経団連(日本経済団体連合会)が10月15日、日本のコンテンツ産業への提言文書「Entertainment Contents ∞ 2024」を公開した(外部リンク)。
文書の中では、前回の提言以降、日本政府が9月に始動させた「コンテンツ産業官民協議会」をはじめ、コンテンツ産業関連の政策が前進している点を評価。
一方で、「あくまでリスタート地点に立ったに過ぎず、期待された役割を十分果たせなかった従来のクールジャパン戦略を繰り返すにとどまることがあってはならない」と現状を説明。
新たに提言を行った目的として「新内閣のもとでもコンテンツ振興をトッププライオリティに位置付けて取り組むことを強く求める」と主張している。
また、経団連は漫画やアニメ、ゲームなど優れたエンターテインメント/コンテンツが日本の基幹産業の一つだと強調。
提言の各章では、コンテンツを国内外の市場へ展開していくため、官民において今取り組むべき課題と施策がまとめられている。
漫画、ゲームなど5分野に分けて状況と課題を整理
経団連は、日本の代表的な企業1542社、主要な業種別全国団体106団体、地方別経済団体47団体などから構成される組織。日本経済の自律的な発展と国民生活の向上に寄与することを目的としている。
今回の提言「Entertainment Contents ∞ 2024」では、注力すべき産業として、漫画、アニメ、ゲーム、実写映画/ドラマ、音楽の5分野をピックアップしている。
2022年には日本由来のコンテンツの海外売上が4.7兆円もの規模に達していることに言及。
一方で、サウジアラビアや韓国などがコンテンツ産業を強化していることなどに触れつつ、世界のコンテンツ産業の流れや、日本の「現在地と将来目指すべき姿」を解説している。
具体的には各分野で共通する施策として、以下の9つを挙げている。
1 人材育成・確保
2 挑戦支援
3 デジタル・生成AI
4 海賊版対策・著作権保護
5 情報・インテリジェンス共有
6 ローカライズ
7 プロモーション
8 拠点・コミュニティ形成
9 経済圏拡大
生成AIへの期待と危惧、今後起こりうる未来を示唆
特に、生成AIに対しては「クリエイターやファンから懸念の声も大きい中、あらゆる利害関係者を巻き込みながら、今後も議論を深めていくべき課題である」として、文書の各所で言葉が割かれている。
一例としては、生成AIという技術がもたらす影響として、コンテンツ産業の人手不足解消への期待や権利侵害への懸念点など、両論を併記。
そのうえで、今後起こりうる展開として、生成AI技術を使いこなすクリエイターが海外から生まれ、急速に競争力を増し、日本がコンテンツ産業での競争力を失うという可能性を提示。
「クリエイターおよび企業がAIの進化に対応し、技術やツールを十分に使いこなせるよう、人材育成・教育などの施策の推進が求められる」とまとめている。
労働環境や待遇の課題、ファンの存在にも触れる
経団連はまた、制作現場における労働環境や待遇の課題にも言及している。
人材の重要性については「コンテンツ産業の持続的かつ健全な成長には、人材を惹きつける魅力ある産業となることが鍵」であり「労働環境が原因で人材不足に拍車がかかり、さらに労働環境が悪化するという悪循環を断ち切ることが喫緊の課題」だと説明。
一方で、クリエイターの自由な創作/競争環境と、コンテンツを愛するファンが自らカルチャーをつくり上げてきた点にも着目。
今回の提言では、政府予算の大幅な拡充と支援策の強化を求めているものの、民間のクリエイターやファンたちが盛り上げてきた創作活動をトップダウンに変えようとするものではないと明言。
政府が掲げる「『官は環境整備を図るが、民のコンテンツ制作には口を出さない』という方針を堅持することが大前提」としている。
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