メタバース本だいたい全部読んで選んだ「ベスト3」紹介と30冊レビュー

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メタバース本だいたい全部読んで選んだ「ベスト3」紹介と30冊レビュー
メタバース本だいたい全部読んで選んだ「ベスト3」紹介と30冊レビュー

さまざまなメタバース本が出版されている

ひょんなことから、メタバース本のほとんどに目を通すこととなってしまった。せっかくなので、これからメタバース本を読もうと考えている方のため、それぞれの本の特徴について僕なりにまとめてみる。メタバース界とはまったく利害関係がないので、忖度なしの率直なレビューとなった。

メタバース本はたくさん出ており、これからメタバースの本を読もうかな、という人にとってはきっと参考になると思う。

その総数30冊と、数が多いので、テキストがやや長くなってしまった。まずはブックマークして、お時間あるときにゆっくり読んでいただけると嬉しい。

目次

黄金色に輝くメタバースとたくさんの本

僕は普段から執筆や調査をやっている。その関係で、あるカテゴリの本を数冊まとめて読むということはちょいちょいあるのだが、今回はNFTのことについて記事を書くことになったのをきっかけに関連本を読み始めた。

最初はNFT本だったが、しばしばセットで語られるため、派生してメタバース本も読み始めた。話題となっているカテゴリであるため非常に沢山の関連本があり、今もさらにその数が増えている。

最初はその数に圧倒されていたのだが、読んでいるうちに楽しみ方がわかってきた。特にメタバースの本は著者の個性が出ていて面白かったので、勢いあまって日本語で執筆されているメタバース本はほとんど読んでしまった。

メタバースという概念自体が先鋭的であるがゆえに、そこにいち早く着目しているメタバース本の著者にも一風変わった人が多い。そんな彼らの「これぞメタバース」という(時に飛躍をはらんだ)主張に触れるのがだんだん楽しくなってくるのだ。

まだメタバースとして完成したものはこの世の中には存在しないので、みなさん言いたい放題。だから、おもろい

本当かどうかまだわからないが、そこには巨大市場があると言われており、黄金色に輝く可能性あるいは商機に見える。だから多くの人達がそれに関わりたいと思っている。それがこの本の数に表れているのだと思う。

繰り返しになるが、筆者はメタバースに関してまったく利害がない。単に面白くて全部読んでしまっただけの読者にすぎないからこそ、これからメタバースについて知りたくて最適な本を探している人には僕のメモがお役に立てるかもしれない。

そのため、忖度なしのレビューとなっているが、決してそれらの本を貶めるつもりはないということを明言しておく。

メタバースとは映画『トップガン』が表現していること!?

実は本の数が多いというだけじゃない。なんと本ごとに「メタバース」についての説明が微妙に違うのだ。これは面食らった。

正直に言えば、中には微妙な違いどころか何が言いたいのかさっぱりわからないものもあった。

例えば、「メタバースとは映画『トップガン』が表現していること」と書いてある本があり、見た瞬間思わずお茶をディスプレイにぶちまけてしまった。(Daniel Patterson著『【超入門】メタバースの教科書』 - 第1章メタバースとは何か? Kindle版の位置No.60)

頭ん中が「?」になったまま読み進めると、後で「映画『トップガン』では、誰もがVRヘッドセットを装着してオアシスという仮想世界に入る」という記述があった。(『【超入門】メタバースの教科書』 - 第5 章 誰がメタバースを構築するのか? Kindle版の位置No.459)

※2022年5月13日付で確認。現在配信されている版では、該当記述は削除されていた

オアシスと言えば映画『レディ・プレイヤー1』(スティーヴン・スピルバーグ監督、2018年)に登場するVR世界の名前。翻訳本なので、この映画と間違って翻訳したのだろう。なんでそんな間違いが起きるのかはさっぱりわからないが。

これは笑い話だが、メタバース論者が増えるにつれ、それぞれの立ち位置ごとにそれぞれメタバースが立ち現れてしまう。だから定義が固まらないのだ。

ただ、固める必要もないんじゃないかと思う。バズワードを巡るカオスは毎度のことだし、肩の力を抜いてこのカオスを楽しむのが正しい態度だと思う。現時点で定義を一つに固めてしまうのはメタバースの可能性を潰してしまうことにもなりかねない。

とは言え、たくさんメタバース本がある中で、どれを手に取ったらよいのか困っている方も多いと思うので、いくつかおすすめの本を挙げてみることにする。カオスに乗じてほんとにテキトーな内容の怪しい本もでてくるので、それを真に受けないようにする最低限の注意は必要なのだ。

著者の立ち位置を理解すれば、どの本を読むべきかは見えてくる

メタバース本は、メタバースに関わっている人が書いたものが多い。そういう著者には当然、それぞれのメタバース業界における立ち位置というものがある。

そのうえで、著者ごとに、メタバース業界において将来この位置に自分を置きたいという未来像や願望があるわけだ。

読者としては、そういうメタバース本については、それらをベースとしたポジショントークで書かれているかもしれないという視点を含めて読むのが良いと考えている

なので、メタバース本を選ぶとしたらメタバースの中で自分が一番知りたい領域に立っている著者の本を選ぶのがいい。

それぞれの著者がどんな立場の人か、というのは最後にスプレッドシートにまとめておいたので、そちらを参考にしてほしい。

みなさんにとってどの本が最適か、というのはそれらを参考にして判断していただくと良いと思う。

では、「みんなにおすすめの本はどれ?」と聞かれた時どうするか。僕にできるのは、この本ならバランスがとれていて万人におすすめできるだろう、という視点からの紹介のみだ。

どんな著者ならバランスのとれたメタバース本を書けるのだろうか。考えた末、今回は特に以下の2点に注目しておすすめメタバース本をピックアップしてみた。これに完全に当てはまる著者は正直いなかったが、それに近い本はあった。

◯どこがメタバースビジネスに成功しようが関係ない立ち位置にある人が書いた本

◯利益誘導するように書きたい欲望をぐっと抑えて書かれているっぽい本

そういうわけなので、もしおすすめとならなかった本の著者さんもがっかりしないでほしい。

どの本が最適かというのは読み手ごとに違うわけで、あなたの本がぴったりはまる読者さんも世の中にはたくさんいるはずだから。

……さて、著者に怒られた場合の逃げ道も準備できたところで、以下、忖度なしで僕が良いと思ったメタバース本を紹介する。

まずおすすめのメタバース本を3冊ピックアップ。次にそれらを含めたすべてのメタバース本を並べ、一気にその特徴やそれぞれの本のメタバースの定義などを紹介する。

初心者おすすめのメタバース本ランキングベスト3

以下、画像はすべてAmazonより引用。

初級者向けのおすすめメタバース本

初級者向けのおすすめは、武井勇樹著『60分でわかる!メタバース超入門』。 著者の武井勇樹氏は、VR・メタバースの構築支援をやっているXRプロダクト開発企業である株式会社SynamonのCOO。さまざまなメタバースを陰ながら支えるという立ち位置だ。

メタバース業界の中にはいるものの特定のサービスだけに肩入れする必要がない。さまざまな形のメタバースが盛り上がれば盛り上がるほど良く、ゲームにせよソーシャルVRにせよメタバースが普及すれば得する立場だ。

本書の説明の内容についても偏りがなくバランスが取れている。著者が独特の偏った自説を展開しているということもなく、安心して読める。

メタバースの入門書としてはちょうどよいバランスの本なのではないだろうか。

欲望渦巻くメタバース業界の中において、奇跡のような一冊と言える。

本の内容については後述しているので、そちらを参考にしてほしい。

初級者〜中級者までカバーするおすすめメタバース本

初級者にもおすすめできるし、独特の著者の主張が書いてあって中級者にも楽しめる本があった。

加藤直人著『メタバース さよならアトムの時代』だ。 メタバース本をひととおり読んで「この業界、奇人変人が多いんかな?」と感じたのだが、この本の著者の加藤直人氏もなかなか独特だ。

将来は都市設計ごとメタバースに合わせて変えて、巨大な倉庫の横に狭い長方形の部屋が敷き詰められていたら良い、という主張が本の後半で出てくる。

それがメタバースに最適な都市だということらしいが、僕は、映画『マトリックス』の、機械に支配されたあかん方の世界の映像が脳裏に浮かんだ。

暗雲に空は覆われ、薄暗い中カミナリが鳴り続ける。山積みにされた変な装置に入れられた人間はツルッパゲにされてキモい液体に漬けられ喉の奥まで変な管を通されている有名なあれ。ディストピア中のディストピアである。

具体的には、大きな倉庫のすぐ隣に非常に狭い長方形の部屋が敷き詰められているようなイメージだ。モノを過剰に作る必要はなくなり、大量生産大量消費の時代が終わって、省エネが進む。 (Kindleの位置No.2.421) 

じゃあなんでこの本を初級者におすすめするんだ、という話になるわけだが、理由がある。

本書は全6章立てとなっており、最初の1章、2章が、メタバースの基本的な説明となっている。この2つの章で本のページ数の半分を割いているのだが、この部分だけは非常に抑制が効いており、著者の加藤直人氏は、実体験に基づいたわかりやすくしっかりした解説者に徹しているのだ。

博覧強記でたまに変なことを口走るけど、教えるのが抜群に上手い先生、みたいな感じだろうか。どの本より詳しく、メタバースの基本解説がなされているし、参考書籍もリスト化してあるので、さらなる深堀りもできる。そういうわけで、初級者にもおすすめできる。

著者の加藤直人氏はメタバースプラットフォーム「cluster」を手掛ける企業・クラスター株式会社の代表取締役である。つまり、本書は今まさにリアルタイムでメタバースプラットフォームを運営している人によって書かれたものなのである。

それらの事業を構想し、開発し、ここまで育ててきた中心人物なのでそもそもメタバースに詳しいし、実体験に基づく解説とちょっと未来を見通したコメントには重みがある。

本書の3章以降は、中級者向けの内容となっており、ある程度メタバースについて知っているという人も興味深く読むことができるだろう。もちろん、上記のようなぶっ飛んだ記述も出てくるが、それはそれで楽しみながら読むことができる。

なにしろ、まだメタバースとして完成したサービスはまだひとつもないわけだから、著者のぶっ飛んだ発想を聞けた方が書籍としては面白い。少なくとも僕はそう思う。

初級者におすすめのメタバース本、Kindle Unlimited編

初級者向けのおすすめメタバース本をもう一冊。白辺陽著『メタバース 完全初心者への徹底解説』を挙げておく。Kindle版しかない本であるが、Kindle Unlimitedにも対応しているので会員の人は追加の費用なしに読むことができるこの本に目を通すと良いかもしれない。 紙の本はなく、Kindleのみ。横組みで図版とリンクが豊富。

著者の詳細なプロフィールを見つけられなかったのだが、Web3、メタバース、NFT、DAO、DeFiなど、昨今の気になる言葉についての解説本をハイペースで出している。テクノロジー方面に明るい方なのだろうか。あくまで中立な解説者に徹している。

ボリュームは大きくないが、基本的な事は押さえられているので、メタバースについてさっと把握できる。
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