連載 | #17 KAI-YOU COMIC REVIEW

漫画コンシェルジュおススメ! GWに読みたい「お金」に関する名作漫画7選

漫画コンシェルジュおススメ! GWに読みたい「お金」に関する名作漫画7選
漫画コンシェルジュおススメ! GWに読みたい「お金」に関する名作漫画7選

画像はすべてAmazonから

いよいよ始まった「黄金週間(ゴールデンウィーク)」!

どこかに出かける人もいれば、帰省をする人もいたりと、それぞれの過ごし方をする長期休暇。

今回は、なにかと出費がかさみがちなこのゴールデンな週間に読みたい、「」の名を持ったタイトルや「」に関する漫画を紹介します。

この世は金金金金~~~~!

『ゴールデンゴールド』堀尾省太

お金に関する欲望をテーマにした作品の中でも注目しておきたいのが『ゴールデンゴールド』。

瀬戸内にある島を舞台に、内地の学校になじめず、両親の元を離れて祖母の住む島で暮らす少女・早坂琉花と、彼女が出会った謎の存在・フクノカミが巻き起こす混乱を描く作品です。

本作のキーとなるフクノカミは、人間の欲望を叶えてくれる存在。しかし、フクノカミはその欲望を増大させます。作中では、フクノカミの力によって観光事業が成功したことで、静かだった島には莫大な金が流れ込み、成功した者、追いやられた者も生まれ、人間関係も変化していくことに。

ここで『ゴールデンゴールド』が特徴的なのが、フクノカミ自身が江戸時代に一度封じられて以来、久しぶりに現代に復活しているということ。そのため、フクノカミはインターネットなどが発展し、SNSで他人の成功体験が目に付くようになったことでさらに増大した人間の欲望の巨大さに初めて触れることになり、パンク寸前になってしまいます

それに対応すべく、フクノカミはより暴力的で苛烈に願いをかなえる分身「カネノカミ」と、人を集め、集団の圧力と力で願いをかなえる分身「ヒトノカミ」の2体を生み出すのですが、フクノカミ同士も一枚岩でなく、島にはさらに様々な人々の思惑が渦巻くことに…。

「自分はこんな田舎に収まっていたくない」「自分だって、機会があれば世間の中心になれるんだ」そんな誰でも持っているような小さな野心とプライドが、どうやって大きくなり、「お金」という数字に追われるようになっていくのか、是非読んでみてください。ちょっとホラー要素もあります。

『ゴールデンカムイ』野田サトル

「金」にまつわる漫画といえば、何といっても野田サトルさんの『ゴールデンカムイ』。

北海道を舞台に、アイヌの少女・アシリパと日露戦争帰りの元兵士である杉本佐一が、どこかに埋まっているという莫大な砂金を求めて、同じく埋蔵金を追う軍人や、体に砂金のありかを示した地図を彫られた脱獄囚たちと戦いつつ各地を駆け回る同作。

これ以降に紹介する作品と『ゴールデンカムイ』違っている点は、登場人物たちが追い求めるのが「日本円」や「アメリカドル」などの通貨と違い、「金」であるという点

不況などのあおりを受け価値が変動する架空の存在である「通貨」と違い、物質として存在し、多少の相場の変動はあっても究極的には価値を失わず、世界中どこでも一定の効力をもっている「金」には、人間の欲を掻き立てる不思議な魅力が宿っています。

そんな埋蔵金を追う人々は心の中にどんな「欲」を抱えているのか? 純粋に金が欲しいのか、それとも、金を通して叶えたい思い、認めて欲しい人がいるのか? 人間が持つ様々な形の「欲望」と、その欲望とそれぞれの形で向き合う個性豊かなキャラクターたち。彼らが生み出すカオスなドラマは必見です。

4月28日に『週刊ヤングジャンプ』にて最終回を迎えたばかりの『ゴールデンカムイ』は、実写映画やアニメ4期も控えていてまだまだ盛り上がりが続いていきます。だからこそ、今、読むしかないでしょう!

『テンバイヤー金木くん』早池峰キゼン

もう一作、手段としてのお金を描いていて、なおかつより身近な話題を扱っているのが、『テンバイヤー金木くん』です。

転売でお金を稼ぐ小学生の金木くんと、彼に転売の抽選や先着販売のための並び屋として雇われたフリーター・大友の交流を描いく本作。

法律的には問題ないとされているものの、何かと嫌われている「転売」。ある種の社会問題ともいえる題材に切り込んでいきます。定職につくことができない大友と、家庭の事情によりお金が必要なものの、小学生のためバイトができない金木くんの2人は、生きるためのお金を稼ぐ手段として転売を行っています

本作では、社会の冷酷さを味わってきた金木くんが転売の仕組みやテクニックも解説。転売に苦しめられている人は、一度読んでみると逆にいろいろと対策を立てる参考になるかもしれません。

『定額制夫のこづかい万歳 月額2万千円の金欠ライフ』吉本浩二

さらに身近なお金に関する話題を扱っているのが、『定額制夫のこづかい万歳 月額2万千円の金欠ライフ』です。

作者である吉本浩二さんの実体験をもとに描かれているエッセイ漫画である本作。月に2万千円というお小遣いをどう分配し、節約しながら最大限に日々を楽しむのか、その創意工夫が紹介されています。

ポンタポイントの効率を求めて飲み物を選び、昼代を節約するためにコンビニで腹持ちのいい総菜パンを探すサラリーマン・主婦たちの姿は、共感する人も多いでしょう…。

本記事で紹介する中で最も少額を扱う本作。だからこそ、本作の持つ圧倒的なリアル感は、最も心を動かしてくれる作品でもあるかもしれません。

ちなみに筆者は学生時代ローソンでバイトしていたのですが、作中で紹介されているお菓子や新商品が通常の半額などのポイントで交換できる「ローソンお試し引換券」は、ぱっと見で「これうまそうだな!」となるレベルの新商品の場合、先着順で激戦になるため、午前中に引き換えてしまうことをおすすめします。

ゴールデンウィークに旅行の予定があったりして、月初なのに自由に使えるお金がない! という人にもおすすめです。なんか悲しくなってきました。

『ハイパー・インフレーション』住吉九

欲望はもちろん、手段としてのお金を冷徹に描いているのが『ジャンプ+』の『ハイパー・インフレーション』。

「ヴィクトニア」という帝国に奴隷としてさらわれた姉を助けるべく戦う、神秘の力を持つガブール人の主人公・ルークの活躍を描いています。

ガブール人の持つ神秘の力とは、人間の本能である「子孫を残す」という欲望よりも強い欲望を持ったガブール人に対して、生殖能力と引き換えに神から授けられるもの。その力を授けられると、まるで性欲を発散するかのように、その欲望を象徴する何かを体から生み出すことができるようになります。

主人公・ルークが望んだのは、帝国と対等に商売を行うことで、奴隷狩りに怯えなくていい世界をつくり出すための「世界を買えるカネ」。その結果彼は、体から材質、印刷まで完全に本物と同じである完璧な贋札を生み出すことができるようになりました。

しかし、完璧に見えるルークの贋札には、「体から出したお札の番号が全て同じ」という唯一にして最大の弱点が存在します。ルークが悪党たちと協力してその弱点をカバーする策を用意したリ、かと思えば帝国側も贋札対策を行ってきたりと、お互いに相手の心理も利用しまくるハイレベルな頭脳戦は必見です。

いかに贋札が経済を破壊するのか、贋札のつくり方等も詳しく解説してくれる、『ハイパー・インフレーション』のテーマはまさに「お金」。しかし作中のキャラクターたちにとっては、一部の例外を除いては、お金はあくまで目的を叶えるためのただの手段でしかありません。

お金を追い求めながらも、お金に対してドライである、非常に独特な一作になっています。歴史的な円安と物価高騰に見舞われる今こそ読むべき作品でしょう…。

『銀と金』福本伸行

『定額制夫のこづかい万歳 月額2万千円の金欠ライフ』が身近なお金を扱う作品だとすれば、最大の金額を扱っているのがこの『銀と金』。

賭博黙示録カイジ』などの名作で知られる福本伸行さんによって描かれた本作は、バブルが弾け、不況へと向かいつつも、その熱狂の時代の残り香を残した時代を描いた作品です。

本作の主人公は、「銀王」と呼ばれる裏社会のフィクサー・銀二と、彼が見出した、カネへの欲望と天性の強運を持つ男・森田が、様々な金持ちや銀行、政治家などを相手取り大金を稼いでいくというもの。

世間は不況へと向かい、夢や野望が萎みつつある時代において、バブルの再来を願い、大胆な手口で大手銀行の頭取すら掌の上で転がして見せる銀二のギラついた姿には、今の日本が失っているような怪しいエネルギーと魅力が満ちています。

一方で、その銀二が見出した男・森田は、究極的には金への執着が無く、大金がかかった勝負のここぞという場面で「いくら得ていくら失うのか」という損得ではなく、勝負の流れに乗った判断ができるからこそ勝利を呼び込むことができるという不思議な男。

お金がどう人を狂わせるのかや、欲望がどう暴走していくのかを堪能した後は、『銀と金』で、そういった欲望を乗りこなして戦う男たちの姿を是非読んでみてください。

『望郷太郎』山田芳裕

最後に紹介するのが、『へうげもの』で知られる山田芳裕さんによる作品『望郷太郎』。

本作は、地球が未曾有の大寒波に襲われてしまい、地位を利用して人工冬眠についた主人公・舞鶴太郎が、500年後、文明が後退した世界で目覚め、故郷を目指していく物語。

舞鶴太郎は、巨大企業・舞鶴グループの7代目にして舞鶴通商イラク支社長として、中東でブイブイ言わせていた男。大寒波に襲われた際も、その地位によって、家族と共に実験中の人工冬眠装置に入ることに成功します。しかし、太郎が目覚める数百年前に、家族の入っていた装置は停止しており、太郎以外はそのまま装置の中で亡くなってしまいます。

その後目覚めた太郎は、家族が死んでいること、そして文明が滅んでいることに気づき絶望。しかし、死ぬならせめて中学入学を機に東京の実家に預けていた長女がどうなったのかを確かめたいという思いから、日本を目指して旅をしていきます。

『望郷太郎』がこれまで紹介してきた作品と比べて特徴的なのが、主人公がお風呂やゴルフが好きなくたびれたおじさんだということ。

旅の途中で太郎は、狩猟・採集や物々交換をして生きる人々や、新たな通貨「マー」をつくり、かつての文明のような貨幣経済を行う大国・マリョウと出会います。

今回紹介した他の作品ではいずれも積極的にお金を稼ごうとしていましたが、本作の太郎は最早そういったお金を稼ぐためのマネーゲームは500年前の世界でやり尽くしており、むしろ500年後の世界で金の力を利用しようとする人々に対しては苦々しい思いを抱くことに。

誰よりもお金の力を知っているからこそ、それに頼らずに生きている人たちの尊さも理解することができる。お金に関する作品を色々と呼んでみたら、是非『望郷太郎』も読んでみてください。

GWに読んでおきたい漫画たち

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