ツミキ流 “踊れる楽曲”制作の秘訣
──今回の新曲「チューイン・ディスコ」は、ディスコ調でダンサブルな楽曲に仕上がっていました。近年は、TikTokやYouTubeショートに投稿された「踊ってみた」動画をきっかけにバイラルヒットする例も増えてきています。ツミキさんは踊れるような楽曲をつくる上で、意識されていることはありますか?
ツミキ 前提として、メロディーとかコード進行とか歌詞とか、やっぱりそれなりに楽しむには素養が必要だと思うんですよ。聴く人の中に知識がないとわからないことがある。
でも、リズムに関しては、本当に誰しも赤ちゃんのころから気持ちいいって思うものが人間の中に存在していると思うんですよ。
なので楽曲制作をする際、リズムをすごく意識的に、重点的に書くことが多いんです。
──なるほど。
ツミキ その上で、単にリズムパターンだけじゃなく、「そのセクションで何の楽器がどのようなフレーズで鳴っているか」といった部分でも、ノリ方が変わると思っていて。例えば、ドラムが四つ打ちじゃなくても、ベースが跳ねたスラップをしていたらノリたくなるし。
そういう色んな要素をパズルのように組んでいく中で、一番踊りたくなる、高揚感があるようなものを目指してます。
昔はもっとドラムやベースといったリズム隊の楽器に重点を置くことが多かったんですけど、最近はメロディーや歌詞をパーカッシブに聴かせることを意識して書くことが多いですね。
──先ほどお話にも上がりました「チューイン・ディスコ」の<どんどんと鼓動>や、星街すいせいさんに提供した「ビビデバ」の<Bibbidi-bobbidi-boo-wa>といったスキャット的なフレーズも、そういったイメージでしょうか?
ツミキ そうですね。「ビビデバ」でいうと、2番のAメロからサビ前までで言葉が乱打する場所が結構あって。
「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」もそうなんですけど、2番で打楽器的にアプローチするのが好きなところがありますね。
花譜 「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」も「チューイン・ディスコ」も、ツミキさんの曲は声に出した時に「どんどん気持ちよくなっていっちゃう!」みたいなところがあって。
どこにアクセントを付けたら良いか、考えなくてもできちゃうみたいな。そういう気持ち良さがツミキさんの曲にはありますね。
──ダンサブルといえば、花譜さんは5月にリリースされた「ゲシュタルト」でもダンスを披露されていました。踊ることについてはどのように捉えられていますか?
花譜 私はもともと、家で一人で好きなアーティストの真似をして踊ってみるのは好きだったんですけど、人に披露する、誰かに見られるためのダンスをするのは、全然できないし、難しいと思っていたんです。
でも「ゲシュタルト」ではじめてちゃんと振り付けしたダンスを踊ってみて、「ただ恥ずかしかっただけなんだな」って気づきました。
──先日に開催された音楽フェス「KAMITSUBAKI FES '24 THE DAY THE EARTH STOOD STILL」でもゲシュタルトダンスを披露されていましたが、今後のライブなどでダンスを披露する機会は増えそうですか?
花譜 それは……どうだろう(笑)?
それは分からないけど、例えば家で音楽を聴いていて、昔は首を動かしたりとかしていただけだったんですけど、最近は全身を使って踊ってみたらどうなるんだろうみたいなことを考え出すようになりました。それが上手いかとか下手かとかは関係なく、ですね。
──本日はありがとうございました! 最後に、改めて新曲「チューイン・ディスコ」の聞きどころを教えてください。
ツミキ 花譜さん側からご依頼の際にいただいた企画書の中に「ひとりぼっちの少年少女達へ、僕らだけの秘密のパーティを始めよう!」という文言があって、そこからイメージを膨らませて制作しました。
ちょっとケミカルで劇薬的な印象もありつつ、現代社会の“苦味”を塗りつぶすような、皆さんにとっての救いになるような楽曲を目指したので、そういうところを感じ取ってもらえたら幸いです。
あと、ちょっとお遊び的なアプローチとして、日本民謡っぽい要素を取り入れていて。旗揚げゲームがあったりとか、盆踊りやお経っぽいところが出てきたり。そういうエッセンスも含めて、楽しんでもらえたらと思います。
花譜 「秘密のパーティ」ということで、ドキドキ感とか、ヤケクソじゃないけど「踊りまくって楽しんでやる」っていう強い意志とかを感じながら歌いました。
何かが弾けるようなサビの始まりとか、2番の演歌っぽいバースとかによって、色々なパーティの顔が楽しめるような、めちゃくちゃ楽しい曲なので。
皆が思い思いにこの曲に合わせて踊ったり、跳ねたり、一緒に歌ったり、目いっぱい楽しんでくれたら良いなって思います。
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花譜
バーチャルシンガー
「KAMITSUBAKI STUDIO」始まりのバーチャルシンガー。
2018年、当時14歳にしてデビューし、素顔を明かさずに3Dモデリングされたアバターを使って活
動を開始。多様な表現が生まれ続ける領域の中でも、唯一無二の歌声と世界観を持つアーティ
スト像を確立する。
コラボ企画「組曲」での様々なコラボレーションが話題となり、現在YouTube総再生回数は2億回
を超え、国内外に熱狂的なファンコミュニティを持つ。
活動初期からのメインコンポーザー・カンザキイオリと生み出した楽曲は高い評価を受け、2022
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催。武道館に続きバーチャルシンガー単独公演として最大期規模を更新する初のアリーナ公演
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ツミキ
ボカロP/シンガーソングライター
2017年にボカロPとしての活動をスタート。初めて投稿した楽曲「トウキョウダイバアフェイクショ
ウ」がニコニコ動画で殿堂入りを果たす。2021年2月には自身初のフルアルバム「SAKKAC
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