天才の苦悩という切り口で、無数にある野球漫画に新風を吹かせた気鋭の作品を今回は紹介!
年間数百タイトルの漫画を読む筆者が、時事に沿った漫画を新作・旧作問わず取り上げる連載「漫画百景」。
第四十九景目は、平井大橋さんによる『ダイヤモンドの功罪』です。
去る8月1日には高校球児の聖地・阪神甲子園球場が開場から100周年を迎え、来る8月7日(水)には夏の甲子園が開幕。
野球業界が盛り上がる今こそ読みたい漫画として、本作を紹介します。
ifの可能性を描く4つの読切と、本編『ダイヤモンドの功罪』
『ダイヤモンドの功罪』は、2023年2月から集英社の漫画誌『週刊ヤングジャンプ』で連載中の漫画です。既刊6巻。作者・平井大橋さんの連載デビュー作となります。
連載開始からの約1年半で、「次にくるマンガ大賞2023」7位、「このマンガがすごい!2024」オトコ編第1位、「マンガ大賞2024」第5位を獲得しており、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進してきました。
なお、平井大橋さんは『ダイヤモンドの功罪』の連載前に、4つの読切を手掛けています。
綾瀬川を筆頭に『ダイヤモンドの功罪』の登場人物と同名のキャラクターがでてくるため、一種のプロット版と言えるでしょう。
本作の様々なifの可能性が示されており、展開予想の妄想がはかどるので、時間が許せば一読しておくのもオススメです。
読む順番としては、連作になっている『ゴーストライト』『ゴーストバッター』はセットで。『可視光線』『サインミス』は明確な繋がりもないので、どのタイミングで読んでも問題ないと思います。
人を狂わせる才能 天才を扱いきれない大人たち
『ダイヤモンドの功罪』のテーマは、天才の苦悩です。
ダイヤモンドのように光り輝く才能を持っていたために、もがき苦しむことになる小学生の主人公・綾瀬川次郎の受難を描いています。
綾瀬川はテニス、体操、水泳など、身体を動かすことなら何をやらせても同世代より頭一つ抜けた成績を残すことができる、類まれな身体能力を持った少年です。
しかし、自分が良い成績を残すことで、他の誰かが叱責され、悔し涙を流す姿を散々見てきてしまった。ゆえに誰よりも一緒にスポーツを楽しめる仲間を欲しています。
物語は、そんな綾瀬川がたまたまチラシを見て興味を持った少年野球チーム・足立バンビーズで、野球の面白さと、互いに助け合うチームスポーツの良さを知るところからはじまります。
自分が投げる速球を受けられるキャッチャーがおらず試合に出られなくても、ただチームメイトとキャッチボールをしているだけで楽しい。野球こそ自分のやるべきことだったと感じ入り、今までにない安らかな日々が送れるはずでした。
しかし、バンビーズの監督は綾瀬川の光り輝く才能に目がくらみ、小学生世代の日本代表の選考会に無断で応募してしまいます。
小学5年生にして170cm近い身長、初めての投球で見せた美しいフォームとコントロール抜群の速球。さらに、誰に教わるでもなく、動画を見ただけで鋭い変化球も投げられる……。
いくら綾瀬川がバンビーズのチームメイトと楽しい野球をしていたいと思っても、どうでもいいと思わせてしまう圧倒的な才能。「この才能を前にして おかしくならない方がおかしい」という監督の言葉が象徴的です。
その後、しぶしぶ訪れた選考会で綾瀬川は、同世代のエリートたちと出会い、運命が変わっていくことになります。
では、以下からネタバレありとなります。未読の方はご留意ください。
この記事どう思う?
関連リンク
連載
テーマは「漫画を通して社会を知る」。 国内外の情勢、突発的なバズ、アニメ化・ドラマ化、周年記念……。 年間で数百タイトルの漫画を読む筆者が、時事とリンクする作品を新作・旧作問わず取り上げ、"いま読むべき漫画"や"いま改めて読むと面白い漫画"を紹介します。
0件のコメント