米山舞の表現は“変身”を続ける──個展「arc」で提示する新たなアニメーションの姿

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恩田雄多
米山舞の表現は“変身”を続ける──個展「arc」で提示する新たなアニメーションの姿
米山舞の表現は“変身”を続ける──個展「arc」で提示する新たなアニメーションの姿

米山舞さんの個展「arc」の展示作品

これは“新しいアニメーション”の形だ。

イラストレーター/アニメーション作家・米山舞さんの約2年ぶりとなる個展「arc」が、12月6日(土)〜28日(日)までGINZA SIX 6Fの銀座 蔦屋書店で開催中。そこには、アニメーターというバックボーンを感じさせる、時間的かつ空間的な動きの連続性が表現されていた。

そして、その連続性は最終的に、展示空間の中心に配置された高さ3mの巨大な彫刻へと到達する。

会場中央にそびえる高さ3mの彫刻作品「arc」

アニメーションが、静止画や静物を連続的に表示して鑑賞者に実在しない動きを感じさせること、だとしたら──会場で体験できるのは、連続性という繋がりを持った各作品が生み出す動き=アニメーションだった。

【写真】米山舞さんの個展「arc」展示作品の数々

米山舞が“アニメーション”で表現する、感情の浄化と成長

米山舞さんは、近年は『サイバーパンク:エッジランナーズ』や『LAZARUS ラザロ』のEDアニメーション監督や、様々な装画や広告などを手がけ、映像監督としてCMやMVでも活躍している。

その特徴は、美しく柔らかな曲線と流線、そしてそこから生まれる今にも動き出しそうな躍動感のある力強さ。イラストレーターとしての静止画作品でも、見る側の視線を誘導し、想像力を掻き立てるような“動き”の表現が魅力的だ。

入り口では大きなイラストが出迎える

視線の“先”を感じさせる作品も

2年ぶりの個展「arc」では、その強みを存分に発揮。四方を囲われた会場の特徴を活かして、外壁にアニメーションを構成する連続画像を提示し、壁の内側には一連の流れを三次元で表現した彫刻作品を配置。鑑賞する側が周囲を歩きながら連続性を体感できる空間が設計されている。

それらは展覧会のタイトル「arc(円弧・曲線・成長過程)」が示すように、作家自身の思考や感情を浄化しながら、成長の軌道を描く空間として、創作が続く“動き”を表現した。

周囲の外壁には連続性を表現した作品が配置

外壁ほぼ一辺分の細長いディスプレイに流れるアニメーションも

展示空間の内側中央に配置されたのは、前述した高さ3mの立体作品。人物が上昇軌道に乗って高みへと手を伸ばそうとする姿は、連続した静止画を経ての成長や変化や進化などを象徴している。

この新たなアニメーションとしての感覚は、実際に会場で歩きながら鑑賞することではじめて体感できるものになりそうだ。右から左へ──そういう意味では、平安時代から鎌倉時代にかけてつくられ、現代の漫画やアニメのルーツともいわれる絵巻物『鳥獣人物戯画』に通じる部分があるかもしれない。

立体作品の最上部

立体作品の2段目にあたる部分

立体作品の最下部

アナログとデジタル、平面と立体──“変身”する米山舞の創作

個展開催にあたって、自身の創作の原体験に言及した米山舞さんのコメントが印象的だった(外部リンク)。

「幼少の時に観たアニメーションの変身シーン、登場人物が危機から脱するシーンにも自分を投影していたこともあり、ある状態から違う状態へと変化する過程や、葛藤や苦難を経た先にある成長やカタルシスに惹かれ、それを自分が触れてきたアニメやコミック、イラストレーションの文化の中で培った技法で表現しています」

天井が高い空間には立体以外の大型作品も

この“変身シーン”や“危機から脱するシーン”。開催前日に行われた内覧会で本人を尋ねると、それらは幼少期に観た『美少女戦士セーラームーン』のことだという。その影響の一部は、展示作品においてもセーラー服を着たイラストとして表現されている。

前述した外壁で流れるアニメーションのワンシーン

出力時に発生する“版ズレ”を計画的に取り入れて変化を表現した作品

3つの時間帯を表現した作品の一部

会場には、手描き、デジタル、平面、半立体、立体──様々な方法で制作/出力された作品が並ぶ。自らの創作の原体験を起点に、アニメーターならではの視点を用いた作品を、二次元から三次元までを用いて表現する。

一見、ここ数年の創作活動の集大成のようだ。でも違う。

「今回の制作を通じて、アナログな手法や作品が持つ“強度”を改めて感じました。やればやるほど良くなる。ただ、全体的に作品ごとのオーラはもっと込められる気がしていて。たとえば、彫刻も何かと掛け合わせられるかもしれません。今後はデジタルといかに融合していくかなども考えていきたいです」


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イベント情報

YONEYAMA MAI EXHIBITION “arc”

会期
2025年12月6日(土)~12月28日(日)
時間
11:00~20:00 ※最終日のみ18:00閉場
会場
GINZA SIX 6F 銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM
⼊場
無料
共催
銀座 蔦屋書店 / 株式会社アプリボット
協力
SSS by Applibot

︎米山舞について
長野県出身。
イラストレーター・アニメーター・アーティスト。アニメーション会社に在籍したのち2018年からイラストレーターとして装画・広告などを手掛け、映像監督としてもCMやMVなどで印象的な作品を発表している。
また、精力的に個展を行う中で最新技術を探し出し、デジタルイラストレーションの可能性を常に模索し作品を発表している。
2019年には初個展となる「SHE」、2021年個展「EGO」を開催、2023年PARCO MUSEUM TOKYOにて開催された「EYE」はアクリルにUV印刷を施したレイヤー作品を多く発表し業界内外で注目を集めた。
イギリス・ロンドンのサーチギャラリーで開催された展覧会「START ART FAIR2021」に出展した作品『00:00:00:00』は16枚の作品から構成される集合作で、時間芸術と空間芸術の組み合わせによるアニメーター出身のイラストレーターとしての来歴を象徴するような作品になっている。


略歴
「キルラキル-KILL la KILL-」総作画監督補佐/作画監督/原画
「キズナイーバー」キャラクターデザイン/作画監督
「ダーリン・イン・ザ・フランキス」作画監督/エンディング演出・作画
「プロメア」ビジュアルデベロップメント
「サイバーパンクエッジランナーズ」EDアニメーション監督/絵コンテ/演出/原画/撮影
「Newパンティアンドストッキング」バンクシーン原画
「RADIO EVA」キービジュアル
「YOKU/Eve」アニメーションディレクター/絵コンテ/キャラクターデザイン/原画
カネボウ化粧品「KATE」キービジュアル/パッケージビジュアル
「LAZARUS」EDアニメーション監督/絵コンテ/演出/原画

出展歴
2019年 個展「SHE」pixiv WAEN GALLERY
2021年「START ART FAIR2021」出展
2021年 個展「EGO」anicoremix gallery
2023年 個展「EYE」PARCO MUSEUM TOKYO
2024年「ARTISTS' FAIR KYOTO2024」 選出
2024年「ART SESSION by 銀座 蔦屋書店」出展

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