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アニメ化『BLAME!』弐瓶勉インタビュー 「CG演算負荷でサーバーが止まった」

アニメ化にあたってのデザイン改変と3DCGの相性

──本日は話の種になればと、グレゴリイ・ベンフォード著作のSF小説『大いなる天上の河』をお持ちしたのですが……。

弐瓶 おお〜! これはバイブルですね。電基漁師の装備のデザインは、この本の表紙を描いた加藤(直之)さんの絵からインスパイアされてるんです!

『大いなる天上の河』下巻/画像はAmazonより

弐瓶 この小説は中身も最高なんですけど、カバーのイラストも混みで好きだったんですよ。主人公の名前が「キリーン」っていうんですけど、これは霧亥っていうネーミングの直接の元ネタです。

ヒロインの名前がシボっていって、サナカンって名前のおじさんも出てくるんですよね。このへんは全部『BLAME!』に流用してます。

──『大いなる天上の河』以外だと、椎名誠さんの『武装島田倉庫』にも名前が共通しているキャラクターがいますよね。

弐瓶 づると捨造はそっちに出てきます。どっちも、ちょうど『BLAME!』を描いてたころにすごくハマった小説ですね。今も好きなんですけど。

──電基漁師の装備のデザインに関して言えば、今回のアニメ版では電基漁師の見た目がだいぶ原作と異なります。これは一体どういう意図でのアレンジなのでしょうか?

弐瓶 僕がアニメ用に描いたデザインをポリゴン・ピクチュアズのデザイナーが修正して、何回か段階を経て最終的な形になっているんです。それには3DCGとして動かしやすいとか、アニメ的な都合も多少影響してますね。

電基漁師たち

弐瓶 最初に描いたのは『大いなる天上の河』の加藤さんの絵みたいな丸っこいデザインだったんですけど、CGにする過程でかなり直線的なラインを取り入れています。

それはもうしょうがないんですよね。曲面にするか一個の直線のプレートにするかで、劇中で動かすCGモデルの情報量が全然違ってきちゃうんで。

──3DCGのアニメにする上で必要なアレンジだったわけですね。

弐瓶 電基漁師に限らず、僕が最初に何も考えずに描いたデザインではパーツの点数などの面で色々不都合があったんですよ。特に霧亥のモデルは至る所に付いているカラビナとかの付属品が多すぎて、動かそうとしたら演算の負荷がすごすぎてサーバーが止まっちゃったらしいです(笑)

霧亥

弐瓶 体にぶら下がってる部品がバラバラに動くっていうのは手描きだと難しいけど、「CGなら大丈夫だろ」って調子に乗って描きすぎちゃったんですよね……。現場で適当に減らしていただいて良かったんですけど、ポリゴン・ピクチュアズさんがそのまま再現してくれたみたいで。

それで「弐瓶さんすいません、パーツ減らしていいですか……サーバーが動かないです……」って、プロデューサーから連絡が来て(笑)。その節はご迷惑おかけしました。

──ポリゴン・ピクチュアズさんと組んで3DCGでアニメを製作するのは『シドニア』に続いて2作目ということになりますが、仕事をする上でのやりやすさは感じますか?

弐瓶 やりやすいですね! 実はアニメの製作にがっつり加わったのは『シドニア』の5話くらいからなんですよ。

最初はメールで送られてきた脚本を見せてもらって修正して……みたいなことをやってたんですけど、メールだと細かいところが伝わらないし、なんか上手くいかなくて。

会議やってるみたいだし、そこに僕も行っちゃダメなの?」って思ったんですけど、担当編集者の度重なる妨害のおかげで全然行かせてもらえなかったんです。まあそりゃ本業があるんで(笑)。

──「漫画を描いてくれ!」ということですね。

弐瓶 そうです。「頼むからやめてくれ!」と言われまして。でも脚本の修正に毎回けっこう手間取るし、しかも脚本会議が遅れているということで、「もう行っちゃえ!」と。

そしたらそこで仲良くなってしまったというか、意気投合してしまったんですよ。もっと早く行っとけばよかった、と思いましたね(笑)。

ポリゴン・ピクチュアズのセルルックCGに関しても、『BLAME!』って人間もそんなに出てこないし、CGではまだ再現が難しい「服のシワ」が出るシーンも少ない。人工物だけでできた世界が舞台で、敵もロボットとかだから、原作との相性はいいかと思ったんです。

巨大な人工物も3Dならではの迫力で表現

──そういう技術的な円熟という面で、2017年という原作開始から20年経ったタイミングが選ばれたのでしょうか。

弐瓶 たまたま2017年だったってだけではありますけど、結果としてはそういうことになりましたね。

もちろん『シドニア』でのCGを見て、これはイケるんじゃないかなっていう手応えはありましたけど。映像面ではシドニアの時よりかなり進歩してます。技術的な部分での変化は素人なんでよくわからないんですけど、それでもパッと見て映像は綺麗になっているなと。

つくっている現場の人たちの技能も上がっていってるんだと思います。『シドニア』で学んだことは今回けっこうフィードバックできてるかなと。また、『BLAME!』は脚本も『シドニア』の時と同じ村井(さだゆき)さんですし、やりやすかったですね。

──映像化にあたっての改変ということでもうひとつお聞きしたいんですが、『BLAME!』のファンがいう「シャキサク」ってあるじゃないですか。あれのアレンジが今回のアニメ版では原作からものすごく変わっていて、本当に驚きました。

『BLAME!』フリークたちの間では定番の人気シーン「シャキサク」/『BLAME!』新装版(1)110,111p

弐瓶 プロデューサーとか監督が原作の霧亥があれを食べるシーンが好きで……。「あれを使ってなにかやりましょう」って言ってシーンを入れたんですけど、そもそも3Dだからモデルひとつをつくるのも大変じゃないですか。

しかもたった一場面にしか出ないもののために! ストーリー上でそんなに大事な部分でもないはずなんだけど、ずいぶんあの食事シーンは力が入ってましたよね(笑)。

尺の割き方といい、あれは本当につくり手の思いが入ってますよね。

──以前弐瓶さんは「シャキサクはグリスだ」っておっしゃってましたよね? あの「シャキサク」に関するアレンジ自体のアイデアはどなたの発案なんでしょうか?

弐瓶 多分ぼくだと思うのですが……。原作に登場したのはグリスなので、今回のアニメに出てきたのは原作で霧亥が食べてたのとは別のものということで……。

あの世界には似たようなものが色々とあるんでしょうね。だから、原作の「シャキサク」とは別の何かです!

──同じものだって言われたらどうしようかと思っていましたが、今お話を聞けてスッキリしました。ありがとうございます!

読者の裏をかきたかった

──SF作品ってビジュアルを先行させてストーリーを組み立てるか、論理の積み重ねでお話をつくっていくかという、大きくわけてふたつの方法があると思うんですけども、ご自身ではどちらの方が強いと思いますか?

弐瓶 どっちかってわけるのは難しいですね……。話を思いついて描き始めることもあるし、落書きをいっぱい描いてたらキャラクターやロケーションができあがることもあるし。突然アイディアが出てくるときもある。

……色々なんですけど、どっちかというとビジュアル寄りですね。

──作品を拝見させていただいていて、そのビジュアル的な面においても弐瓶さんがご興味を持っていらっしゃる対象がちょっとずつ移り変わっているなあと思うことがあります。

弐瓶 それは人間ですからねえ(笑)。連載当初から比べるとだいぶ変わりましたね、『BLAME!』の頃はとにかく全力で描いてたっていうことぐらいしか覚えてないですけども……。

当時は20代でしたから、ひねくれてたんですよね。普通のものを描きたくないっていう、その一点でああいった漫画になった。とにかく読者の裏をかいてやろうと思って、女の子もわざとかわいくない絵で描いたり。とにかく無我夢中でした。

原作のづる、映画版とはかなり印象が異なる/『BLAME!』新装版(2)169p

弐瓶 劇中の用語とかもほとんど説明がないですよね。20代で尖ってたから、極力説明を排除した漫画にしようとしたらああなっちゃった。

漫画だと、会話のたびにいちいち相手の名前入れたりとか、「日常会話でそんなセリフねえだろ!」っていうのもあるじゃないですか。それを極力排除したかったんです。 ──今回のアニメ版『BLAME!』はNetflixを通じて海外配信もされる予定です。そのあたりに関してはいかがでしょうか?

弐瓶 もともと日本の漫画が海外で読まれたりして、そういう文化を輸出するような仕事も込みで漫画を描くことが楽しかったんですよ。そういう意味では、自分の漫画を元にした国産のアニメが海外にそのまま発信されるっていうのはすごく嬉しいし、光栄ですね。

できるだけ多く海外の人にも見てほしいです。
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作品情報

BLAME!

原作
弐瓶勉『BLAME!』(講談社「アフタヌーン」所載)
総監修
弐瓶勉
監督
瀬下寛之
アニメーション制作
ポリゴン・ピクチュアズ
製作
東亜重工動画制作局

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