VRChatの魅力は結局「出会いと会話」 2万時間プレイヤーが伝えたい4つの楽しみ方

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アシュトン
VRChatの魅力は結局「出会いと会話」 2万時間プレイヤーが伝えたい4つの楽しみ方
VRChatの魅力は結局「出会いと会話」 2万時間プレイヤーが伝えたい4つの楽しみ方

VRChatワールド「NAGiSA」で雑談する筆者

VRChatって、結局何が面白いの?──そんな疑問を投げかけられることがある。

VRChatのユーザー数は、ここ5年ほど基本的には右肩上がりだ。日本国内だけに目を向けても、2024年6月から8月頃にかけて配信者・スタンミさんのVRChatへの参加および精力的活動を見て起こった大規模な新規流入を背景に、最近では人気ワールドに限れば同時接続者数が数百人を記録することは珍しくなくなった。

VRChatの過去5年の同時接続者数推移/画像は「VRChat API Metrics」より

大規模な音楽フェス、現実では体験できない幻想的な景観の場所や、実際にある海外の観光地を再現した世界、他のコミュニティには見られない独特の文化......。外から見えるVRChatは、そんな派手な側面ばかり語られがちだ。

筆者も4年以上、VRゴーグルを被りVRChatという仮想空間で週100時間「生活」している。しかし、意外にも「そんなに長い時間、一体何をしているのか?」と問われると、それに正面から答えるのは難しい。

いつも派手なイベントに参加するわけでもなければ、常に何か目的をもって活動しているわけでもない。私の日常の大部分は、ただ、そこにいる誰かと「話す」ことで満たされているからだ。

物理的な距離も、時間の壁も軽々と超えて実現する「出会いと会話」。このシンプルだが強力な体験こそ、VRChatが私を惹きつけてやまない最大の理由だ。

本記事では、これまであまり語られてこなかったVRChatの「地味だけど本質的な魅力」を、4つの具体的なシチュエーションを通して解き明かしていく。

1.パブリックでの出会いと会話のきっかけ

VRChatをはじめる際に、事前にVRChatで遊んでいるリア友や、別ゲームのフレンドなどがいる人は非常にラッキーだ。一人でVRChatをはじめた際に、まず最初のハードルとなるのは「友達探し」だからだ。

「家の近くの飲み屋で友達を見つける」と言えば、そのハードルの高さがわかるかもしれない。しかし、それを乗り越えて、だんだんと自分を打ち明けられるコミュニティを築いていければ、VRChatはあなたの生活に欠かせない一部となる。

「日本語話者向け集会場「FUJIYAMA」JP」で手を振る筆者

まずは、「[JP]Tutorial world」や「日本語話者向け集会場『FUJIYAMA』JP」「Japan Talk Room 日本人向け談話室 [ JTR JP ]」など、人気の「集会場ワールド」に訪れてみよう。

特に、こうした人気の集会場には、初心者向けの案内をすることが好きなユーザーも多い。はじめたばかりだということをアピールすれば、彼らの会話に混ぜてもらったり、操作方法などをレクチャーしてもらったりできるかもしれない。

「[JP]Tutorial world」では基本的な操作方法などを有志のユーザーが教えてくれるケースも多い

最初の会話のきっかけはいろいろだ。難しく考える必要はない。まずは、ただ挨拶をしてみる、手を振ってみるだけでもいい。そのなかで、興味のある話をしているグループがあったら、思い切って会話に混ざってみたり、あるいはVRChatをはじめた目的やわからないことがあれば、それらを聞いてみたりするのも、会話のきっかけづくりになるだろう。

こうしたパブリックインスタンス(誰でも入れる部屋)には、同じ時期にはじめた初心者や、一期一会の出会いを求めて訪れているベテランまで、様々な人がいる。

筆者も、最初の1~2週間ほどは、知り合いもおらず、当時人気のパブリックインスタンスで、入れる会話の輪がないか探っていた。そこからできたコミュニティが最初の「居場所」となり、4年たった今でも付き合いがあるフレンドもいる。

2.「NAGiSA」で1対1の会話をしよう

また、この1年ほどでパブリックインスタンスにも様々な変化が起きた。そのうちの一つが、人気配信者のスタンミさんが、宇宙人・トコロバ(所場)さんと出会い、夏のVRChatブームを引き起こした「日本人向け 1対1お話しワールド NAGiSA [JP]」の登場だ。

VRChatで偶然出会った謎の生命体に、腹筋を壊されるスタンミじゃぱん

このワールドは、VTuber・エンジンかずみさんが開発/運営しており、「1対1のペアがランダムで生成されて、一定時間の会話をする」というコンセプトの新規性が話題を呼んだ。

これまで、パブリックインスタンスといえば、「すでに会話の輪ができていて入りにくい......」「表示人数が多くて、PCスペックが足りない......」などの悩みを抱く人も多かった。しかし、このシステムであれば、絶対に一定時間は1対1で話せるし、目の前の一人だけ表示されていればいいので、PCへの負担も軽い。

特に、スタンミさんのVRChat配信が集中的に行われていた2024年8月頃は、「NAGiSA」にはスタンミさんをきっかけにVRChatをはじめたという初心者ユーザーが溢れかえり、その人気はいまだに健在だ。

一期一会の会話を楽しんでいるユーザーも多く、時間設定も「5分」と短いため、ついつい盛り上がっても相手をフレンド登録し忘れてしまうことも多い。フレンドをつくりにいく場合は、会話の中でさりげなく「フレンドをつくりに来ました」と伝えてあげると良い。

まずは、こうしたパブリックインスタンスを通じて、フレンドづくりをしてみることをおすすめする。VRChatの「フレンド機能」はかなり強力で、一度フレンドになれば、相手が自分の入れるインスタンスにいる限り、その人の居場所が表示されるし、ログイン状況も伝わる。

フレンドが増えていくと、徐々に「○○さんがいるインスタンスに行ってみよう」「○○さんのフレンドの○○さんとも仲良くなろう」「○○さんがいつも行っているあのイベントに一緒に行ってみよう」など、行動の選択肢が広がっていく。

3.趣味・目的別コミュニティでより深く繋がろう

また、VRChatには特定の趣味や目的を持ったコミュニティが多くある。

たとえば、「哲学カフェ」をコンセプトにした交流ワールド「哲学カフェ 芳紅 (ぽこ) 堂」には、人文系を中心にアカデミックな関心がある人や読書好きの人が多く集まる。

ほかにも、オールジャンルのエンジニアが参加可能な「エンジニア集会」や、毎週木曜日にサイファーイベントを開いているヒップホップコミュニティ「Cipher Communication Circle」(通称・C3サイファー)など、探せばきっと興味のあるコミュニティが存在するはずだ。

「ぽこ堂」ではこのように哲学対話のためのお題が掲示されている

もし、自身の興味と合致するコミュニティやイベントがなければ、自分でそうしたコミュニティをつくってしまうというのも一つの手だ。

実は、VRChatで自分のコミュニティをはじめるのは、難しいことではない。まずはコンセプトを決めて、あとはそれを周りの人に話して、関心がある人を数人でも集められたらひとまずは目的達成だ。

より大きなものにしていきたいとなれば、周りの力を借りて「VRChatイベントカレンダー」(外部リンク)への掲載や、ポスターの作成や掲載依頼などの広報活動をはじめてみるといい。

自身のイベントやコミュニティを持ちはじめると「○○のイベントをやっている人」として周りにも認知されやすくなり、よりそのコンセプトに合った人が、自然と周りに集まってくるようにもなる。

こうした趣味系のコミュニティの多様さと見つけるハードルの低さは、インターネットならではの「関心で繋がる」という特徴と、VRならではの「身体性がある」という特徴が合わさって、VRChatを魅力的にする大きな要因だと思う。

4.フレンドと日々の雑談を楽しもう

VRChatを1年以上遊んでいると、だんだんと「特定のフレンドとチルワールドに集まって、ただ雑談をしたり、晩酌をしたりする」という遊び方に移行していくケースが多い。

筆者撮影。VRChatの何気ない日常

ここまでくると、もはや「VRChatである必要性」は薄れてくるという指摘も否めないのだが、「VRChatで集まるのが自然だから」集まっているというのがその答えになるだろう。

社会人になって、職場と自宅とを行き来する生活が続く中で、学生の頃のように遊んだり、ましてや新しく友達をつくったりなんて時間も体力もなくて難しい──そうした悩みを抱えている人はかなり多いという。

VRChatなら、自宅からはじめられるし、どの時間帯にも、特に深夜帯でもたくさんの人がいる。共通の趣味や関心を持っている人も見つけやすく、簡単に「フレンド登録」もできる。

VRChatは新しい「第3の居場所」になる

サードプレイス」という言葉を知っているだろうか?

「自身の家(ファーストプレイス)」「職場や学校など(セカンドプレイス)」に続く、「自宅や職場とは隔離された、心地のよい第3の居場所」を指す言葉で、アメリカの社会学者であるレイ・オルデンバーグさんが1989年の著書『The Great Good Place』(2013年邦訳『サードプレイス コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」』)にて提唱した。

インフォーマルな公共空間を「とびきり居心地のよい場所」として描き出し、そこで生まれる人間関係が様々な側面から都市の生活者にとって重要であることを示した。スターバックスがコンセプトに取り入れているという話を聞いたことがある人もいるかもしれない。

VRChatは、(バーチャルであるということを除けば)まさにこの「サードプレイス」の要件を満たす新たな居場所となる。さらに、掲示板やSNS、オンラインゲームといったこれまでのバーチャルコミュニティから進歩して、「VR体験」と「アバター」が加わることで、コミュニケーションに身体性が追加された。

私たちはここで「日常」を過ごしている。毎日が目新しく、派手な「VRならでは」の体験に満たされているわけではないかもしれない。しかし、VRChatをはじめたことで生まれた何千もの新たな「出会いと会話」に日々満たされている。そして、私見だがこうした新たな「出会いと会話」を生活に求める人々は、まさに今増えつつあるように思う。

日常に、新たな出会いと会話を求める人たちに、VRChatがさらに届いていってほしいと願うばかりだ。

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