KADOKAWAグループが6月8日に大規模なサイバー攻撃を受けた影響で、サービスを一時停止している動画共有サイト「ニコニコ動画」。
「復旧まで1か月以上かかる見込み」──運営はシステム全体を再構築する可能性に言及するなど、いまだ先行き不透明な状態が続いています。
ニコニコの運営は6月14日15時、復旧までの間を繋ぐ“縮小営業”バージョンとして「ニコニコ動画(Re:仮)」(読み方:りかり)を公開。
「ニコニコ動画」サービス開始の翌年である2007年の人気動画をランダムで10個表示。ryoさんによる初音ミク楽曲「メルト」や爆発的人気を集めた「レッツゴー!陰陽師」など、黎明期を彩った動画を視聴できました。
6月18日12時からは、2008年に投稿された人気動画に変更。「初音ミクの消失」「ブラック★ロックシューター」といった名曲が視聴できます。
文字通りソシャゲの10連ガチャのような表示および機能の「ニコニコ動画(Re:仮)」。気づけば20年違い歴史を有する「ニコニコ動画」を、改めて振り返る機会として反響を呼んでいます。
3日間で開発された新バージョン「ニコニコ動画(Re:仮)」
ニコニコの開発チームが、3日間の急ピッチで制作した「ニコニコ動画(Re:仮)」。
サイトを開くと、自動的に10個の動画がピックアップされ、それぞれのリンクから動画を視聴できる仕組みです。
6月14日のリリース当日からは2007年に投稿された動画、6月18日12時からは2008年の動画が公開中。数日間ごとに切り替わっていくようです。
なお、お馴染みのコメント機能も利用できますが、反映されるコメントは「ニコニコ動画(Re:仮)」リリース以降に投稿されたもののみ。
今この瞬間だけしか視聴できない映像という点も、反響を呼んでいる一因かもしれません。
運営自ら“10連ガチャ”と呼ぶ「ニコニコ動画(Re:仮)」のシステム
「ニコニコ動画(Re:仮)」トップページの下部には更新ボタンがあり、何度でも動画を入れ替えることができます。
お目当ての動画が出てくるかは運次第。もしくは、Xで該当の動画のURLをポストしてる人を探すのも手です。
ニコニコの公式Xアカウントは、この仕様を自ら“10連ガチャ”と表現。
「みなさんの10連ガチャ結果もリプ欄で教えてください!」と呼びかけています。
こういうところ、転んでも(かなり深刻な転び方ですが)ただでは起きないというか、“在りし日”の(まだなくなってませんが)ニコニコらしさを感じた人も多いのではないでしょうか。
kzら「ニコ動」黎明期のボカロ文化を牽引したクリエイターも反応
X上では、一般ユーザーが自分の10連ガシャの結果を投稿。
大規模サイバー攻撃によってほとんどの機能が停止状態──そんな未曾有の危機状態であるにもかかわらず、「ニコニコ動画」を彩った動画の数々と共に、懐かしさや新たな発見を共有する姿は、不思議な感覚を抱かせます。
そうした反応は一般ユーザーだけでなく、これまで「ニコニコ動画」で活躍したクリエイターたちからも。
「ニコニコ動画」といえば、2007年に誕生したVOCALOID「初音ミク」をはじめとしたボカロ文化を育んだ場所でもあります。
初音ミクを用いたボカロ曲でも知られるkzさんは6月14日、「俺もいるんかなぁと思って更新してたらヒャダさんと並んで出てきてひっくり返っちゃった」と投稿。
投稿された画像には、kzさん(livetune)が2007年に投稿した「Packaged」の隣に、ヒャダインさんの「イーアルカンフーで、ラップ」が並んでいました。
本来であれば「ニコニコ動画」の動画を埋め込みたいところですが、両方とも2007年の動画現在は視聴できません。ので、今回はYouTubeの動画にさせてもらいますね。
ほかにも、鼻そうめんPとして知られるイラストレーター・かんざきひろ(Hiroyuki ODA)さん(外部リンク)、「初音ミクの消失」のcosMo@暴走Pさん(外部リンク)ら、複数のボカロPも反応しています。
「ニコニコ動画(Re:仮)」検索サイトをリリースする有志も出現
さて、繰り返しになりますが「ニコニコ動画(Re:仮)」では、目当ての動画を観るためには、更新ボタンを押し続けて出会うしかありません。
「この動画も200●年だったのか」と、偶然性の高い出会いに驚き、感動し、そして懐かしむことはできますが、徐々に「それなら同じ年のあの動画も観たいな」と欲が出てくるのが人というもの。
そうした中、「ニコニコ動画(Re:仮)」上で視聴できる動画の検索機能を公開する有志が現れました。
公開された検索用サイトでは、動画の「タイトル」「投稿者」「説明文」のほか、「タグ」「ジャンル」などの一覧からも動画を検索可能。
10連ガチャを楽しみながら、どうしても特定の動画を観たい欲求が抑えられない時に、併用してみるのもよさそうです。
復旧まで1か月以上、その後の「ニコニコ動画」はどうなるのか?
冒頭で書いた通り、「ニコニコ動画」を含むニコニコのサービスが復旧するまでは、現状1か月以上かかる見込みとされています。
現在の「ニコニコ動画(Re:仮)」はそれまでの仮の姿。今後、2009年以降の動画がどこまで公開されるのか、そしていつまで「ニコニコ動画(Re:仮)」の状態が続くのか、はっきりと明言されているわけではありません。
とはいえ、苦しい状況の中で誕生した「ニコニコ動画(Re:仮)」とそれに対するユーザーの反応は、インターネットの歴史としてきちんと記録されるべき事象ではないでしょうか。
黎明期の動画がクローズアップされている今が、今後の「ニコニコ動画」にどう影響を与えるのか──イレギュラーな対応を経て、完全復旧した「ニコニコ動画」を取り巻く状況も、楽しみにしています。
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