著者はアダルトメディア研究家の安田理央さんと、美少女コミック研究家の稀見理都さん。
2人を中心としたアダルトメディア総研のメンバーが、漫画、ゲーム、アニメ、AV、女性向け、小説、音声、AI、さらにはアダルト規制など、様々な観点から現状をレポートしている。
各ジャンルのアダルトコンテンツの今を網羅
近年、人間の性の多様化に伴って発生しているという性の大変動。『アダルトメディア年鑑2024』では、そうした変化の最前線を表現しているのはアダルトメディアであるとして、その全体像の把握を試みている。 全9章、328ページからなる本書は、男性向け・女性向け問わず幅広い内容を取り扱う。
漫画やゲーム、実写動画、小説といった長い歴史を有する媒体から、盛り上がりを見せる音声作品、議論を呼ぶ生成AIなど最新のトピックスまでを収録。 さらには、表現規制や海賊版問題、写真集、海外アダルトコミック、イベント、マッチングアプリなど、数々のアダルトメディアの現状を網羅し、未来を展望した。
漫画、表現規制、女性向け作品…有識者がレポート
著者の1人・安田理央さんは、主にアダルト産業関連をテーマに執筆するライター。『日本エロ本全史』(太田出版)や『日本AV全史』(ケンエレブックス)などで知られる。本書では三次元アダルトメディアの編集を統括した。もう1人の著者である稀見理都さんは、二次元アダルトメディアの編集統括を担当。『エロマンガ表現史』(太田出版)や『エロマンガノゲンバ』(三才ブックス)などを著書に持ち、海外のアニメイベントでも講演を行っている。 そして、アダルトメディア総研のメンバーとして、漫画評論家/編集者の永山薫さんも参加。表現規制や著作権など、長年にわたり漫画の近接領域で取材する永山さんは、本書でアダルト規制分野を担当した。
執筆陣はほかにも、官能小説や女性の生き方をテーマとしたエッセイなどで活躍する作家の大泉りかさん、女性向けエンタメ・カルチャーシーンで活動するライター・アオヤギミホコさんらが参加している。
『アダルトメディア年鑑2024』アダルトメディア総研メンバー
■安田理央(やすだ・りお)
三次元アダルトメディア編集統括
1967年埼玉県生まれ。ライター、アダルトメディア研究家。美学校考現学研究室卒。主にアダルト産業関連をテーマに執筆。特にエロとデジタルメディアの関わりや、アダルトメディアの歴史の研究をライフワークとしている。AV監督やカメラマン、漫画原作者、トークイベントの司会者などとしても活動。主な著書として『痴女の誕生——アダルトメディアは女性をどう描いてきたのか』(2016年)、『巨乳の誕生——大きなおっぱいはどう呼ばれてきたのか』(2017年)、『日本エロ本全史』(2019年、いずれも太田出版)、『AV女優、のち』(角川新書、2018年)、『ヘアヌードの誕生——芸術と猥褻のはざまで陰毛は揺れる』(イースト・プレス、2021年)、『日本AV全史』 (ケンエレブックス、2023年)などがある。
■稀見理都(きみ・りと)
一・二次元アダルトメディア編集統括
美少女コミック研究家。マンガ家インタビュアー。ライター。日本マンガ学会所属。サークル「フラクタル次元」主催、同人誌「エロマンガノゲンバ」シリーズを編集、出版。『増補版エロマンガ・スタディーズ』(著:永山薫、寄稿:東浩紀)の監修。「いちきゅーきゅーぺけ」(著:甘詰留太)のエロマンガ時代考証を担当。企画「エロまんがとSF」にて第24回暗黒星雲賞受賞。2015年、2016年アメリカのカルフォルニアで行われた北米最大のアニメイベント、ANIME EXPOに肩書き「HENTAIスペシャリスト」で正式ゲストとして招待され、講演を行う。著書に『エロマンガ表現史』(太田出版、2017年)、『エロマンガノゲンバ』(三才ブックス、2018年)がある。
※以下、50音順
■アオヤギミホコ(あおやぎ・みほこ)
二次元女性向けメディア(漫画・小説)担当
1990年東京都生まれ。ライター。女性向けエンタメとカルチャーを中心にインタビューや執筆活動を行う。主に担当・参加した企画に『ユリイカ』(「百合文化の現在」「女オタクの世界」特集)、『SFマガジン』(「百合」「BLとSF」特集」)など。
■新野安(あらの・いおり)
同人漫画担当
1991年生まれ。東大卒エロマンガ批評家。サークル夜話.zipにてエロマンガ批評同人誌〈エロマンガの読み方〉シリーズを執筆・編集。2022年には『エロマンガベスト100+』が三才ブックスから商業単行本化。一般向けのアニメマンガについて執筆することもあり、『ユリイカ』『aninado』『マンガ論争』などに寄稿あり。
■淫語魔(いんごま)
AV業界担当
1966年東京都生まれ。AVプロデューサー、ライター。AVメーカー「MARRION」と「美少年出版社」で作品をプロデュース。最近は他メーカーでもレズ、痴女作品などを手がける。ライターとしてはAV作品や女優インタビュー、SM緊縛などを紹介。現在『月刊FANZA』でAVレビューを定期執筆中。
■大泉りか(おおいずみ・りか)
三次元女性向けメディア担当
1977年東京都生まれ。2004年に『ファック・ミー・テンダー』(講談社)でデビュー。以後、官能小説や女性向けポルノノベル、女性の生き方をテーマにしたエッセイ等で活躍。近著はホストにハマった女性たちを追った『ルポ ホス狂い』(鉄人社)。
■切通理作(きりどおし・りさく)
ピンク映画担当
1964年東京都生まれ。文化批評。編集者を経て1993年『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』で著作デビュー。『宮崎駿の<世界>』でサントリー学芸賞受賞。『お前がセカイを殺したいなら』『ある朝、セカイは死んでいた』『情緒論〜セカイをそのまま見るということ』など著書多数。『キネマ旬報』に「ピンク映画を追いかけろ!」を連鎖中。
■くろがね阿礼(くろがね・あれ)
AV女優担当
1971年東京都生まれ。AVライター。『月刊FANZA』、『週刊プレイボーイ』等執筆。ライターデビュー以来、「売れる新人女優」の傾向を追い続ける新人ウォッチャー。デラべっぴんR誌上において、「FANZAアダルトアワード2019」では、最優秀新人女優賞ノミネート女優を10人中8人的中させた。
■xcloche(くろっしゅ)
音声、AI担当
研究開発エンジニア(機械学習)。DLsiteの変わった音声作品を批評する同人誌『奇想同人音声評論誌「空耳」』主宰。
■東風克智(こち・かつとも)
AV&アダルトVR担当
1979年愛媛県生まれ。AVライター。現在は『週刊大衆』、『アサヒ芸能』、『BUNKA超タブー』、『月刊FANZA』、「FANZAニュース」などで執筆。「AVマイスター」を名乗り、1日に2〜3本の作品を鑑賞。世間にAVの面白さを伝える事をモットーとしている。ネットカフェなどで観られるトークバラエティ番組「AV紳士」のMCも務めており、シーズン2まで配信中。
■Dec(でっく)
同人AV担当
1981年東京都生まれ。AV監督。家庭用ゲームのバグチェッカー、アダルト雑誌編集者を経験。2006年、編集者時代に重度のヘルニアにより入院し退職。手術を3度受け、半年以上のリハビリを経て社会復帰し、2011年にコスプレ同人AVメーカー「コスプレ一本勝負」を立ち上げる。2018年5月にIPPAへ加入。以降は適正AVメーカーとして活動を続けている。
■とくっち(とくっち)
オナホール担当
町の小さなアダルトショップ店員からスタートして、今では自社工場に職人を有するオナホ屋となったホットパワーズのCOO(最高オナホ責任者)。代表作に、挿入できないタイヤ並の固いオナホ「オーガブラック」や、ショップ店員のアナルをオナホ化した「佐藤のアナル」があるが全て軒並み売れなかった。業界歴20年のベテランちんこだが、老化とは大体友達で「いつまでオナホ使えるのかな…」と震える一面も。
■永山薫(ながやま・かおる)
アダルト規制担当
1954年大阪府生まれ。漫画評論家、編集者、作家。現在、ミニコミ誌『マンガ論争』の編集人を務め、漫画と表現規制、著作権、図書館、教育、ジェンダーなど漫画界と近接領域の取材・執筆を行う。著書に『増補 エロマンガ・スタディーズ 「快楽装置」としての漫画入門 』(ちくま文庫)など。
■メイザーズぬまきち(めいざーず・ぬまきち)
アニメ・ゲーム担当
1972年北海道生まれ。エロゲーメーカー「オーバーフロー」代表。シナリオ、ディレクション、プロデュースを主な担当としつつ、制作が危機的な状況のときは絵も描く。代表作は『らーじPONPON』『スクールデイズ』等。近年は、他社タイトルの企画とキャラクターの監修、シナリオの校正校閲等、コンサルティングとQCをしていることが多い。
■爆裂☆インド象(ばくれつ・いんどぞう)
美少女ノベルズ担当
「0」を最初に発見したでお馴染みのインドで修行を積んだ破戒僧。『ゲームラボ』や美少女ゲーム雑誌にオナニーに関するコラムを執筆。
■滅び屋(ほろびや)
アダルト規制担当
1985年東京生まれ。日本マンガ学会正会員、エロマンガ修正研究家。2013年同人誌の修正が濃くなっていることを機に修正に興味を持つようになる。コミックマーケットの修正の基準である「商業誌に準じる」の商業誌の修正を解明すべく、2018年から成年向けやBLの性器の修正を比較調査をした『商業誌に準じたい』を発行している。他に、東京都青少年健全育成審議会の傍聴などの活動をしている。
■maipenrai(まいぺんらい)
AV担当
千葉県出身。年金生活者。個人ブログ「裏女優に首ったけ」管理人。元エロ本編集者・AV監督。20代からエロ本出版社勤務。途中AV業界に関わるが、再び出版の世界に戻りエロ本専門の編集プロダクションを主宰。1990年代末に裏ビデオ/裏DVDを担当。以後裏モノ、無修正がライフワークに。
■松村由貴(まつむら・よしたか)
官能小説担当
1961年神奈川県生まれ。編集者&官能プロデューサー。現在(株)大航海代表。生前の団鬼六氏に師事、官能文芸誌・季刊『悦』創刊編集長。名作の復刻、野心作の書下ろしに奔走、エンターテインメントとして優れた官能小説をこよなく愛している。「団鬼六賞」主宰の他、官能朗読イベント「悦宴」共催、サンケイスポーツ「性ノンフィクション講座」講師&審査委員、CSエンタメ〜テレ「女の秘蜜 妄想ノススメ」協力、映画「花鳥籠」協力など。
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書籍情報
アダルトメディア年鑑2024 AIと規制に揺れる性の大変動レポート
- 著者
- 安田理央&稀見理都編
- 発売
- 2023年12月26日
- 仕様
- A5判 並製 328頁
- 予価
- 3200円(+税)
- 発売
- イースト・プレス
- 概要
- 国会で論議される細分化するLGBTQ+。結婚しない人、セックスしない人の果てしのない増加。人間の性が根底から変わりつつある。その最前線をもっとも現象として表現しているのがアダルトメディアである。ITやAIの進歩によって驚くべきレベルに達している。しかし、合法、グレーゾーン、違法まで地下に潜っているため、その全体像を把握するものは誰一人としていない。そのことを憂えたアダルトメディア研究のトップを行く安田理央(主に3次元以上を担当)と稀見理都(主に2次元以下を担当)が、考え得るもっとも詳しいフィールドワーカーを集め、アダルトメディア総研を組織した。本書は、漫画、ゲーム・アニメ、AV、女性向け、小説、音声、AI、アダルト規制などの観点から、人類史レベル起こっているおどろくべき性の大変動をはじめてレポートするものである。
【『アダルトメディア年鑑2024』目次】
安田理央&稀見理都 編 アダルトメディア年鑑2024
巻頭言:今、我々はアダルトメディアの大変動期に立ち会っている!
安田理央・稀見理都
■第1章:漫画
男性向け商業エロ漫画 コンビニからの締め出し、紙の高騰と苦しい商業成年コミック業界。電子に望みを託せるか! 稀見理都
男性向け同人エロ漫画 「電子オリジナル同人」こそ、あらゆるエロの中心地だ! 新野安
女性向け商業エロ漫画 「女性向けポルノコミック」とは何か? アオヤギミホコ
女性向け同人エロ漫画 女性向け×男女×R18×同人の時代 アオヤギミホコ
百合・レズエロ漫画 女性同士の性愛漫画の世界/レズ・百合エロ漫画 稀見理都(協力:アオヤギミホコ)
■第2章:ゲーム・アニメ
ゲーム アダルトゲーム栄枯盛衰 移ろいゆくメディアとプラットフォーム メイザーズぬまきち
アニメ アダルトアニメの現状と新たな戦略! 稀見理都
■第3章:実写動画
AV コロナ禍、AV新法を乗り越えた作品が生まれつつある 東風克智
AV女優 生々しい性欲を感じさせてくれる女優が売れる! くろがね阿礼
アダルトVR 2人のメタバース(フルCG)女優デビューの衝撃! 東風克智
女性向けAV 女性向けAVは“AV初心者”の入口、そして推し活へ 大泉りか
AV業界① AV業界において『適正AV』と『AV新法』は誰に福音をもたらしたか? 淫語魔
AV業界② FANZA一強のAV配信市場に感じられる閉塞感 冴喜シンイチ
同人AV 勢いを増していく反面、課題も山積みな同人AV dec
無修正動画 無修正動画も主流は海外「サブスク配信」から「同人AV」へ maipenrai
ピンク映画 ピンク映画の現在とは? 切通理作
女性向けアダルトサイト いま、女性たちが求めているのは「快感とSEX」!? 大泉りか
中間言:「女性向け」を探って初めて見える「男性向けの本質」
大泉りか・アオヤギミホコ
■第4章:小説
官能小説 満を持して『新・官能』が次代を牽引する! 松村由貴
美少女ノベルズ 美少女ノベルズ市場は風前の灯火!? 爆裂☆インド象
TL・BL小説 中華BLとWeb小説の新たな風? アオヤギミホコ
ロマンス小説 変わりゆくロマンス小説の世界 アオヤギミホコ
■第5章:音声
音声 過熱する音声作品業界 xcloche
■第6章:AI
生成AI 生成AIの仕組みと現状 xcloche
生成AIポルノ ポルノ生成AIの利用 xcloche
生成AI写真集 販売サイトに氾濫するAI生成された美女たち 安田理央
生成AI動画 AI技術によって揺れ動くAVの未来 安田理央
■第7章:アダルト規制
アダルト規制 表現規制とは何か? 永山薫
漫画の修正 漫画の性器表現はどのように規制されているのか? 滅び屋
表現規制の現況と予報 規制の波がAIに押し寄せる!? 永山薫
■第8章:その他の印刷物
書籍 電子出版に活路を見出すアダルト係書籍 安田理央
写真集 復調を見せつつもデジタルへの移行が進む写真集業界 安田理央
実写系エロ雑誌 コンビニ排除、AV新法でトドメを刺されるエロ雑誌 安田理央
エロ劇画誌 エロ劇画業界はすでにアダルトメディアとして機能していないのか? 稀見理都
■第9章:その他のアダルト
海外アダルトコミック 「HENTAI」は世界の共通語! 稀見理都
エロ漫画海賊版 海賊がいることを前提にした戦略が必要? アダルトメディアの海賊版問題の今 稀見理都
イベント 店舗イベントはメーカー主催からプロダクション主催へ。そして女優主導の時代が来るか? 淫語魔
パトロンサイト パトロンサイトを知らないお前は時代遅れ 新野安
マッチングアプリ 「いががわしい」と「健全な出会い」、「危険」と「安全」の間で揺らぎ続ける出会い系の遍歴 大泉りか
オナホール ガラパゴス化が進む国内メーカーの打開策は異業種コラボか? とくっち
アダルトフィギュア・ラブドール フィギュアとラブドールの現在 メイザーズぬまきち
巻末言:AIと規制の時代——アダルトメディアだけでなく、ありとあらゆるジャンルで、インディーズと商業という境目が崩壊している!
アダルトメディア総研メンバー
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