ライブエンタメ市場、最短で2023年に回復 ぴあ総研「政府の支援継続が前提」

ライブエンタメ市場、最短で2023年に回復 ぴあ総研「政府の支援継続が前提」
ライブエンタメ市場、最短で2023年に回復 ぴあ総研「政府の支援継続が前提」

Photo by Nainoa Shizuru on Unsplash

POPなポイントを3行で

  • 2020年市場の8割が消失したライブ産業
  • ぴあ総研が2023年に以前の水準に回復と推測
  • 制限の撤廃と政府による支援継続が前提
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大により、音楽ライブやステージなどの8割が消失した2020年のライブ・エンタテイメント市場。

ぴあ総研は28日、市場規模について今後の予測を発表。緊急事態宣言や国・地方自治体の開催制限もあり、2021年は全盛期の5割にも満たない2787億円と試算した。

一方で、今後コロナ禍が収束に向かい、2022年3月までに開催制限が完全撤廃されれば、早ければ2023年に以前の水準に回復。その後、年平均成長率2.4%で安定して成長すると推測している。

「政府の支援が2025年まで継続することが前提」

ライブ・エンタテイメント市場規模・将来推計/ぴあ総研発表資料

回復を後押しする要素について、「政府による支援が2025年まで継続することを前提」とした上で、ぴあ総研は以下の4つを上げている。

1つ目は、緊急事態宣言下で開催されているリアルイベントについて、需要・供給が緩やかながらいずれも回復傾向にあること。

2つ目は、現在上限人数制限による入場収入の減少や感染予防対策など費用の増加で、チケット価格の平均に上昇傾向が見られるが、今後しばらく戻らない可能性が高いこと。

3つ目は、アーティスト、観客両者ともにリアルイベントの再開を望んでおり、開催制限の解除後、その反動で市場が活性化することが見込めれること。

そして4つ目は、コロナ以前に問題となっていたライブ会場不足問題が、新たなアリーナやホール・劇場の設立によって解消されつつあること。

ただし、今回の予測は、J-LOD live(コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金)やARTS for the future!(コロナ禍を乗り越えるための文化芸術活動の充実支援事業)のような、政府の支援の継続なくしては困難と指摘している。

ライブ・エンタメ市場の回復に遅れ

2020年の音楽ポップスフェス市場規模推計/ぴあ総研発表資料

ぴあ総研では4月16日、2020年の音楽フェス(同時間帯に複数アーティストが出演する形式)の市場動向に関する調査結果を公表。市場規模は前年比97.9%減の6.9億円へと激減、動員数も9.3万人(前年比96.8%減)と大きく落ち込み、関係者やファンの間に衝撃が広がっていた。

続いて5月13日には、2020年1月から12月のライブ・エンタテインメント市場規模について、数年続いていた増加トレンドから一転、コロナ禍によって前年比82.4%減の1106億円と発表。

2020年2月下旬以降、数多くの公演が開催中止や延期となり市場は大幅に縮小。第1次緊急事態宣言の解除後、イベント開催に制限が完全に解除されないままに感染の第2波・第3波が到来したことから、市場の回復が遅れていると説明していた。

ジャンル別にみると、音楽は前年比86.1%減の589億円、ステージは前年比74.8%減の518億円と、いずれも大幅に下落。特に、5000人以上の大規模会場での公演が市場規模の過半(例年)を占める音楽ジャンルにおいて、人数制限の長期化の影響が色濃く受ける結果となっている。

※ライブ・エンタテインメント市場規模=音楽コンサートとステージでのパフォーマンスイベントのチケット推計販売額合計と定義。

ぴあ総研「集客エンタメの本質的価値そのものは揺らがない」

■ぴあ総合研究所株式会社 所長 笹井裕子よりコメント

・コロナ禍により、集客エンタメ界のDXは否応なしに進み、オンラインライブなど新しいビジネスは不可逆に進むとみられる。また、人びとの価値観や生活様式も変化したが、集客エンタメの本質的価値そのものは揺らがない。

・当分はwithコロナが続くと腹をくくらなければならない。withコロナの状況にあっても、感染症対策を徹底した上で、集客エンタメを当たり前に開催・鑑賞できる日常を早く取り戻したい。それは、コロナ禍で閉塞した人や社会のつながりの活性化にもつながるはずだ。ワクチン接種がさらに進み、「ワクチン・検査パッケージ」のような仕組みの導入により社会経済活動が活性化に向かうことに期待を寄せたい。

・「市場規模がコロナ前の水準に戻る」というのは、集客エンタメ産業の回復を示すメルクマールとなるだろう。ただし、開催制限による売上げ減に加え、嵩む感染症対策費等が事業収益に影を落としており、コロナ前と全く同じビジネスモデルに戻るのは難しい。入場料収入に依存する割合が高いことや、横の連携が弱いこと、個人事業主やフリーランスの多さなど、集客エンタメ界の脆弱性がコロナ禍で浮き彫りになった。新たなビジネスモデルの構築や、同業他社との協業や他業種とのコラボ、行政との連携などを通したより足腰の強い産業構造への転換など、思い切った変革が求められる。

■ぴあ総合研究所株式会社 論説委員・ぴあ株式会社 取締役 小林覚よりコメント

・回復予測は、あくまでも開催制限の大幅な緩和と公的支援の継続を前提としたものであり、業界の体力が奪われ、個人事業主である人材の多くが疲弊した中での完全な復活には時間がかかる。

・一方、イベントの開催とその観客は着実に増加傾向にあると同時に、ライブ・エンタテインメントは、SDG'sの掲げる持続可能な社会に向けて、人々の行動変容の有力なキーファクターになるものと考えられる。

・環境に優しく、人々に活力を与えるライブエンタメ産業の価値は、今後より一層見直されるはずであり、社会全体からの期待値の高まりを実感している。コロナ下では不要不急のレッテルを貼られたが、むしろ21世紀の新たな「ライフライン」として成長するものと予測している。

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