最近、音楽を聴いているとやたらと「ジャージー・クラブ(Jersey Club)」という言葉を耳にすることがあると思います。
「この曲ってジャージーですか?」というような書き込みが、SNSやYouTubeのコメント欄などによく書かれています。
K-POPグループ・NewJeansの大ヒット曲「Ditto」や、ショート動画のタイムラインを騒がせているCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」も、ジャージー・クラブのリズムを借りた楽曲です。
ジャージー・クラブは、2020年代よりTikTokのようなショート動画のプラットフォームを通し、世界的に流行する新たな音楽ジャンル/スタイルとなっています。
この記事では、そんなジャージー・クラブとは何なのかを細かに解説していきたいと思います。
ジャージー・クラブの起源と、その発展
ジャージー・クラブは2000年代初期、アメリカのニュー・ジャージー州の都市、ニューアークのナイトクラブから生まれたとされています。
DJ Tameilさんをはじめとする「Brick Bandits Crew」と呼ばれるDJクルーが先駆者と知られており、その名前を借りて「ブリック・シティー・クラブ」とも呼ばれます。
彼らはシカゴやボルチモア発の曲をミックスセットに詰め込んでクラブで頻繁にプレイしていました。そして、それらの楽曲から影響を受けたダンス・トラックを自らも制作しはじめます。
その後、DJ Sliinkさん、Nadusさん、DJ Jayhoodさん、UNIIQU3さんなどが、そのスタイルをより「ニュー・ジャージー発のオリジナルな形」として発展させて、世界のクラブカルチャーにジャージー・クラブのシーンをアピールしたと言われています。
彼らは現在もジャンルの代表的なアーティストとして評価されています。
実際どんな特徴なの? ジャージー・クラブのリズム
ジャージー・クラブは4拍子のクラブ音楽で、主に130〜140BPMあたりのテンポが多いです。
短くチョップされたサンプル、主に三連符でシンコペーションされたキックドラムなどを通して、速くて“バウンシー”なリズムをつくりあげるのが特徴です。
小節後半のキック(バスドラム)の音が3連符になっていて、小節内に計5つのキックの音があるのが分かると思います。
また、TAPPの「Dikkontrol」のドラムパターンや、Lyn Collinsさんの「Think (About It)」のブレイクビート、Trillvilleの「Some Cut」にあるベッドがギシッと動く音などが主に使われると言われます。
このように、1980年代を起源とするボルチモア・クラブと類似した特徴を持ちます。ジャージー・クラブの場合はキックサウンドがハードで、サンプルがより細かくチョップされていると指摘されます。
他にもジュークやマイアミ・ベースなど、弾みのあるダンス・ミュージックからの影響が見られます。
そして、後にこれをもとにヒップホップ──中でもドリルミュージックと結びついたジャージー・ドリルに発展。
また、実験的なジャンルのデコンストラクテッド・クラブにも影響を及ぼしました。
ジャージー・クラブの止まらない人気
ジャージー・クラブはインターネット及びプラットフォームでの発信と、ポップスやR&B、ラップなど、他ジャンルへの転用も加速し、急激に広まっていきました。
特にアメリカのラッパー・Lil Uzi Vertさんの「Just Wanna Rock」は、ジャンルが誕生したニュー・ジャージー州ニューアーク出身のプロデューサー・MCVerttさんの提案で制作されています。
こちらの楽曲もTikTokのダンスチャレンジ(踊ってみた)で大ヒットすることでジャージー・クラブのリズムを世界に広めました(まさに現在、Creepy Nutsの楽曲が世界で広がっているように)。
他にもCiaraさんの「Level Up」、Cookiee Kawaiiさんの「Vibe (If I Back It Up)」、Drakeさんの「Sticky」などがジャージー・クラブのリズムを借用したヒット曲として知られています。
K-POPにおいても、XUMの「DDALALA」をはじめ、先述したNewJeansの「Ditto」や、LE SSERAFIMの「Eve, Psyche & The Bluebeard's Wife」、ODD EYE CIRCLEの「Air Force One」などの事例が見られます。
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