「ブームが去っても嘆かない」ボカロP・てにをはインタビュー 創作への執着と達観

「ボカコレ」に感じた兆し、ブームが去っても嘆かない

──ここまでのお話で、てにをはさんはどこか達観しているというか、大きな目的が「つくること」であり、自分との対話の中で楽曲を制作していると感じます。例えば、ボカロシーンの変化のようなものは、あまり気にされないのでしょうか?

てにをは もちろん変化していくのを肌で感じたり、面白いなと思いながら見ていますよ。

ただ、全く「我関せず」というのも無理な話ですけど、さっきも言ったように基本的にはなるようになると思っている節があるんです。

何度目かわからない今のボカロブームが去ったとしても、特別それで嘆くことはたぶんないと思う。また復活して繰り返すんだろうなと感じるくらいで、受け入れると思うんです。

悪い意味ではなく、ブームの有無に関わらず、ボカロPそれぞれの熱意に大きな変化はなかったと思うんですよ。変わらず情熱を持ってつくり続けている人は常にいた。もちろんブームとして盛り上がれば、見てくれる人も増えて嬉しいという気持ちは当然あります。

ただ、歴史という観点で振り返ったときに、僕自身がそのブームの恩恵を受けたか、受けなかったかという感覚はあまりないんですよね。そこを分析しても仕方ないというか、「あのときのシーンはどうだった」というよりは、個人や曲ごとでしか覚えてないので。

──そんなてにをはさんにとって、「ボカコレ」はどのように見えていたのでしょうか? 2020年12月開催の第1回では、期間中に新曲を投稿されていますよね。
てにをは そのときは……僕としては、いつも通り投稿しただけだったので、自分の体験として何か違ったかというと、実はいつもと一緒だったんですけど(笑)。

それでも、ボカロ音楽に何かまだ可能性があって、変わらずつくり続けている人たちは健在だし、新しい人が参入できるような場所をつくろうとしてるんだなと。熱量や何かがはじまる兆しのようなものを感じましたね。

──普段通りに投稿したつもりが、どうやら何かが起こっているらしいという感覚ですか?

てにをは もちろん話には聞いてはいたんですけど、リアルなイベントと違って、ネット上でとなると、蓋を開けてみるまでどんなものになるのかわからなかったんです。

なので、いざそうなったときに、熱量や楽しんでいる人たちの反応の大きさに結構びっくりしたんですよ。

創作を楽しむ人にとって「ボカコレ」は最高の舞台

「ボカコレ2021秋」

──今回の「ボカコレ2021秋」をきっかけに、ボカロ曲をつくってみようかなという人もいると思います。そういった人に向けて、何かアドバイスはありますか?

てにをは つくることの楽しさだけで言うと……これもまたひねくれた答えですけど、何かを期待することを一度脇に置く必要があると思います。誤解を恐れずに言えば「ちやほやされたい」「モテたい」「良い家に住みたい!」などの欲求は、一回抜きにして取り組まないと続かないですよ。

一向に成功しないダイエットを続けられる人が少ないように、目的や欲求が達成されないまま続けるのは難しいと思うんですよ。僕の場合はつくることが目的だったから、もう叶えられていたわけです。

ブームとか他の人とかとあまり関係なく10年間淡々とやってこれたのは、ずっと目的が叶い続けていたから。具体的な数字とか世間的な評価を目的にはじめると、思い通りにいかなかったときに、何年辛抱できるかという我慢比べの問題になっていく

偉そうな表現になりますけど、まずはつくることを楽しんでください。その上でつくったものを──僕にあまりない感覚でしたけど──外に出したときに人と繋がれるとか、曲が評価されて我がことのように嬉しいとかっていうのがついてくるんだと思います。

「やっぱりつくっている時間は楽しいな」「機材を揃えていくとワクワクする」という感覚を持っている。そういう人は、音楽を続けているし、もっと言うと進化している気がしますね。

ある程度満足しても良いのにまだ続けているのはなぜか? 目的の一部に過程が含まれている人たちは、個人的にもかっこいいと思います。

──では、そういったつくること自体を楽しめる人たちにとって、今のニコニコ動画や今回の「ボカコレ2021秋」は、てにをはさんが出会ったような友人と出会える環境だと思いますか?

てにをは 思います。やっぱり人がそこに集まってくる限りは、自信を持って「自分が楽しんでつくったんだ! どうだ!」と、何ひとつ負い目を感じることなく繋がっていけると思います。

その中で友達を100人つくる必要なんかないんですよ。1人……みんながネット上で1人ずつ、さらに繋がれれば良いわけなので。仮に繋がりができなかったとしても、それをエネルギーにまた曲をつくればいいだけなんです。

「ボカコレ」という場があること、その場をつくろうとしている人たちがいて、新たに参加して盛り上げようとする人たちがいるのなら、それは素晴らしいことだと思います。

ネット最大のボカロイベント
「The VOCALOID Collection ~2021 Autumn~」


開催日時:
2021年10月15日(金)~17日(日) / 前夜祭:10月14日(木)

開催場所:
ニコニコTOPページなどのネットプラットフォームほか

公式Twitter:
https://twitter.com/the_voca_colle

公式サイト:
https://vocaloid-collection.jp/ 

協賛:
東武トップツアーズ株式会社

協力:
株式会社インクストゥエンター、株式会社インターネット、ガイノイド、カクヨム、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社、産業技術総合研究所 RecMusプロジェクト、株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ、Twitter Japan、一般社団法人 日本ネットクリエイター協会(JNCA)、株式会社NexTone、VOCALOMAKETS、ヤマハ株式会社

メディアパートナー:
InterFM897、MTV、『GAKUON!』、JFN、『BOMBER-E!』、『RADIO MIKU』

「VOCALOID(ボーカロイド)」ならびに「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。

「ボカコレ2021秋」をチェックする

ボカロPの言葉とシーンの変遷

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「The VOCALOID Collection ~2021 Autumn~」

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2021年10月15日(金)~17日(日) / 前夜祭:10月14日(木)
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ニコニコTOPページなどのネットプラットフォームほか
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東武トップツアーズ株式会社
協力
株式会社インクストゥエンター、株式会社インターネット、ガイノイド、カクヨム、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社、産業技術総合研究所 RecMusプロジェクト、株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ、Twitter Japan、一般社団法人 日本ネットクリエイター協会(JNCA)、株式会社NexTone、VOCALOMAKETS、ヤマハ株式会社
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※「VOCALOID(ボーカロイド)」ならびに「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。

関連キーフレーズ

てにをは

作家/ミュージシャン

代表曲に女学生探偵シリーズ・モノノケミステリヰシリーズ・ヴィランなどがある。様々なアーティストに楽曲や歌詞を提供する一方で自身の音楽・執筆活動を行っている。

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