──感染症対策の徹底は、取材メディアの参加人数の制限やエリアの入退場におけるリストバンドの確認などからも感じられました。
市川孝一 当然ながら、その影響でこれまでにはない制約も発生しています。
これまでコミケットは「来る者拒まず」で、基本的には誰でも自由に参加できるイベントだったわけですが、その前提が変化してしまった今回、かつてのコミケットと比較して不満を感じた人もいると思います。
チケットも東と西で分かれていましたし、そのチケット自体もどんな倍率なのか、買えるのかもわからず、直前まで不安があったことは我々も認識しています。
──さらには東展示棟と西展示棟をつなぐブリッジが封鎖され、基本的に自由には行き来できませんでした。
市川孝一 不満に感じる参加者もいることは重々わかっていたんですが、人数が一部のホールに偏ると密が発生してしまうおそれがあるので、最初から自由に行き来できるようにはできませんでした。ブリッジの開放時間についても、実際にイベント当日を迎えてみないと本当に行えるかの判断が難しかったんです。
そのため、まずは分散して入場してもらい、そこから可能な限り早くブリッジの開放を目指すのが当日のミッションでした。結果的に、1日目は13時10分に開放。その日のうちに反省点を洗い出して改善を図ったことで、2日目は12時過ぎには開放することができました。
不便な点があるのは事実ですし、そこは本当に申し訳ないと思っています。でも、今回はこれが精一杯というのが実情です。「これまで通りじゃないかもしれない、それでもコミケットをなくさないためにはどうしたらいいか」を考えて、今回のコミケットは開催されました。
市川孝一 準備会はほとんどのスタッフがボランティアで参加してくれています。そして、この巨大なイベントが開催できるのは、そのボランティアのスタッフたちがノウハウとモチベーションを持ってコミケットという「場」を支えてくれているおかげです。
この2年間の空白によって、ノウハウが薄れてしまった部分も正直ありますし、モチベーションを維持するのも大変でした。開催できるときに開催しなければ、ノウハウを更新し、モチベーションを保つことは困難になります。仮に開催があと2年遅かったら、開催できたとしてもブランクが長すぎて、期間中になんらかのトラブルが発生する可能性が高かったと思います。
──最後にひとつ、リストバンドを使った一般参加の有料化を導入した2019年の夏コミ(C96)でのインタビューでは、将来的にはフリー入場に戻したいというお話でした。今回は、事前販売かつ抽選制になったことで、徹夜組や始発ダッシュが無くなり、より快適・安全になったという声がある一方、サークルからは部数が読みづらいという意見もありました。当時とは状況が大きく変化していますが、今後の方針に変化はありますか?
市川孝一 正直に言えば、やっぱりもともとの一般参加者は制約なく参加してもらう形に戻したいというのが本音です。ただ、コロナもすぐに無くなるわけではありませんし、状況を見つつ戻すにしても、どうしても段階を踏む必要はあります。
それに実際問題として、徹夜組や始発ダッシュという行為が無くなったことで、我々としては夜中の警備を立てないでいいですし、安全面の配慮や警備の負担がすごく軽くなるんです。
とはいえ、来場者数が減ったこともあり、サークルのみなさんは発行部数の計算が相当難しかったと思います。良い面・悪い面をそれぞれあることのバランスを検討しつつ、2019年の冬コミ以前の形態が最善の形なのか改めて考えなければなりません。
一般参加者は制約なく参加してもらう形に戻すべきなのか──新しい形式の良い部分は残しつつ、今までの良かった部分を復活させられるよう、話し合いながら進めていき、最善という意味での“元の形”に戻せたらいいなと思います。
──次回は記念すべき100回目となります。難しい状況ではありますが、現時点での展望やビジョンを教えてください。
市川孝一 「コミックマーケット100」については、文字通りこれから考えていくところですね。
すべての部署や関係各所から話を聞き、今回の反省をすべてまとめ、今後のコロナの状態に応じた開催パターンを複数考える。その上で、今回良かったから残したい部分、改善すべき部分を調整していく。
おそらく1月中はこの作業に追われると思っているので、我々に正月はないでしょうね(笑)。サークルの申込も2月後半にははじまりますので、来月の遅くない時期までに発表できるような内容をまとめておきたいです。
──その中には、今回なかった紙のカタログについての議論もありますか?
市川孝一 そうですね。実際、紙のカタログが欲しいという声もあります。とはいえ、これまで通りの方法で出版するのは、延期や中止になった時のリスクが高いので、オンデマンドや、少し値段が高くなることを前提に、欲しい人に向けた受注販売などの可能性も含めて考えていきたいです。
我々も今回運営してみて、いつでもネットにつなげられるわけではないですし、手元にカタログがあればなと思う瞬間はありました。あとは、やっぱり我々は紙が一番好きでもあるので、紙のカタログも含めて、100回目のプランを練っていきたいと思います。
市川孝一 当然ながら、その影響でこれまでにはない制約も発生しています。
これまでコミケットは「来る者拒まず」で、基本的には誰でも自由に参加できるイベントだったわけですが、その前提が変化してしまった今回、かつてのコミケットと比較して不満を感じた人もいると思います。
チケットも東と西で分かれていましたし、そのチケット自体もどんな倍率なのか、買えるのかもわからず、直前まで不安があったことは我々も認識しています。
──さらには東展示棟と西展示棟をつなぐブリッジが封鎖され、基本的に自由には行き来できませんでした。
市川孝一 不満に感じる参加者もいることは重々わかっていたんですが、人数が一部のホールに偏ると密が発生してしまうおそれがあるので、最初から自由に行き来できるようにはできませんでした。ブリッジの開放時間についても、実際にイベント当日を迎えてみないと本当に行えるかの判断が難しかったんです。
そのため、まずは分散して入場してもらい、そこから可能な限り早くブリッジの開放を目指すのが当日のミッションでした。結果的に、1日目は13時10分に開放。その日のうちに反省点を洗い出して改善を図ったことで、2日目は12時過ぎには開放することができました。
不便な点があるのは事実ですし、そこは本当に申し訳ないと思っています。でも、今回はこれが精一杯というのが実情です。「これまで通りじゃないかもしれない、それでもコミケットをなくさないためにはどうしたらいいか」を考えて、今回のコミケットは開催されました。
徹夜組や始発ダッシュが消えた今、元に戻すべき?
──前回の現地開催である2019年の冬コミから2年間が空いたことでの変化はありましたか?市川孝一 準備会はほとんどのスタッフがボランティアで参加してくれています。そして、この巨大なイベントが開催できるのは、そのボランティアのスタッフたちがノウハウとモチベーションを持ってコミケットという「場」を支えてくれているおかげです。
この2年間の空白によって、ノウハウが薄れてしまった部分も正直ありますし、モチベーションを維持するのも大変でした。開催できるときに開催しなければ、ノウハウを更新し、モチベーションを保つことは困難になります。仮に開催があと2年遅かったら、開催できたとしてもブランクが長すぎて、期間中になんらかのトラブルが発生する可能性が高かったと思います。
──最後にひとつ、リストバンドを使った一般参加の有料化を導入した2019年の夏コミ(C96)でのインタビューでは、将来的にはフリー入場に戻したいというお話でした。今回は、事前販売かつ抽選制になったことで、徹夜組や始発ダッシュが無くなり、より快適・安全になったという声がある一方、サークルからは部数が読みづらいという意見もありました。当時とは状況が大きく変化していますが、今後の方針に変化はありますか?
市川孝一 正直に言えば、やっぱりもともとの一般参加者は制約なく参加してもらう形に戻したいというのが本音です。ただ、コロナもすぐに無くなるわけではありませんし、状況を見つつ戻すにしても、どうしても段階を踏む必要はあります。
それに実際問題として、徹夜組や始発ダッシュという行為が無くなったことで、我々としては夜中の警備を立てないでいいですし、安全面の配慮や警備の負担がすごく軽くなるんです。
とはいえ、来場者数が減ったこともあり、サークルのみなさんは発行部数の計算が相当難しかったと思います。良い面・悪い面をそれぞれあることのバランスを検討しつつ、2019年の冬コミ以前の形態が最善の形なのか改めて考えなければなりません。
一般参加者は制約なく参加してもらう形に戻すべきなのか──新しい形式の良い部分は残しつつ、今までの良かった部分を復活させられるよう、話し合いながら進めていき、最善という意味での“元の形”に戻せたらいいなと思います。
──次回は記念すべき100回目となります。難しい状況ではありますが、現時点での展望やビジョンを教えてください。
市川孝一 「コミックマーケット100」については、文字通りこれから考えていくところですね。
すべての部署や関係各所から話を聞き、今回の反省をすべてまとめ、今後のコロナの状態に応じた開催パターンを複数考える。その上で、今回良かったから残したい部分、改善すべき部分を調整していく。
おそらく1月中はこの作業に追われると思っているので、我々に正月はないでしょうね(笑)。サークルの申込も2月後半にははじまりますので、来月の遅くない時期までに発表できるような内容をまとめておきたいです。
──その中には、今回なかった紙のカタログについての議論もありますか?
市川孝一 そうですね。実際、紙のカタログが欲しいという声もあります。とはいえ、これまで通りの方法で出版するのは、延期や中止になった時のリスクが高いので、オンデマンドや、少し値段が高くなることを前提に、欲しい人に向けた受注販売などの可能性も含めて考えていきたいです。
我々も今回運営してみて、いつでもネットにつなげられるわけではないですし、手元にカタログがあればなと思う瞬間はありました。あとは、やっぱり我々は紙が一番好きでもあるので、紙のカタログも含めて、100回目のプランを練っていきたいと思います。
コミケの役割と生み出してきた文化
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連載
2021年12月30日(木)・31日(金)の2日間にわたって東京ビッグサイトの東・西・南展示棟(サークル・企業ブース)で開催される「コミックマーケット99(C99)」を特集。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で中止・延期を経て、2019年12月の冬コミ「コミックマーケット97」以来2年ぶりにリアル開催される世界最大級の同人誌即売会。 参加者の入場に新型コロナワクチンの接種証明やPCR検査結果証明の確認を実施、東西エリアが自由に行き来できないなど、従来とは大きく異なる中で1日あたり約10000サークルが参加。 サークル、コスプレ、一般、さらには準備会と、コミケにおける全参加者の状況を特集する。
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