NewJeansを擁するレーベル/事務所・ADOR(アドア)の経営権を巡る内紛は、いまだに収まる気配がない。
NewJeansのメンバー5人は9月11日、YouTubeで突発的にライブ配信を実施。ADORの親会社・HYBE(ハイブ)から受けたという不当な扱いを暴露したほか、8月27日に解任されたADOR元代表のミン・ヒジンさんの復帰を求めるなど、公的な場で直接意見を表明した。
対して、HYBE側は9月25日、NewJeansの要求を拒否。
ミン・ヒジンさんが今後5年間に渡りNewJeansをプロデュースすることを認めた(※HYBE側が9月11日に提案)一方、ADORの代表取締役職への復帰は拒否した。ミン・ヒジンさんはこの提案に反発しており、改めて代表取締役への復帰を要求している。
今回の記事では、HYBEとミン・ヒジンさんの対立が発覚してからNewJeansのメンバーが直接公論の場に立つまで、複雑すぎるADOR経営権紛争の流れをざっくりと整理してみたい。
目次
裁判所「背任行為とは言い難い」 当初は解任が認められず
ミン・ヒジンさん含むADOR旧経営陣が、親会社であるHYBEの経営権を奪おうとしているという背任疑惑に端を発する今回の騒動。
声明合戦や記者会見などを経て、5月末にADORの臨時株主総会が開催された。HYBE側は当初、この臨時株主総会でADOR旧経営陣を交代させる目算だった。
しかし、5月30日にソウル中央地裁は、臨時株主総会でのミン・ヒジンさんの代表取締役解任を認めないとする判決を下した。
ミン・ヒジンさんがHYBEからの独立を模索したのは確かだと認めた一方、具体的に実行する段階には至っておらず、背任行為になるとは言い難いと判断されたのである。
これをもって、HYBE側がミン・ヒジンさんにかけた背任疑惑に一時ストップがかかった。
2024年の夏、NewJeansの活動は大成功 しかし……
その後、NewJeansは引き続きミン・ヒジンさんのプロデュースの下、活動を続行。
中でも、6月に東京ドームで開催されたファンミーティングで披露された、ハニさんによる松田聖子さんの楽曲「青い珊瑚礁」のカバーは、日韓を問わず大きな話題に。2024年夏のNewJeansは大成功を見せた。
しかし、事態が和解に進むことはなかった。5月の臨時株主総会でミン・ヒジンさんは解任を免れたものの、側近の理事2人が解任されており、理事陣の過半数を親HYBE側が占めるように。
結局、8月27日にADORの理事会が開かれ、ミン・ヒジンさんは解任。新たな代表理事にはHYBE最高人事責任者であるキム・ジュヨンさんが選任された。
新体制となったADORは、ミン・ヒジンさんがNewJeansのプロデュース業務を担当すると説明。一方、ミン・ヒジンさん側は、業務委任契約書の内容が不合理(※)であると主張。署名を拒否したと報道された。
(※)ミン・ヒジンさんは、「NewJeansが2025年にワールドツアーを控えているにも関わらず、契約期間が2ヶ月しかない(後にHYBE側が譲歩)」「ADORの一方的な意向で契約解除できる“毒素条約”ばかり」だと説明している。
MV制作会社Dolphiners Filmと新体制ADORの間にも確執が生まれる
また、ADORの新体制がはじまってまもない9月2日、「Ditto」「OMG」「ETA」などのMVを手がけてきた映像制作チーム・Dolphiners Filmのシン・ウソク監督が、新体制となったADORにNewJeans関連の映像コンテンツなどを削除するように要請されたとSNSで主張した。
以降、ADORとシン・ウソク監督の間で真偽を巡る攻防が繰り広げられ、Dolphiners Filmが運営するYouTubeチャンネル「Ban Heesoo」の動画(※)が非公開になる事態となった。
(※)Ban Heesoo(パン・ヒス):「Ditto」のMVに登場する人物。YouTubeチャンネルに投稿されている動画には、彼女が撮影したと思われる(「Ditto」劇中の)NewJeansのメンバーの姿が収められている。
Dolphiners Filmが手がけたMVは、NewJeansがスターダムにのし上がるのに重要な役割を果たした。「Ditto」のノスタルジックなホラー演出や「OMG」のK-POPファンダムに向けた挑発は、NewJeansのアーティスト性をより独創的なものにしたのである。
Dolphiners Filmは「ETA」でも、Appleとのコラボでシネマティックな作品を作り出し、NewJeansというブランド価値の強化に貢献した。
新体制になってからすぐ、中心にいるクリエイターとの確執が露呈したことは、ADORの今後について多くの憂いを招いている。
なお、Dolphiners Filmは、「Ban Heesoo」の動画を再公開。シン・ウソク監督は、9月10日にADORの経営陣を名誉棄損で告訴する意向をSNSで発表している。
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