その中でも黎明期から活動し、あえて企業に属さずに個人での活動を貫き、さらには生配信ではなく“動画”を主軸に活動する甲賀流忍者!ぽんぽこさんと、オシャレになりたい!ピーナッツくんのことをご存知でしょうか。
2人合わせて、「ぽこピー」と呼ばれています。
活動初期から実写×バーチャルによる撮影技法を取り入れただけでなく、着ぐるみ化・パペット化、“中の人”のバーチャル化など、彼らの足跡を追うことそのものが、VTuberというジャンルの拡張性を感じさせます。 さらにはもともとVTuberとしてスタートしたわけではなく、その出自も個人制作によるショートアニメシリーズ『オシャレになりたい!ピーナッツくん』に端を発していることも、彼らの独自性を理解する上で欠かせない要素といえます。
はっきり言います、ぽこピーは語り尽くせません。ぽこピーはすさまじく複雑であり、知的で難解であり、活動4年という月日では考えられないほどに、幾重にも多層的な文脈が張り巡らされています。
その上で、彼らはあくまではじめて見る人、VTuberのことを全く知らない人でも楽しめるような、時流や社会性を意識した動画・コンテンツづくりを行っています。
その両義性を高いレベルで達成していることこそ、ぽこピーの真髄であり、我々KAI-YOUが度々言う“ポップ”ということなのでしょう。遍く広く、そして深く──今回は彼らの活動に共鳴したKAI-YOUのぽこピーガチ勢が殴り合いの果てに決定した「ぽこピー名作動画24選」をお届けします(目次は13個ですが紹介している動画は24本あります)。
VTuberの祭典「ぽんぽこ24」のカムバック、ラッパー/アーティストとしても活動するピーナッツくんの「POP YOURS」の出演が決定した今こそ知りたい、ぽこピーの歴史と現在。
目次
- 1. 狩猟系VTuberとしてのぽんぽこさん
- 2. ピーナッツくん、音楽における才能の片鱗
- 3. コンプレックスから生まれた怪物・ガチ恋ぽんぽこ
- 4. VTuber最多のモデル数? ぽんぽこさんの変化
- 5. 兄妹だから許される? えげつなすぎるドッキリ
- 6. 専業VTuberへの決意表明
- 7. 「YouTuberになっちゃった」
- 8. クリエイターに愛されるぽこピー
- 9. ぽこピーが拓く、VRChat×VTuberの可能性
- 10. この兄妹、てぇてぇすぎる……といつから錯覚していた?
- 11. ゆるキャラグランプリ・ダブル優勝コンビ
- 12. VTuberシーンの今を知る「ぽんぽこ24」主宰
- 13. ぽこピーが目指す“王道”
狩猟系VTuberとしてのぽんぽこさん
滋賀県甲賀市在住という特性を活かし、いったいどのような伝手で知り合ったのか不明ですが、ガチのハンターたちと同行し、イノシシ狩りに挑戦します。
「VTuberでは実写はタブー」という風潮がまだ強い中、この動画をきっかけにして業界の空気に風穴を開けていきます。以後続く「中の人のキャラクター化」「VTuber以外との共演」「着ぐるみ化」「パペット化」等、事務所に所属しない“個人勢”であることも活かした独自性の高い活動を展開していく狼煙だといえます。
ぽこピーの狩猟シリーズはいくつかありますが、やはり「鹿の解体」は初期の傑作と言わざるを得ません。仮想的で曖昧な存在であるVTuberが現実の自然、“生命”と向き合うということ。ぽんぽこさんの素朴で正直なコメントも相まって、あまりの批評性の高さに、僕は泣きました。
ピーナッツくん、音楽における才能の片鱗
音楽活動を本格化する以前から、すでに才能の片鱗を動画コンテンツ随所でうかがい知ることができました。ショートアニメ『オシャレになりたい!ピーナッツくん』での数々の劇中歌であったり、レオタードブタ名義でのMV(?)もそうです。
一世を風靡したDA PUMP「U.S.A.」と、ヒップホップシーンを塗り替えたLil Pumpの名曲「Gucci Gang」というありえない組み合わせからインスパイアされたであろう発想力、メロディのキャッチーさと疾走感。その非凡な才能を目の当たりにした瞬間でした。この楽曲から現在の躍進を確信したおともナッツも多いのではないでしょうか。
コンプレックスから生まれた怪物・ガチ恋ぽんぽこ
一方のぽこピーの2人といえば、いわゆる漫画・アニメ的な「萌えキャラ」の王道な文脈とは異なったデザイン。初期のぽこピーの2人もしきりに自分たちの見た目やデザイン上の統一感のなさを気にしていました。
そんな中で誕生したのが、ぽんぽこさんの別人格ともいえるキャラクター・ガチ恋ぽんぽこさん(以下、ガチ恋さん)です。過度に強調された目や媚び媚びの声、アイドル本人やファンらからは一般的に忌避される「ガチ恋」をその名に冠した独自性の高すぎるキャラクターとなりました。
そんなガチ恋さんが見出したのが、“昆虫食”です。その他、激辛カップラーメンや苦いものなど、食の試練を自らに課していく様と萌え声のギャップによってぽこピーのキラーコンテンツの一つとなりました。
VTuber最多のモデル数? ぽんぽこさんの変化
ぽんぽこさんはそもそも、忍者でたぬきのVTuber。変化を得意としているだけあって、数多くのVTuberの中でも屈指のモデル(アバター)数を誇っています。そんなぽんぽこさんにしかできない企画が、この動画。
あまりゲーム実況は行わないぽんぽこさんとピーナッツくんですが、この他にも自身の3Dモデルをゲームの中に落とし込んでプレイしています。例えば、e-Sports大会にまで参加した『カニノケンカ』はぽこピーを象徴するゲームタイトルといえるででしょう。
兄妹だから許される? えげつなすぎるドッキリ
生放送が主軸という撮影上の制約もありつつ、やはり「ドッキリ」は刺激的なコンテンツであり、“やさしい世界”が求められているVTuberとは少し相性が良くない、というきらいもあります。
しかしそこは実の兄妹である関係性が影響しているのか、ぽこピーは歯止めが効かない攻撃的すぎるドッキリを行うことでも知られています。
その代表作が、上に貼っている「スマブラドッキリ」。ドッキリに至るまで「ミッキーの真似をしながらスマブラする」という地獄のような時間が続きますが(褒めてます)、まさかのドッキリ内容が「募金用にスーパーチャットでももらった160万円を使い込んでしまった」というもの。
あまりの深刻さにピーナッツくんもたまらず「兄ぽこ」化し、ぽこピー史上でも屈指の名言「どういうスタンス?」が生まれた傑作動画となっています。兄ぽこさんの真摯すぎる態度に、この動画によって彼のファン数も急上昇しました。
最近だとぽこピーのドッキリはここぞという企画に用いられるレアな手法になっていますが、朝ノ姉妹とのコラボでのドッキリは本当に戦慄しました。こちらも最高です。
専業VTuberへの決意表明
サラリーマンだった兄ぽこさんが勤めていた会社を辞めたことも明かし、専業VTuberとして活動していくことを表明。VTuberシーンではほとんど存在しない動画の毎日投稿も宣言し、チャンネル登録者数20万人の目標も打ち立てました(動画投稿時の登録者は5~6万人程度だったと記憶しています)。
その道のりも簡単なものではなく、2021年7月に約2年半がかりで目標の20万人を達成。そこからは圧倒的なスピードで注目度を伸ばし続け、間もなく30万人に到達しようとしています。
ホロライブやにじさんじなど、大型の企業VTuberグループはデビュー前に数十万人もの登録者を達成することが多いですが、地道な活動が身を結んでいく様をリアルタイムで応援することができるのも、個人勢であるぽこピーならではといえるでしょう。
「YouTuberになっちゃった」
相方のピーナッツくんにも内緒で急に行ってしまう自分の行動力や発想に対して「YouTuberになっちゃったよ……」と一人ごちるシーンは、動画ネタのためならこの身をすべてを差し出す、ぽんぽこさんのプロVTuberとしての自覚の芽生えとその感慨を感じ取ることができます。それに対して「余命1年の生き方してるわ!」と突っ込むピーナッツくんとの掛け合いも素晴らしいですね。
北海道旅行シリーズは様々なドラマがあり、計画性があるのかないのかわからない、ぽんぽこさんならではの体当たりでのロケをたくさん楽しむことができます。
クリエイターに愛されるぽこピー
代表的なのはヨルシカの中心人物であるn-bunaさん。「ぽんぽこ24」の初回に登場し、生放送の企画でオリジナル楽曲「言の葉のうた」を作曲し、ぽこピーに提供。その他、BGMなどもn-bunaさんが提供しているものがあります。彼はピーナッツくんの相棒・チャンチョの全肯定主義者であることを自認しています。
また、声優/ラッパーの木村昴さんもピーナッツくん/レオタードブタとヤギハイレグの楽曲に感銘を受け、自身が登場する様々なメディアや場面で紹介しています。いろいろな経緯もあり、KAI-YOU Premiumの企画で対談も実現しました。 個人的には『ポプテピピック』の大川ぶくぶ先生がファンアートを書いているのが激アツです。
ぽこピーの3Dモデルを担当しているさえきやひろさんも、VTuberでありながらイラストレーター/3Dモデラーとして多方面で活躍。ロゴやポップアップショップ等のデザイン周りやピーナッツくんのMVでも多数のクリエイターが参加しています。 ファンの有志発の企画でつくられたオリジナル楽曲「はなとなり」も、これまでのぽこピーの道程やエッセンスが詰め込まれまくった素晴らしい楽曲に仕上がっています。今日の pic.twitter.com/Dqq3W7s7Wq
— 大川ぶくぶ/bkub (@bkub_comic) May 15, 2019
ぽこピーが拓く、VRChat×VTuberの可能性
特にVTuberのメインストリームであるほど、ニコニコ生放送から続くゲーム実況・配信文化を色濃く継いでいるのが実情といえます。その点においても、ぽこピーはVRChatを積極的に用いてチャレンジングな企画を実現しています(本当に彼らの特徴は枚挙に暇がなくて、筆者もそろそろ混乱してきました)。
代表的なものはホラーワールドの探索。ピーナッツくんがホラーゲームに滅法弱いこともあり、このシリーズ「ピ虐(ピーナッツくん虐待)」として定番化しています。
この兄妹、てぇてぇすぎる……といつから錯覚していた?
実の血縁関係があるYouTuberというのは、かなり少なく、その時点でぽこピーの最大の特徴ともいえます。やはり兄妹ならではの空気感でしか生み出せない動画というものも数多く存在しています。先に挙げた「スマブラドッキリ」などはその好例でしょう。
いつしか、僕らはぽこピーのことを、2人の兄妹が手を取り支え合いながら熾烈なVTuber業界で懸命に活動するVTuberだと思っていたのです。ファンであればあるほど、そうでしょう。
しかし、この動画では、その関係性消費ともいえる我々の態度に対して一石が投じられる新情報が明かされています。当たり前ですがまさに「YouTubeとかで知った気になっちゃいけないんだぞ」(ピーナッツくん「Expecto patronum!」より引用)ということですね。ぽこピー、深すぎる。
ゆるキャラグランプリ・ダブル優勝コンビ
日々のオンライン投票で1位になりつつも、ライバルたちも急加速で追い上げを見せるなどの接戦を繰り広げ、現地投票で決戦。見事にそれぞれが企業・その他部門で優勝。2年連続覇者となりました。第10回大会にはKAI-YOU取材班も現地に赴いています。 VTuber業界からの黒船としてゆるキャラシーンに乗り込みつつ、動画でも断続的にゆるキャラたちとのコラボを行っており、ゆるキャラたちへのリスペクトも感じられます。中でもYouTuberユニット・だいにぐるーぷが主宰する「ゆるキャラ運動会」は戦友ともいえるキャベッツさん、びわ湖くんと共闘の様子が見れて、胸がアツくなります。
VTuberシーンの今を知る「ぽんぽこ24」主宰
活動初期にぽこピーの名を一躍シーンに知らしめたきっかけでもあり、毎回60名を越えるVTuberやYouTuber、クリエイター、起業家などが参加。VTuberシーンの“今”を一望することができる神企画です。
これまで5回開催し、膨大なアーカイブ時間であるため、初心者が後追いするのはなかなか難しいと思いますが、この企画をきっかけにVTuberに興味を持つ人も多く、ある種の大型連休の風物詩ともいえます。
2人がこれまで培ってきた求心力あってこその生配信となっており、後にも先にもこれを真似できるVTuberは登場しないだろうと確信させられます。放送の終わりには謎の感動がいつもあります。
ぽこピーが目指す“王道”
ぽこピーを表現する言葉として、よく“異端”という言葉が使われます。これまで紹介したような唯一無二ともいえるスタイルと現在主流となっている配信文化としてのVTuberを比して考えると、たしかに異端と言わざるを得ないでしょう。しかし、彼らはあくまで「バーチャルとYouTuber文化が交わったときにどうなるのか?」というバーチャルYouTuber登場の黎明期に期待されていた夢をそのまま邁進しています。それを実現することは非常に困難なことで、多くのVTuberが去っていく理由の一つにもなりました。
異端にして王道──冒頭にも書いた通り、彼らの足跡を追うことが、そのままVTuberの可能性を拡張していく。
もしVTuberという言葉がその定義を失い、あるいはこの先に意味を持たなくなったとしても、ぽこピーという存在が歩いてきた道や生み出してきた文化がいつまでも残り続けていくでしょう。いよいよその注目度はキャズムを越え、遍く世の中に届こうとしています。
ぽこピーのことをもっと知る
連載
日夜生み出される現象や事象を“ポップなまとめ記事”として紹介する人気連載。 いま注目を集めるジャンル、気になったときにチェックしたいトレンド──。 KAI-YOUでは「POP」を軸に、さまざまな対象をまとめて紹介していきます。
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2件のコメント
米村 智水
@匿名ハッコウくん
この記事の筆者です。
申し訳ございません、まさにその通りで全肯定主義者でした。
修正させていただきました。
ご指摘ありがとうございます!
匿名ハッコウくん(ID:5369)
n-bunaさんはチャンチョ原理主義者じゃなくて、どのチャンチョも愛する全肯定主義ですよ(小声)