連載 | #14 KAI-YOU ANIME REVIEW

『オッドタクシー』に見る、ならず者のカウンター アニメとHIP HOPの接続史

アメコミ好きとして知られるPUNPEE

PUNPEは2002年にヒップホップユニット「板橋録音クラブ」を結成し、2007年には同世代のGAPPERと「P&G」を、実の弟・5lackが加入してPSGを結成すると、SUMMITを主宰する増田氏から注目を得ることになった。

2006年にフリースタイルMCバトルの総本山「ULTIMATE MC BATTLE 2006」東京大会で優勝、2009年にはAKAIが主宰する「MPC SAMPLER BATTLE -GOLDFINGER’S KITCHEN- 2009」のトラックメイキングバトル部門で優勝と、MCバトルとMPCバトルの両方で存在を示したのだ。

2009年10月にPSGのデビューアルバムにして名盤『David』を発表。レーベルSUMMITがスタートした2011年、PUNPEEはPSGのメンバーとしてレーベルに参加することになる。

その後も彼は、KREVASEEDA、ISSUGIらとのコラボや、宇多田ヒカル星野源、加山雄三、曽我部恵一、ORIGINAL LOVEといった大御所との共作・リミックスを担当。2017年には待望のソロアルバム『Renaissance』を発表し、高い評価を得ることになる。
PUNPEE「夢追人 feat. KREVA」
ゴリゴリのハスラーや不良が多くいた00年代末ごろのヒップホップシーンのなかで、見た目は眼鏡をかけたフツーの人、でもスキルとセンスとユニークさとガッツ、それらを備えた彼は強いオリジナリティを発揮しつづけてきたのだ。2010年代日本のヒップホップシーンにおける、重要人物の1人だったと言えるだろう。

加えてPUNPEEといえば、DCやMARVELなどアメコミにかなり精通していることで有名だ。SNSやネットメディアで何度かその偏愛っぷりを見せていたが、2018年に催された「アベンジャーズ エクスクルーシブ・ストア by ホットトイズ」では自身がデザインしたオリジナルアイアンマンが展示。「東京コミコン2019」ではライブステージに招かれている。

彼のアメコミやアメリカのカルチャー・映画への造詣の深さは、「タイムマシーンにのって」のMVにも垣間見える。
PUNPEE「タイムマシーンにのって」

カルチャーからの影響を歌うVaVa

PUNPEEを筆頭に、SUMMITのレーベルカラーにも繋がる漫画・アニメ・ゲームといったカルチャーへの愛好と寛容さ。

今回、『オッドタクシー』の音楽に携わる中でも、VaVaにもスポットを当てたい。

インタビューでも楽曲でも「自分はオタクではないよ」とは語っているものの、ソロアルバム『VVORLD』でのリリックにも明らかなように、ポップカルチャーからの影響が感じられる。そして「俺はゲーム好きだよ」と威張るわけでもなく、自然体にラップしてみせる。特に「ロトのように」に顕著だ。

仲間になりたそうにこちらを見ているって言葉で癒されるよ
TOPヲタ「お主どんだけオタクなの?」いやオタクじゃないよ別に
俺はゲーム好きとか正直 当たり前の話 VaVa「ロトのように」

VaVa「ロトのように」
そんな彼の自宅兼作業部屋が、SPACE SHOWER TVが運営するYouTubeチャンネル「blackfilesstv」の人気動画シリーズ「オタク IN THA HOOD」で公開された。

1/12のシャア専用ザク、デパートにあるようなポケモンのゲーム筐体、箱に入ったガンダム関係のプラモデル、大好きな『アマガミ』七咲逢のグッズの数々、SUMMITに関わるメンバーがズラっと刻まれたオリジナルのゲーム筐体──。

『ファイナルファンタジーVII』のバスターソードと、moogのシンセサイザーとを、同じ作業部屋に飾っている音楽作曲家なんて彼しかいないのではないだろうか。
オタク IN THA HOOD : VaVa
※動画内の最後で触れられているが、VaVa、Yo-Sea、OMSBは、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが主催する「PLAY ALIVE 2021 : Apex Legends Season 08 Special Program」オフィシャル・テーマソング「Triforce」をリリースしている。『Apex Legends』は2020年のコロナ禍とステイホーム期間において、目を見張るほど流行した作品だ。VaVaも2人と一緒に「朝までずっとやってる」と話すほどに熱中していると話している。e-sportsとして世界大会が開かれるほどのタイトルとのタイアップに抜擢されたのも、彼のソロ活動から滲み出るアニメ・漫画・ゲームへの愛情があってこそだろう。

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クールごとに数多くの作品が放送・配信されるTVアニメや近年本数を増しつつある劇場版アニメ。 すべては見られないけれど、何を見ようか迷っている人の指針になるよう、編集部が期待を込めて注目作を紹介するコーナーが「KAI-YOU ANIME REVIEW」です。 監督や脚本家らクリエイターが込めた意図やメッセージの考察、声優の演技論、作品を取り巻く環境・背景など、様々な切り口からレビューを公開しています。

1件のコメント

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:4538)

素晴らしい記事です!!!