2年前に行われた冬コミ(C97)、その後の延期・中止によって発生した空白、そして2021年5月に複数の運営団体が協力しコロナ禍で行われた同人誌即売会「COMIC1 BS祭 スペシャル」。
刻一刻と変化する状況の中で、即売会の意義や開催するための工夫を口にしてきたコミックマーケット準備会の共同代表・市川孝一さんに、2年ぶりの開催について話を聞いた。
チケットを事前販売かつ抽選制にし、入場にはワクチン・検査パッケージを導入。来場者が2年前の75万人(4日間)から11万人(2日間)となった今回のコミケットで感じた手応えと反省とは。
※取材は2021年12月31日のコミックマーケット開催当日に行った
「どうやったら開催できますか?」密な連携で練ったプラン
──2年ぶりの現地開催となるコミケットですが、率直にどう感じていますか?市川孝一 まず、開催できたことが本当に感無量です。オリンピックの影響で使えなかった東展示棟も帰ってきて、2年ぶりにこの場所(東京ビッグサイト)に立てたということが、私自身すごく嬉しいですし、来場された方はみなさん、晴れやかな顔をしていたと思います。
一方で、チケットが抽選制となったことで参加できなかった人もいましたし、様々な事情から参加を控えた方もいます。そういった人たちがまた戻ってこられるコミケットにするためにも、今回の第一歩が踏み出せたことは非常に意味があったと考えています。 ──開催決定のタイミングや開催期間中、サークルや他の即売会の運営団体からはどんな声がありましたか?
市川孝一 「開催してほしい」という声が多く、ありがたかったです。
印刷会社さんはもちろん、他の即売会の運営団体さんからも、業界全体を盛り上げるためにも開催してほしいと言ってもらえました。サークルさんとしても、コミケットがあると締め切りが決まるので、原稿を書くモチベーションが上がるという声を聞いていますし、期間中には感謝の言葉もいただきました
──5月の「COMIC1 BS祭 スペシャル」から、8月に感染が拡大、4度目の緊急事態宣言など、先行きが見えづらい状態が続いていました。
市川孝一 コミケット当日に緊急事態宣言が出ているか否か、まん延防止措置の状態がどうなっているかで状況は変わってくるので、リリースを出した8月の段階では、本当に開催できるのか正直不安もありました。
その後、徐々に感染者も減り、イベントの開催制限も緩和されていく中、どういった形なら開催ができるのか検討し、今回は感染症対策を強化した上での、5万5000人という来場者数の制限を設ける判断をしました。
──秋から年末にかけて、開催に関連した情報をかなり頻繁に更新していたように思います。この2年間、新たな生活様式の旗印の下、リモートでのコミュニケーションも当たり前になってきました。コミケットというリアルの場に、どれだけの参加者が戻ってきてくれるのか、我々にも不安が無かったといえば嘘になります from #C99A to #C100 pic.twitter.com/DXEXjHaFPc
— コミックマーケット準備会 (@comiketofficial) December 31, 2021
市川孝一 内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室、文化庁、経済産業省とも連携をとり、藤末健三議員、山田太郎議員、鈴木あきまさ都議にも様々な形でコミットしていただき、変化する状況を確認して「どういうかたちであれば開催が可能ですか?」と、都度都度必ず確認するようにしていました。そういった日々の積み重ねがあったので、開催に向けたプランをしっかりと組み立てることがでたと思います。
「今回はこれが精一杯」制限下で追求した最善
──「C99」は、コロナ禍で開催されたイベントとしては国内最大規模だったのではないでしょうか?市川孝一 そうですね。一日で5万5000人、2日間で11万人になるので、現在のような状況下では来場者数の多いイベントだと思います。
その中で、準備会としては「まずコロナに感染しない、そして、万が一かかったとしてもうつさない」ということを徹底して守ろうと説明をしてきました。 ──主な感染症対策としては、具体的にどのようなことをされていたのでしょうか?
市川孝一 大きなものとしてはワクチン・検査パッケージ(※)の導入です。ほかにも、全参加者向けにアルコール消毒液を設置しましたし、除菌ティッシュとマスクを全てのサークルさんの机に配布しました。
※緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの発令下においても、イベントの主催者などがワクチン接種歴やPCR検査の結果を確認することで感染リスクを低減させ、行動制限の緩和を可能とするための制度
市川孝一 コロナ禍でイベントを行うには、国や都、東京ビッグサイトが出しているガイドラインに従う必要があります。
5万5千人は、ガイドラインを守ることだけでも許される入場者数だったのですが、現状における開催規模を考えると、ワクチン・検査パッケージを導入することで、国内最大級の規模となるイベントの開催が安心・安全に行われることをコミケット内外に説明し、当日運用することにより、無事に開催することを目的とする必要があると考えています。また、これまで開催されてきた他の即売会も参考にさせていただき、制限がある中でも最大限良いイベントを目指しました。
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連載
2021年12月30日(木)・31日(金)の2日間にわたって東京ビッグサイトの東・西・南展示棟(サークル・企業ブース)で開催される「コミックマーケット99(C99)」を特集。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で中止・延期を経て、2019年12月の冬コミ「コミックマーケット97」以来2年ぶりにリアル開催される世界最大級の同人誌即売会。 参加者の入場に新型コロナワクチンの接種証明やPCR検査結果証明の確認を実施、東西エリアが自由に行き来できないなど、従来とは大きく異なる中で1日あたり約10000サークルが参加。 サークル、コスプレ、一般、さらには準備会と、コミケにおける全参加者の状況を特集する。
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