コロナ禍で台頭したポップミュージックを批評誌『ferne』が特集　文学フリマで頒布

編集／ライターの北出栞さんが主宰する評論アンソロジー『ferne』の第2号が、11月11日（土）に刊行される。

タイトルは『ferne ZWEI』（フェルネ ツヴァイ）。ポップカルチャーにおける音楽を特集しており、佐藤純一さん（fhána）とebaさん（cadode）による対談などを掲載する。

11月11日に東京流通センターで開催されるイベント「文学フリマ東京37」で税込1,650円で先行販売（販売ブースは第二展示場「ち-19」）。その後、BOOTHや各地の書店で順次販売される。

ライター北出栞の個人プロジェクト『ferne』

『ferne』は、音楽・アニメ領域をメインに編集者・ライターとして活動する北出栞さんが発行人をつとめる書籍。

「恋愛などの親密な二者関係」と「世界の終わり」を基調とし、2000年代初頭に生まれたセカイ系という概念。「人と人との接触が忌避される」「世界的な危機」とされた、コロナ禍が覆う2020年代。

この2者を照らし合わせ、新たなカルチャーの地図を描き出そうとした創刊号は2021年に刊行。個人流通のみで、これまでに500部以上を売り上げている。 続く第2号は、コロナ禍でリアルイベントの開催が困難だった時期にチャートに定着した、YouTube、SoundCloud、Bandcampといったオンラインプラットフォーム発のポップミュージックの行方を探る1冊。

これまで音楽雑誌で中心的に語られてこなかった、「音楽とビジュアルの融合」「インターネットやDAWなどのテクノロジー」「アニメカルチャーのユース世代への浸透」といったトピックスを、2000年代と2020年代を照らし合わせながら紐解く。

Telematic Visions×cosgaso、佐藤純一×ebaのインタビューを掲載

第2号には、新鋭トラックメイカー・Telematic Visionsさんとイラストレーター・cosgasoさん、アニソン作家として多くの実績を持つ佐藤純一さん（fhána）とebaさん（cadode）の対談を掲載。

そのほか、avex発の音楽×仮想世界プロジェクト「十五少女」、メディアアート研究の第一人者・久保田晃弘さんへのインタビューを掲載。

音楽レーベル・Siren for Charlotteの発起人である門脇綱生さんと鴉鷺さん、商業音楽メディアでも活躍する清家咲乃さん、NordOstさんらが論考を執筆している。

また、KAI-YOU Premiumに掲載された、発行人・北出栞さんによる批評「浜崎あゆみにおける「セカイ系」の詩学──あるいはTohji的ロードサイドの風景について」も再録される。 デザインはKabanaguさんや長谷川白紙さんのアートワークも手がける竹久直樹さんが前号に引き続き担当。

イラスト（表紙・口絵）は本誌にも登場しているcosgasoさんが担当している。

『ferne ZWEI』目次
ferne ZWEI 刊行に寄せて

Interview
Telematic Visions × cosgaso

流体のムード――東京のインディーミュージックシーンの観察ログ
NordOst

遠泳音楽とは何か――天使、破壊、「君」に触れられないこと
門脇綱生

〈セカイ系〉音楽としてのParannoul――シューゲイザーにおける「脱構築」の系譜
鴉鷺

Interview
佐藤純一（fhána） × eba（cadode）

明日の叙景『アイランド』と架空のノスタルジア
清家咲乃

浜崎あゆみにおける〈セカイ系〉の詩学――あるいはTohji的ロードサイドの風景について
北出栞

Interview
十五少女
Part1. 音楽プロデューサー・N／Part2. 酒井伸和（minori pictures）

ボカロ・コーリング・ユートピア――あなたのためにあったかもしれない理想郷について
江永泉

ここがどこかでありますように――『イルミラージュ・ソーダ』から探る〈セカイ系〉的聴取論
患者mono

Interview
久保田晃弘（多摩美術大学 情報デザイン学科メディア芸術コース教授）