KAMITSUBAKI STUDIO所属のバーチャルシンガーの花譜さんとボカロP/シンガーソングライターのツミキさん。共に、現代のインターネット発音楽シーンを代表するポップスターであり、これまで度々コラボを果たしてきた。
花譜さんの名曲「過去を喰らう」のリミックスをツミキさんが担当。また、花譜さんの声を元にした歌声合成ソフト「音楽的同位体 可不(KAFU)」のデモソングとして、ツミキさんが「フォニイ」を書き下ろしている。
TVアニメ『うる星やつら』EDテーマのMAISONdes「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」は鮮烈なバイラルヒットを遂げ、花譜さんを代表する楽曲のひとつとなった。
そんな2人が、花譜さんのリアルアーティスト×コンポーザーコラボ企画「組曲」シリーズで、再びタッグを組む。
花譜さんとツミキさんの新たなコラボ曲「チューイン・ディスコ」。その配信リリース&MV公開にあたり、今回KAI-YOU.netでは、2人の対談インタビューを実施した。
新時代を牽引する才能が、今ここに邂逅を果たす。
取材・文:highland 編集:都築陵佑
目次
「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」タッグが初邂逅
花譜 ツミキさん、お久しぶりです!
ツミキ 1月のライブ(※2人は、アニプレックス設立20周年記念イベントに「MAISONdes feat. 花譜, ツミキ」として出演していた)ぶりですね!
(スタッフに向かって)今回は、このような場を設けていただきありがとうございます。
花譜 ありがとうございます!
──こちらこそ、お2人のお話をうかがえるのを楽しみにしていました。まずは、お互いの印象を教えてください。
ツミキ 「過去を喰らう」のリミックスを担当したり、可不のデモソングとして「フォニイ」を書いたりと間接的な繋がりはあったんですが、はじめてガッツリご一緒したのは「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」のときですね。
ツミキ 当時、花譜さんはどちらかというとインターネット的なイメージというか、あまりその外側には現れない良さを持っている方なのかなと思っていたんです。
しかし、自分で言うのもなんですが「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」以降、対外的な露出も増えていって、花譜さんがどんどん普遍的な存在に変わりつつあるのがすごく面白いな、と。
花譜 ツミキさんは、楽曲の中でも歌詞とか音とかめちゃくちゃ遊び心が溢れているから、アイデア力/発想力が豊かなんだなって印象があります。なんか、おこがましいですが……。
ツミキ いやいや、そんなことないです! 嬉しいです。
花譜とツミキから見た“音楽的同位体・可不”
──先ほどお話にも上がりましたが、ツミキさんが制作した「フォニイ」は花譜さんの音楽的同位体・可不のデモソングでした。現在、可不はVOCALOID(ボーカロイド、以下ボカロ)シーンでも大きな存在感を発揮しています。改めて、可不の印象について教えてください。
ツミキ 花譜さんの持っている浮遊感というか、声の空気感が、可不には入っていて。それが、従来の歌声音声ソフトにあったドライな印象からだいぶ離れたものだったのが、当時新鮮でした。
「この特徴を活かした楽曲をつくりたいな」と思ってできたのが「フォニイ」だったので、そういう意味では、花譜さんの声の持ち味が産んだ楽曲になるのかなと思います。
元々、僕の声のフェチとか好みとかもウィスパーボイス寄りだったので、すごく楽しく制作した記憶があります。
ツミキ 技術的には明らかに人間に近づいている一方、整理整頓された音像に機械的な清潔さもある。その「人間らしさ」と「機械的な部分」の両面性が、個人的にすごく儚く映ったんです。
そこをピックアップしたくて、「フォニイ」では造花というモチーフを使っていて。人間に対するジェラシーや「人工的な美しさもあるよね」みたいな部分は、そういった人間になりたいけどなりきれてない、可不の歌声の性質から引っ張られたところですね。
花譜 ツミキさんのおっしゃられた息の感じもそうですし、可不ちゃんの声はすごい人間味がありますよね。
「フォニイ」をはじめて聴いたとき、すごい自分の中に入ってきたというか。感覚的な表現になってしまうんですけど、自分は歌ったことがないはずなのに、歌った気分になりました(笑)。
──(笑)。ボカロシーンにおける可不の広がりについてはどう捉えていますか?
花譜 発売当初は私と可不ちゃんが同一視されていたというか、今よりももっと結びつきが強かったと思うんです。
だけど、ツミキさんや可不ちゃんを使ってくれているボカロPの方たちのおかげで、私とは全く関係のないところで、可不ちゃん自身のキャラクター性が構築されていって。クリエイターの皆さんと一緒に、可不ちゃんの世界観がどんどん広がっていって。それが嬉しいです。
やっぱり、私の声から生まれた可不ちゃんなので。遠くから活躍を見守っています。
──逆に、クリエイターの立場からはどうでしょうか?
ツミキ 個人的にも、可不の登場は合成音声の良さがまたひとつ更新された瞬間でした。
ツミキ CeVIO AI(※)の性質もあると思うんですが、従来の歌声音声ソフトは攻撃的な印象を出すのが得意なイメージだったのが、可不の歌声には憂いがあり、より柔軟性が上がった。そういった点から、可不を使っているボカロPもたくさんいらっしゃると思います。
(※)「音楽的同位体 可不(KAFU)」は執筆現在、音声合成ソフト「CeVIO AI」専用の音声ライブラリとして展開している。
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関連リンク
花譜
バーチャルシンガー
「KAMITSUBAKI STUDIO」始まりのバーチャルシンガー。
2018年、当時14歳にしてデビューし、素顔を明かさずに3Dモデリングされたアバターを使って活
動を開始。多様な表現が生まれ続ける領域の中でも、唯一無二の歌声と世界観を持つアーティ
スト像を確立する。
コラボ企画「組曲」での様々なコラボレーションが話題となり、現在YouTube総再生回数は2億回
を超え、国内外に熱狂的なファンコミュニティを持つ。
活動初期からのメインコンポーザー・カンザキイオリと生み出した楽曲は高い評価を受け、2022
年8月、日本武道館でのワンマンライブ「不可解参(狂)」を成功させた。
2024年1月には代々木第一体育館で第2章の幕開けともいえる4th ONE-MAN LIVE「怪歌」を開
催。武道館に続きバーチャルシンガー単独公演として最大期規模を更新する初のアリーナ公演
を成功させた。
次世代のアーティスト活動のスタンダードとしてバーチャルとリアルの垣根を越えるべく奮闘中。
ツミキ
ボカロP/シンガーソングライター
2017年にボカロPとしての活動をスタート。初めて投稿した楽曲「トウキョウダイバアフェイクショ
ウ」がニコニコ動画で殿堂入りを果たす。2021年2月には自身初のフルアルバム「SAKKAC
CRAFT」をリリース。2021年6月に発表した楽曲「フォニイ」がスマッシュヒットを記録し、同曲の
“歌ってみた”など二次創作動画が多数投稿され、その知名度を一気に高めた。また、2022年に
発表した「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ feat. 花譜, ツミキ」で更に二次創作ブームを起こし、中
毒性の高い楽曲で脚光を浴びている。
2021年より、シンガーソングライター・みきまりあとのユニット"NOMELON NOLEMON"としても活
動。2023年にはドラマーとして、ボーカル・石野理子、ギター・すりぃ、ベース・やまもとひかるとと
もにバンド・Aoooを結成。
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