近年、SF映画においては『ブレードランナー』『攻殻機動隊』『エイリアン』など、名作の映像化やリメイク/リブートが続く。
その中でも、ひときわエッヂの立った作品の映像化として注目を集めるのが、弐瓶勉さん原作の長編コミック『BLAME!』だ。 『BLAME!』は1997年から2003年まで、足掛け6年にわたって『月刊アフタヌーン』で連載された作品で、弐瓶さんにとっては初の長期連載にあたる。連載開始は20年前ながら、圧倒的な情報量と緻密なアートワークから国内外に広くファンを獲得。現在でも日本のSFコミックの代表格として大きな知名度を誇る。
この作品を、同じく弐瓶さんの作品である『シドニアの騎士』をアニメ化したポリゴン・ピクチュアズがフル3DCGにて映像化。5月20日(土)から全国の劇場にて公開となる。
本作の公開にあたり、原作者である弐瓶勉さんに直撃。アニメ化の作業の中で自身が果たした総監修という役割について、また『BLAME!』という作品そのものについて、存分に語っていただいた。
文:しげる 編集:ふじきりょうすけ
弐瓶 作品づくりへの参加ということで言えば……企画が始まる前の飲んでる席からだと思うんですけども(笑)。そこから脚本会議が終わるまでの4、5ヶ月くらいまでの間は毎週会議に出てましたね。劇場アニメ『BLAME!(ブラム)』本予告
弐瓶 最初は「どうやって映画にしようか」という点に関してスタッフから色々と話も出たんです。『BLAME!』の原作は10巻もあるんで、全部をアニメにするわけにはいかない──だから漫画全部を1本の映画に圧縮するのか、もしくは、どこかのシーンを切り取るのか。
僕はわかりやすい話を1本つくって、そこに『BLAME!』のキャラクターとか世界観を配置していった方がいいんじゃないかなと提案をしました。
──10巻分の内容を圧縮するのではなく、どこかひとつのエピソードを抜き出す形にしよう、ということですか。
弐瓶 単に抜き出すというだけではなくて、『BLAME!』らしいと納得できるエピソードをつくろうという感じですね。原作も1本の長いストーリーがあるという感じではないですから、あまり違和感はないと思うんです。
──今回製作されたアニメ版では電基漁師(※)をフィーチャーしたストーリーになっているわけですが、その理由はどのようなものでしょうか?
弐瓶 主人公の霧亥は、無口で感情移入しにくいキャラクターなんで、彼をそのまま主人公にしてしまうと初めて見た人が話に入ってもらえない。だから、感情移入しやすいキャラを配置しなくちゃいけないなという話になったんです。
※電基漁師……『BLAME!』原作の3巻から登場。駆除系を破壊できる銃などの装備を持つ霧亥らよりも小柄な人類で、祖先は「東亜重工」の巨大構造物内部に住んでいた。 弐瓶 そこで、改めて探したんですけれど『BLAME!』の中で人間っぽくて感情移入しやすいキャラクターはづるや電基漁師くらいしかいなかったんですよ。じゃあそこを拾おうと。
実は今回のストーリーの骨格はコミックスではなく、『シドニアの騎士』のBlu-ray付属していた冊子に僕が新しく描いた短編なんです。それを広げて105分の映像にしました。
Blu-rayの冊子では別の人間の集団が出てくるんですけど、そこを電基漁師に置き換えて、主人公をづるにして……、という改変を加えたのが今回の映画ですね。この短編は特典としてしか世に出ていないので、知らない人も多いかと思いますけれど。
──より多くの観客が感情移入できるか、という課題があったわけですね。ファン心理で言えば、ドモチェフスキー戦も動いてるところが見たかったですが……。 弐瓶 出たな〜、ドモチェフスキー(笑)。監督をはじめスタッフにも『BLAME!』のファンがいたんで、原作に出てくる他の敵キャラクターも出したいよねって話にはなったんですけども。
それをやるといきなりストーリーもキャラもわかりにくくなっちゃう。まず霧亥がよくわかんない存在ですから(笑)。その上、敵もよくわかんない連中っていうことになると、随分尖ったアニメになっちゃいますよね。 弐瓶 そんな尖ったアニメをつくってしまうとどういう評価をされるか、20年漫画家をやってると、さすがに結果が見えてたんですよ(笑)。そして、それだけは回避しなくてはならない。
そんな話を会議の時にしたら、みんな賛同してくれましたね。
その中でも、ひときわエッヂの立った作品の映像化として注目を集めるのが、弐瓶勉さん原作の長編コミック『BLAME!』だ。 『BLAME!』は1997年から2003年まで、足掛け6年にわたって『月刊アフタヌーン』で連載された作品で、弐瓶さんにとっては初の長期連載にあたる。連載開始は20年前ながら、圧倒的な情報量と緻密なアートワークから国内外に広くファンを獲得。現在でも日本のSFコミックの代表格として大きな知名度を誇る。
この作品を、同じく弐瓶さんの作品である『シドニアの騎士』をアニメ化したポリゴン・ピクチュアズがフル3DCGにて映像化。5月20日(土)から全国の劇場にて公開となる。
本作の公開にあたり、原作者である弐瓶勉さんに直撃。アニメ化の作業の中で自身が果たした総監修という役割について、また『BLAME!』という作品そのものについて、存分に語っていただいた。
文:しげる 編集:ふじきりょうすけ
"感情移入"をキーにした、電基漁師のフィーチャー
──弐瓶さんは今回の『BLAME!』映像化では総監修という立場で参加されていらっしゃいますが、具体的な関わり方はどのようなものだったのでしょうか?弐瓶 作品づくりへの参加ということで言えば……企画が始まる前の飲んでる席からだと思うんですけども(笑)。そこから脚本会議が終わるまでの4、5ヶ月くらいまでの間は毎週会議に出てましたね。
僕はわかりやすい話を1本つくって、そこに『BLAME!』のキャラクターとか世界観を配置していった方がいいんじゃないかなと提案をしました。
──10巻分の内容を圧縮するのではなく、どこかひとつのエピソードを抜き出す形にしよう、ということですか。
弐瓶 単に抜き出すというだけではなくて、『BLAME!』らしいと納得できるエピソードをつくろうという感じですね。原作も1本の長いストーリーがあるという感じではないですから、あまり違和感はないと思うんです。
──今回製作されたアニメ版では電基漁師(※)をフィーチャーしたストーリーになっているわけですが、その理由はどのようなものでしょうか?
弐瓶 主人公の霧亥は、無口で感情移入しにくいキャラクターなんで、彼をそのまま主人公にしてしまうと初めて見た人が話に入ってもらえない。だから、感情移入しやすいキャラを配置しなくちゃいけないなという話になったんです。
※電基漁師……『BLAME!』原作の3巻から登場。駆除系を破壊できる銃などの装備を持つ霧亥らよりも小柄な人類で、祖先は「東亜重工」の巨大構造物内部に住んでいた。 弐瓶 そこで、改めて探したんですけれど『BLAME!』の中で人間っぽくて感情移入しやすいキャラクターはづるや電基漁師くらいしかいなかったんですよ。じゃあそこを拾おうと。
実は今回のストーリーの骨格はコミックスではなく、『シドニアの騎士』のBlu-ray付属していた冊子に僕が新しく描いた短編なんです。それを広げて105分の映像にしました。
Blu-rayの冊子では別の人間の集団が出てくるんですけど、そこを電基漁師に置き換えて、主人公をづるにして……、という改変を加えたのが今回の映画ですね。この短編は特典としてしか世に出ていないので、知らない人も多いかと思いますけれど。
──より多くの観客が感情移入できるか、という課題があったわけですね。ファン心理で言えば、ドモチェフスキー戦も動いてるところが見たかったですが……。 弐瓶 出たな〜、ドモチェフスキー(笑)。監督をはじめスタッフにも『BLAME!』のファンがいたんで、原作に出てくる他の敵キャラクターも出したいよねって話にはなったんですけども。
それをやるといきなりストーリーもキャラもわかりにくくなっちゃう。まず霧亥がよくわかんない存在ですから(笑)。その上、敵もよくわかんない連中っていうことになると、随分尖ったアニメになっちゃいますよね。 弐瓶 そんな尖ったアニメをつくってしまうとどういう評価をされるか、20年漫画家をやってると、さすがに結果が見えてたんですよ(笑)。そして、それだけは回避しなくてはならない。
そんな話を会議の時にしたら、みんな賛同してくれましたね。
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作品情報
BLAME!
- 原作
- 弐瓶勉『BLAME!』(講談社「アフタヌーン」所載)
- 総監修
- 弐瓶勉
- 監督
- 瀬下寛之
- アニメーション制作
- ポリゴン・ピクチュアズ
- 製作
- 東亜重工動画制作局
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