担当編集が驚愕する士郎正宗の想像力「本当にクレイジーでとんでもない人」
一方で、あまりに突飛な想像力を目の当たりにし続けてきたために、「士郎さんは想像力が本当にクレイジーなんだよなあ……(笑)」とも語る。
「たとえば、ネット上で繋がるという概念も、今は容易に想像できるけど、80年代や90年代は体感できなかったからわかりませんよね。“電脳空間っていったい何なんだ!?” って。それを90年代に描いてたんですから、とんでもない人ですね」
AI搭載多脚戦車・フチコマのイラストも/©Shirow Masamune/KODANSHA/©Shirow Masamune/SEISHINSHA/©Shirow Masamune/「士郎正宗の世界展」
桂田剛司さんはさらに、「自分は妄想してるだけだって言うけど、1991年に刊行された『攻殻機動隊』の解釈でも僕らはいまだに議論しているんだから、どんな密度なんだと(笑)」と付け加えた。
原稿から伝わってくる独創性は、やはり圧倒的らしい。
四半世紀近くの間、一番近くでそのクリエイティブを見てきた桂田剛司さんでも、いまだに驚かされることばかりなようだ。
ネットは広大……だから? 士郎正宗と担当編集との不思議なやり取り
遥か未来を見通したかのような作品の数々は、時代が進むごとに読むことで、まるで答え合わせをしているような感覚さえ覚える。
本人が言う「妄想」という名の想像力で、予想できないテクノロジーを描いている士郎正宗さん。一方で、桂田剛司さんによれば、実はアナログな一面があるという。
「サイバーパンクな作品からすると意外かもしれませんが、士郎さんとのやり取りは今でも基本的にお手紙なんです。メールで送った時点で、ネット上のどこで盗まれるかわからないからと」
会場入口には特大サイズの「ネットは広大だわ……」(素子)が出迎えてくれる/©Shirow Masamune/KODANSHA/©Shirow Masamune/SEISHINSHA/©Shirow Masamune/「士郎正宗の世界展」
さらに、アナログな一面は原稿にも。
「原稿もCD-Rに焼いて届くし、テキストも画像(印刷物)として送られてくる……書いたのならテキストありますよね? と聞くと“ないです”と(笑)。そこは担当になってから現在まで変わっていません」
意外であると同時に、ネットの広大さやそこで発生する事件を描いてきた士郎正宗さんならではかもしれない──と、妙に納得してしまったという人も多いのではないだろうか。
最後に桂田剛司さんは、「僕は今ガラケーも持っているんですけど、それは士郎正宗さんのためのガラケーなんです。いまだにガラケーだから」と明かしてくれた。
漫画のカバーで素子になりきれるフォトスポット/©Shirow Masamune/KODANSHA/©Shirow Masamune/SEISHINSHA/©Shirow Masamune/「士郎正宗の世界展」
「ロボットの反乱」コーナー/©Shirow Masamune/KODANSHA/©Shirow Masamune/SEISHINSHA/©Shirow Masamune/「士郎正宗の世界展」
そんな不世出の作家・士郎正宗の世界を体感できる「士郎正宗の世界展」は、8月17日まで世田谷文学館で開催中。
漫画『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』のカバーで素子になりきれるフォトスポットや、漫画内のエピソード「ロボットの反乱」コーナーなどもあり、ファンはもちろんのこと、ポップカルチャーに関心があるならぜひとも訪れてほしい。
©Shirow Masamune/KODANSHA
©Shirow Masamune/SEISHINSHA
©Shirow Masamune/「士郎正宗の世界展」

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イベント情報
士郎正宗の世界展~「攻殻機動隊」と創造の軌跡~
- 会期
- 2025年4月12日(土)~8月17日(日)
- ※月曜日は休館日(祝日の場合は開館、翌平日休館)
- 会場
- 世田谷文学館(東京都世田谷区南烏山1丁目10−10)
- 主催
- 公益財団法人せたや文化財団世田谷文学館、講談社、パルコ
- 企画協力
- 青心社
■特別協力:士郎正宗
■後援:世田谷区、世田谷区教育委員会
グラフィックデザイン:坂脇慶、飛鷹宏明
■空間構成:トラフ建築設計事務所
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