現代美術家 梅沢和木、個展「刻まれたキメラ、隙間から見えるコア」を開催

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KAI-YOU編集部_アート部門

アーティストステートメント

梅沢和木さん

「刻まれたキメラ、隙間から見えるコア」

「インターネットは情報で溢れている」、なんて聞き飽きたもので、あらゆる画像や報道は日々のタイムラインの中で混濁しきっているが、私は画像を集めるのがずっと好きでいる。

2025年の現在は、多くの人がそこに希望や救いを見出すのは難しくなっているかもしれない。情報の取捨選択の難易度は跳ね上がり続け、何を選び何を発信するのかに対して考え過ぎてしまった人が慎重になり、その結果発信自体が少なくなることは今のネットの風景の殺風景さと極端な意見の氾濫に繋がっていると感じている。

インターネットにかつて希望を見出していた自分は今でも日々集めた画像を再構築し作品の生成的制作をしている。断片的に切り取り配置し、キメラ的な造形を好んで作り出していた自分がいる一方で、切り取ったり刻んだりする行為が行き過ぎた結果、画像がどんどん細かくなっていき、ほとんど抽象画のようになっていくことが最近よく起こる。元々、銅版画家である父の影響もあり、ひたすらに細かい細密画をペンで描く行為も好きである。それは、絵を描く人間なら誰もが知る「過集中の快楽」であり、同時に、完成度だけを突き詰める退屈さへと転じる危うさを伴っている。私はアーティストとして生きていくことを選んでいるが、その危うさを意識して細密画をあまり描かなくなった。

今、インターネットの風景を細密画のように刻み直しながら、その表現が退屈に見えることを恐れている。かといって、今のネットの風景をキャラクターの断片で装飾し魅力的に見せようとして退屈になったら、それも意味がない。過剰に刻まれた画像は、相も変わらず溢れる情報の海に耽溺する自分自身でもある。今回は、果てしなくばらばらになっても引力を持ちうる画像を、表現として自立させてみたい。刻まれた画像の隙間のピクセル越しに集中する時、どうしても希望を感じてしまうのだから。

梅沢和木

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展覧会情報

「刻まれたキメラ、隙間から見えるコア」

会期
2025年10月25日(土)〜11月23日(日)
会場
Gallery & Restaurant 舞台裏(東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA B1F)
入場料
無料
主催
株式会社The Chain Museum(ArtSticker)

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