store、YENTOWN、KANDYTOWNといったヒップホップクルーらが登場してきた2010年代半ば以降の流れを、SUMMITは遠巻きながらも整えることができたとも言えようか。そんなSUMMITは、今年で記念すべき設立10周年を迎えたのだ。

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん

素晴らしい記事です!!!

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