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POPなポイントを3行で

  • ポップカルチャーの中心的役割を持ったYouTube
  • 2018年の代表的な動画や事象を解説
  • 2019年のムードを予見するのは、まさかのあの人?

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YouTubeにみる2018年コンテンツの趨勢 動画を見ながら振り返る

仕事中にYouTubeをみてるところを盗撮された筆者(@tyonemura

YouTubeが世界のポップカルチャーの中心的な場所になってから結構な時間が経ったと思います。

そんな状況は、確実に日本でも強くなっています。かつてメディアが、雑誌が、都市が、ストリートが、あるいは業界が担っていた「文化」や「遊び」「コンテンツ」の中心が次々にYouTubeへと移行していっています。

音楽/映像/ゲームといった作品媒体に与えた経済的なインパクト、YouTuber/ライバー(配信者)/バーチャルYouTuberといった新たな職業の誕生など。これまで日本でもいくつかのCGMが誕生し、独自の文化を形づくっていきましたが、YouTubeというプラットフォームはそれらをすべて凌駕してしまうような、巨大なサービスへと成長してきました。

この記事ではそんなYouTube上で起きた1年の変化や事件を、KAI-YOUの視点から振り返ってみたいと思います。

目次

・VTuberの勃興、新陳代謝と展開
・オンライン人狼ゲーム『人狼殺』とゲーム実況
・炎上とYouTuber
・コレコレとうんこちゃん──ライブ配信勢の台頭と存在感
・「歌ってみた」と復活のボーカロイド、そして米津玄師
・「フェイク陽キャ」、そしてレペゼン地球と「ほんだのばいく」

VTuberの勃興、新陳代謝と展開

3Dやlive2Dなど、キャラクターを作成して動かす技術は年々進歩しています。そんな中でYouTubeというプラットフォームと接続する形で生まれたのがバーチャルYouTuber(VTuber)でした。

世界初のVTuber・キズナアイさんを筆頭に、輝夜月さん、電脳少女シロさん、ミライアカリさんなど、2018年以降一気にチャンネル登録者数を集め、また多くのVTuberが誕生していきました(その数5000人以上といわれています)。

【これでモテる】巷で流行りのアレ。(輝夜月さん)

しかし既存のYouTuberに比べ、機材や3Dを動かす技術など、動画の制作コストや求められるクオリティが高いこともあって、いわゆるYouTuberが人気になるための必要条件「毎日投稿」を行えるVTuberは少なく、特に企業運営でない個人VTuberにとっては至難となり、再生数や人気が伸び悩むVTuberも少なくありません。

そんな中、ゲーム部プロジェクトHimeHina Channelおめがシスターズなど、複数人の演者で1つのチャンネルを回すというVTuberユニットの勢いが増してきています。また、VTuberたちをサポートする機関としてupd8にじさんじENTUMといった事務所/チームのような組織体も次々に登場していきました。

クリスマスに彼氏とのお泊りデートに向かうVtuber(ゲーム部プロジェクト)

ソロからユニットへ、個人運営から事務所運営へ──これらの事象はすべてリアルのYouTuberが辿ってきた道であり、YouTuberたちが長年の研鑽の中でつくりあげてきた仕組みです。VTuberシーンはそれを1年の間にすべて通過してしまいました。

しかし同時に、アズマリムさんによる運営への告発めいた投稿に代表されるように、企業運営/組織運営が当たり前であるVTuberならではの問題も発生しています。ひっそりと更新を止めたり、引退を宣言するVTuberもすでに存在しています。

11月8日のツイート内容について(アズマリムさん)

2019年にはVtuberを幾人もキャスト/登場人物にした庵野秀明さん監修のTVアニメ『バーチャルさんはみている』の放送も決定。またキズナアイさんや輝夜月さん、YuNiさんの楽曲デビューなども行われ、今後は、YouTubeというプラットフォームを越え、キャラクター性を多方面に活かした展開が期待されています。

オンライン人狼ゲーム『人狼殺』とゲーム実況

HIKAKINさんやはじめしゃちょーさんなど、多くの大物YouTuberたちもサブチャンネルで「ゲーム実況」を行なっている通り、YouTubeにおけるゲーム実況動画というジャンルの大きさは特筆すべきものがあります。

2018年において『荒野行動』『PUBG』『Fortnite』といったe-Sportsの文脈でも語られることの多いバトルロイヤルゲームの躍進はもちろんですが、まったく別の分野で新たな盛り上がりを見せたのが『人狼殺』でした。

ツイッターで100万再生を超えたリンゴ星人(BOXINGさん)

『人狼殺』はいわゆる「人狼ゲーム」をオンライン上のボイスチャットで遊ぶことできるようになるゲームアプリ。

「声」に焦点が当てられた結果、動画に集中せずともラジオのように聞くことができるほか、有名なアニメキャラクターや芸人などの声真似をしてプレイする人や、ネタに走ったプレイングをする人なども登場し、独自の文化を形成し、有名なプレイヤーを輩出していくことになります。

歴代最強のキャラが濃ゆすぎる部屋での神々達の戦い(ましゃかりさん)

しかし、多くの配信者がいる一方で、『人狼殺』を遊ぶ一般プレイヤーは減少しつつあります。プレイするよりも観戦したいユーザーの方が多くなり、逆転状態となっている現在の状況を嘆く配信者の声も聞こえ、ゲームアプリの人気の移り変わりの速さをあらわす例といえます。

『人狼殺』については過去にもKAI-YOUで取り上げているため、詳しくは下記の考察を読んでもらえればと思います。 その他ゲーム実況でいうと、『マリオカート8』などはVTuberシーンにおいて「キズナアイ杯」が開催されるなどして根強い人気を見せるほか、ニコニコ動画の色を濃く受け継ぐ『Minecraft』実況もいまだ定番となっています。

キズナアイ杯予選でもぶちとばすケリン(ケリンさん)

また、あくまで著作権的にグレーな文化であったゲーム実況ですが、業界最大手である任天堂が実質的に容認する声明を出したことによって2019年以降はさらなる発展が期待されます。

炎上とYouTuber

2017年9月に大炎上となった「VALU騒動」以降、常にYouTuberは炎上のリスクにさらされ続け、2018年も幾度となく炎上してきました。もはや炎上はYouTuberというコンテンツにおける風物詩、期待されるイベントと化しています。

例えば「VALU騒動」の結果、解体となってしまった「NextStage」に所属していたラファエルさんが、再び炎上。「利回り80%の水耕栽培への投資」を呼びかける動画に対して、その信憑性を巡って批判が集中しました(元動画は削除済み)。

ラファエルに詐欺をやめさせたい(シバターさん)

また、国内における「YouTuber第一世代」を代表するMEGWIN TVから、人気メンバー2名が脱退し、チャンネルの主導者であるMEGWINさんに対してその労働環境を告発する動画を公開。

MEGWIN TVを辞めました。真実を話します(ファルコンさん、メテオさん)

いまなおMEGIWN TVについては炎上の最中となっており、2本の謝罪動画を公開以降、チャンネルの更新はありません。黎明期から活躍し、その文化を支えてきたYouTuberの最大の危機となっています。

感謝と謝罪(MEGWINさん)

過激な動画が何百万も再生されたり、いまだにスタンダードなビジネスモデル、働き方や見せ方の定まっていないYouTuberにとって、炎上は隣り合わせです。

さらにシバターさんやみずにゃんさんといった他のYouTuberの炎上を楽しむ、あるいは炎上を消費する「物申す系」YouTuberの人気も右肩上がりとなっており、YouTuberにとって炎上がいかに「コンテンツ」たり得るのかの証明にもなっているともいえます。

コレコレとうんこちゃん──ライブ配信勢の台頭と存在感

LINE LIVEやInstagram LIVEなど、誰もが手軽にスマートフォン一つで動画のライブ配信が行えるようになった中で、やはりYouTubeにおけるライブ配信の勢いも2018年に大きく増したように思います。

2017年1月よりライブ配信者への投げ銭機能「スーパーチャット(スパチャ)」が解禁され、同年2月よりスマートフォンによるライブ配信の視聴が可能になり、多くのYouTuberや他の配信プラットフォームで活躍したライバー(実況者)がYouTubeを主戦場へと切り替えていくことになりました。

中でも、YouTubeファンのユーザーから直接タレコミ(YouTuberの炎上や噂)を募集して批評やユーザーと議論を行うコレコレさん、ニコニコ生放送時代からゲーム実況のカリスマとして人気を集める加藤純一さん(うんこちゃん)を筆頭に、生配信をメインで活動するYouTuberの存在感が急上昇しています。

ヒカキン・はじめしゃちょー・アブ、不正疑惑に引退でトリプル炎上www...(コレコレさん)

Undertale全員生還ルートを、やるぞ(加藤純一さん)

彼らは、いわゆるYouTuberの間でメインとなっている3〜10分の短尺の動画はあえて出さずに、数時間に及ぶライブ配信を定期的に行い、動画はその生放送のアーカイブを残すことをメインとしています。

そのためチャンネル登録者こそ100万人未満という、トップYouTuberに比べると目立たない数字ですが、ライブ配信の同時視聴者数は3万人を数え、高い熱量をもったコミュニティを形成しています。

YouTubeにおける「ライブ配信」機能は比較的新しいものではありますが、これまで他のライブ配信プラットフォームで培われきたライバーたちの話術や、視聴者との密度の高いコミュニケーションによる一体感はYouTubeでも健在。

また、雑談配信などは映像を楽しむというよりも、ラジオ感覚で「ながら作業」をしつつ聴けるものが多く、スマートフォンやタブレットでのバックグラウンド再生が可能になった「YouTube Premium」のリリースもあって、2019年以降さらに加速していくことが予想されます。無編集で動画を残せる点も投稿者にとってありがたい。

「歌ってみた」と復活のボーカロイド、そして米津玄師

YouTubeが毎年世界各国で開催しているイベント「YouTube FanFest」の日本開催にて、ボーカロイドプロデューサーのみきとPが招聘され、話題となりました。

そんなみきとPが作曲し、YouTubeで大きなバズを生むことになった楽曲が「ロキ」です。

ロキ/鏡音リン・みきとP(みきとPさん)

「ロキ」が話題になった背景には様々な要因が考えられますが、YouTubeにおける「歌い手」の高い人気、そしてVTuberたちの中から新たな「歌い手」たちが幾人も登場したことが挙げられます。

劣等上等(Cover)【本気モード入った】(田中ヒメさん、鈴木ヒナさん)

「歌い手」の中でも圧倒的な人気を誇るのが、フォロワー数140万人を数えるまふまふさん。

彼が歌ったカンザキイオリさん作曲の「命に嫌われている」は、これまで10年に及ぶ歴史を持つ「歌ってみた」カバー曲の中で過去最高の再生数を叩き出しています。

命に嫌われている。/まふまふ(まふまふさん)

NHK紅白に出場が決定することになった米津玄師さんの存在も大きく、「Lemon」のMVは2018年の日本のYouTubeでもっとも再生された動画となりました。

「Lemon」(米津玄師さん)

彼のようにボーカロイドでの楽曲制作や投稿を出自に持ちながら、自ら歌唱や演奏も行い、1人のアーティストとしてメジャーシーンに打って出るクリエイターが人気を博しています。

その中でもバルーンの名義で活動し、名曲「シャルル」を生み出した須田景凪さんもこのムーヴメントに大きく貢献しているアーティストの1人です。「シャルル」の発表は2016年ですが、2018年になっても再生され続け、そして歌われ続けています。

シャルル/バルーン self cover(須田景凪さん)

シャルル/もこう(もこうさん)

さらに若年層の多いTikTokでもボーカロイド楽曲が使用されるケースが増え、それが逆輸入的にYouTubeで再生されるまでに至っている点も重要です。

これまでもニコニコ動画から飛び出し、海外リスナーなどの新規層を巻き込んで静かに盛り上がっていたボーカロイド文化ですが、いま再び大きなムーブメントになりつつあります。

「フェイク陽キャ」、そしてレペゼン地球と「ほんだのばいく」

様々なシーンやカルチャーが渦巻くYouTubeですが、その全貌や方向性を今後決定づけると筆者が考えているのが、レペゼン地球本田翼さんの存在です。

これまでYouTubeはあくまで「フェイク陽キャ」なキャラクターたちが人気を獲得していく場所でした。これはべつにディスやネガティブなワードではなく、努力によって動画内のキャラクターをがんばって「陽キャ」に寄せた人たちを指す、筆者の造語です。

HIKAKINさん、東海オンエアフィッシャーズはじめしゃちょーさんヒカルさん、マホトさん──彼らトップYouTuberたちの動画をみればわかると思いますが、すごく明るく元気に振舞います。しかし、いくら元気に振舞っていても拭い去れない「隠キャ」感があります。

【もはや鏡】アルミホイル2日間ハンマーで叩いたら超ピカピカの鉄球出来た(HIKAKINさん)

【一騎当千】武器の中で結局「槍」が一番強い説!(東海オンエア)

いわゆるスクールカーストでは中堅、あるいは下位だった人物たちが行き着く場所としてこれまでYouTubeがありました。ただ、2018年もっとも登録者数を伸ばし、話題となったYouTuberを考えたとき、それは逆転します。それがレペゼン地球と本田翼さんです。

【親・恋人とは行けないライブ】〜in幕張メッセ〜(レペゼン地球)

「全然どんなゲームかわからない篇」Dead by Daylight(本田翼さん)

レペゼン地球は、類稀なる「陽」のオーラをまとった5人組パフォーマンス集団です。EDM風のトラックにラップを乗せた楽曲を何本もYouTubeにアップしているほか、リーダーであるDJ社長さんの40分にも及ぶ自分語り動画が話題を呼び、一気に知名度を伸ばしました。

【好きなことで、生きていく】(レペゼン地球)

目覚ましい活躍を見せる中で、一度はチャンネルがBANされてしまいますが、また0から153万人まで短期間で登録者数を獲得しています。

本田翼さんは、『SEVENTEEN』の専属モデルというスクールカースト最高クラスの輝かしいキャリアを持ち、現在は女優として活躍するバチバチの有名芸能人です。

Dead by Daylight #0 編集版!(本田翼さん)

彼女の配信は同時視聴者数14万人という驚異的な数字を獲得し、一躍ゲーム実況界でも話題となりますが、YouTubeのゲーム実況において長年トップクラスの人気を誇るユニット・兄者弟者とのコラボでは互いのファンが反目し、コメント欄は大荒れとなってしまいました(アーカイブは残っていません)。

インターネットに常につながり、そしてYouTubeをみることが誰にとっても当たり前のことになってきました。そして、動画やコンテンツをアップロードすることも今後さらに敷居が下がり、一般化していくことは明白です。

そんなときに、これまでのYouTubeで人気を博していた「フェイク陽キャ」たちが、こらから押し寄せてくる「真の陽キャ」たちとどのように拮抗していくのか、あるいは手を取り合っていくのか。

2019年以降のYouTubeがどのようなプラットフォームへと進化していくのか、どんなコンテンツが生まれていくのか。ポップカルチャーの未来を考える上でも期待しかないです。

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