【レビュー】UKの若き異才 PinkPantheressの最新作は、現代ポップミュージックの最前線

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『Heaven knows』アルバムカバーアート

UKのシンガーソングライター・PinkPantheress(ピンクパンサレス)さんの新アルバム『Heaven knows』が本日の11月10日(金)にリリースされた。

アルバムにはアメリカのラッパー・Ice Spiceさんとの共演で注目され、米ビルボードのHOT100チャートに3位まで到達、記事執筆現在にYouTubeで1.6億回の再生数を記録したヒット曲「Boy's a liar Pt. 2」、そして先行シングルで人気を得た楽曲「Mosquito」「Capable of love」等が収録されている。
PinkPantheress, Ice Spice - Boy’s a liar Pt. 2 (Official Video)
フィーチャリングにはIce Spiceさんのほか、「Doja」で話題になったUKのラッパー・Central Ceeさん、アメリカのオルタナティブR&Bシンガー・Kelelaさん、ナイジェリアのラッパー・Remaさんらも参加。

協力プロデューサー陣も目が離せない。A$AP Rockyさんと共演したヒット曲「Lovesick」や、日本のラッパー・Tohjiさんとのコラボレーションでも知られるDJ・Mura Masaさん、DrakeさんやAriana Grandeさんら様々なアーティストに楽曲を提供するLondon on da Trackさん、PC MusicレーベルのメンバーでCaroline Polachekさんのアルバム共同製作者としても有名なDanny L Harleさんなどが参加する。

UKとアメリカ、現代のダンスポップムーヴメントを率いる面々が勢揃いする作品としても、『Heaven knows』は注目に値する。

NewJeansにも影響を与える異才・PinkPantheressとは?

PinkPantheressさんは、2001年生まれ。UKの若きシンガーソングライター兼音楽プロデューサーだ。

PinkPantheressさん/Xより

2021年のデビュー曲「Break It Off」、そしてまもなく発表した「Pain」などがTikTokでバイラルし、一躍スターとなった。

その後に続く「I must apologise」「Just for me」などの楽曲も次々とヒットさせる。
PinkPantheress - Pain
UK特有のダンスリズムを駆使し、キュートながらも寂しげな感受性が現れるメロディー、そして短尺動画のプラットフォームに特化した1〜2分程度の短い楽曲が彼女のトレードマークだ。

特に、2021年のミックステープ『to hell with it』は彼女の特色を象徴する。

近来、メロウなダンスポップで人気を集めるK-POPグループ・NewJeansの最新作『Get Up』、中でも「Super Shy」や「Cool With You」などの曲がPinkPantheressさんの影響を直に受けていると評されている。また、XGの「PUPPET SHOW」一部からもその影響が見られる。
NewJeans (뉴진스) 'Super Shy' Official MV

『Heaven knows』ショートレビュー

前述の通り、ミックステープ『to hell with it』がPinkPantheressさんのスタイルを定義し、それはポップス界におけるムーブメントの象徴的な一部となった。

そして初のスタジオアルバムとして世に出された本作『Heaven knows』は、UKの音楽総合サイト『NME』のレビュー曰く、「英ポップの未来を描く青写真」として注目すべきであると筆者も考えている(外部リンク

オープニング曲「Another life」で、イントロのオルガンとアウトロのノイジーなギターが奏でる同様のメロディーからは、彼女のキャリアからは想像しづらかったアグレッシブなタッチを聴くことができる。

その勢いで「True romance」はよりロックなリズムを使ったベッドルームポップに向かい、ギターの音色を引き継ぎつつチルなムードに引き返す「Mosquito」では既存のPinkPantheressタイプからよりダイナミックな落差を見せる。
PinkPantheress - Mosquito (Official Video)
ディスコを取り入れる「The aisle」や、Janet Jacksonさんや宇多田ヒカルさんを連想させる90〜00年代のR&B感受性が冴える「Feel complete」では、UKダンス風にとらわれない幅広さを見せる。

メロウな色を保ちながらも、今最もアグレッシブなヒップホップスタイルのドリルビートを取り入れる「Bury me」では特有の色が溶け込む可能性深さも象徴し、キュートなシンセやサンプルは「Internet baby (interlude)」がハイパーポップ的な文法と共鳴することで受け継がれる。

トラックを重ねるごとに広がるスケールは、実質上のエンディング曲「Capable of love」でシューゲイザー的な感性特有のノイジーでアンビエンスなフィナーレを持って集約される。
PinkPantheress - Capable of love (Official Video)
TikTokカルチャーの最前線でダンスポップの新たなムーヴメントを起こした新鋭が、独自の可能性を広げることで、さらにポップスの現状を幅広く取り入れた作品として紹介できる。

アルバム『Heaven knows』は、今のポップミュージックの流行を知るには、最も最適な選択になるだろう。

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