ままならない人間同士が生み出す「意外」なドラマ
読書家の少女・松屋が、街中の文字を撮影し文章をつくる男「仮釈放」に興味を持つことからはじまる短編「友達になってくれませんか」(『夢中さ、きみに。』収録)。歌が上手くなりたいヤクザの男が、合唱部の中学生に歌を教わる『カラオケ行こ!』。
どちらにおいても、キャラクターたちが交流を深めていく過程で、コミュニケーションの起点に捻りを加えた「意外」なエピソードが付加されている。 これらの描写は、おそらく私たちが普段生活しながら行っているような、より現実に根ざした、人間関係の構築に似ている。
個人がそれぞれに構築していく関係は、出来上がった物語のように予定調和など起こらない予想外の連続で、時にはまどろっこしい過程を踏むこともある。 このままならない関係の構築方法や、些細な会話の応酬、何かを決定的に変えようとするわけでもない自然体な姿などに含まれたリアリティが、和山作品における人間関係の描写には垣間見える。
だからこそ、読者はより親近感をもって、身構えることなく物語に入り込めるのではないだろうか。
『女の園の星』、また『カラオケ行こ!』の続編である『ファミレス行こ。』を絶賛連載中の和山やまさん。
「意外」な物語たちは、この先どんな面白さを見せ、読者を愛嬌ある困惑へと導いてくれるのだろうか。新進気鋭な作家の今後に期待したい。
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安藤エヌ
ライター
20代のフリーライター。日本大学芸術学部文芸学科卒。音楽、マンガ、映画など主にエンタメ分野で執筆活動中。直近では「ROCK'IN ON JAPAN 2020年7月号」にてシンガーソングライター・あいみょんのコラムを寄稿。過去に同メディアのWebでもコラムを執筆しているほか、様々なエンタメメディアに記事を寄稿している。「今」触れられるカルチャーについて、新たな価値観と現代に生きる視点で文章を書くことを得意とする。
Twitter:@7th_finger
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