4月17日に中国メディア・新京報などが報じている(外部リンク)。
これにより、『すずめの戸締まり』は日本映画作品における海外興行収入1位を達成。新海誠監督として、初の日本の興行収入を上回る作品となった。
新海誠監督はTwitterで、「国内で興収100億を超えた作品で、海外一国がそれをさらに上回るというのは史上初」「個人的には、日本のアニメーションの世界興行が別のフェーズに入ったと実感しています」とコメントしている。
アジア圏から絶大な支持を得る『すずめの戸締まり』
興行通信社によれば、4月16日時点で国内での興行収入は144.8億円を記録。国内公開映画として歴代14位にランクインしている(外部リンク)。
2023年3月以降、香港・マカオ・台湾・インドネシア・フィリピン・マレーシア・シンガポール・韓国・ベトナム・中国などで公開され、すべての国と地域でデイリーランキング1位を獲得。
特に中国では、4月4日までに興収6.11億元を突破。前作『君の名は。』(5.74億元)を上回り、中国で公開された日本映画史上トップの記録の更新した。
同じく韓国でも、4月15日まで累計観客数448万2051人を記録。日本映画トップの記録であると同時に、『君の名は。』『すずめの戸締まり』が、韓国公開の歴代日本映画興行トップ3入りを果たした(外部リンク)。
『すずめの戸締まり』が海外興収歴代1位の映画作品に
新海誠監督のツイートによれば、「国内で興収100億を超えた作品で、海外一国がそれをさらに上回るというのは史上初」。加えて、海外での興収歴代1位の日本映画になったという。国内で興収100億を超えた作品で、海外一国がそれをさらに上回るというのは史上初です。また『すずめ』は、全ての日本映画の中で海外興収一位となりました。
— 新海誠 (@shinkaimakoto) April 17, 2023
個人的には、日本のアニメーションの世界興行が別のフェーズに入ったと実感しています。これまで他の様々な作品が積み上げてきたことの成果でも https://t.co/eAhymLonIC
たとえば、日本の興収歴代トップとなる404.3億円を達成した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、日本に次ぐ数字を記録した米国で約66億円(4950万ドル)(外部リンク)。 全世界で約517億円を叩き出し、2020年公開の映画で世界トップの興収を記録しても(外部リンク)、国内100億円超えの興収を海外で上回ることは難しい。
ちなみに国内100億円未満の作品では前例がある。2014年に公開された『STAND BY ME ドラえもん』は日本で興収83.8億円を記録。中国では約116億円を達成した(外部リンク)。
1990年代では、98年公開の『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』が日本で72.4億円。米国では約115億円を記録している(外部リンク)。
なぜ中国・韓国でヒットするのか 新海誠人気の土壌
なぜ『すずめの戸締まり』は中国と韓国でこれほど人気を集めるのか。アニメジャーナリスト・数土直志さんは著書の中で、制作会社のコミックス・ウェーブ・フィルム常務取締役・角南一樹さんの言葉を紹介している。
韓国の苛烈な競争社会は日本でもよく知られ、世界1位の深刻な少子高齢化国家でもある。日本が抱える課題をより先鋭化させたような印象もある。(韓国における新海誠人気について)若者が感じる息苦しさ、受験戦争の厳しさに代表されるような生活環境が、新海誠の描く青春像の理解につながっている。「主人公は自分でないか」と。それは日本、韓国、中国といった東アジアで特に感じられているのではないか。 数土直志『日本のアニメ監督はいかにして世界へ打って出たのか?』(星海社新書)
中国も社会主義的な監視国家として、その閉塞感が報道などで伝えられることが多い。そういった「息苦しさ」への共感から出発した新海誠監督の物語は、アジア圏の抱える課題とリンクするのかもしれない。
『君の名は。』の大ヒットがあった中国では、それ以前から新海誠監督作品の人気は高い。
同著によれば、中国のアニメスタジオ・ハオライナーズとコミックス・ウェーブ・フィルムが共同制作したアニメ映画『詩季織々』も、そうしたつながりを象徴すると指摘。 実際、2018年に日本でも公開された同作は、中国側の制作会社の代表であるリ・ハオリンさんが、『秒速5センチメートル』(2007年)を観て新海誠監督に憧れ、熱烈なオファーを送り続けたことで始動したプロジェクトだ。
3本の短編からなるオムニバスという構造に加えて、3本のうち1本では、淡い初恋を瑞々しく繊細に描くなど、『秒速5センチメートル』へのオマージュが散りばめられている。
新海誠監督が海外のイベントや映画祭に本格的に訪れたのも、韓国が最初だという。
©2022「すずめの戸締まり」製作委員会
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