新海誠『すずめの戸締まり』が海外興収歴代1位の日本映画作品に

新海誠『すずめの戸締まり』が海外興収歴代1位の日本映画作品に
新海誠『すずめの戸締まり』が海外興収歴代1位の日本映画作品に

日本映画として海外の興行収入トップとなった映画『すずめの戸締まり』

新海誠監督のアニメーション映画『すずめの戸締まり』の中国本土での興行収入が、7億5200万元(約146億6700万円)に達し、日本での興行収入144.8億円を上回った。

4月17日に中国メディア・新京報などが報じている(外部リンク)。

これにより、『すずめの戸締まり』は日本映画作品における海外興行収入1位を達成。新海誠監督として、初の日本の興行収入を上回る作品となった。

新海誠監督はTwitterで、「国内で興収100億を超えた作品で、海外一国がそれをさらに上回るというのは史上初」「個人的には、日本のアニメーションの世界興行が別のフェーズに入ったと実感しています」とコメントしている。

アジア圏から絶大な支持を得る『すずめの戸締まり』

映画『すずめの戸締まり』PV
『すずめの戸締まり』は日本では2022年11月11日に公開。日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる“扉”を閉める旅をする少女・鈴芽(すずめ)と閉じ師の青年・草太の冒険物語だ。

興行通信社によれば、4月16日時点で国内での興行収入は144.8億円を記録。国内公開映画として歴代14位にランクインしている(外部リンク)。

2023年3月以降、香港・マカオ・台湾・インドネシア・フィリピン・マレーシア・シンガポール・韓国・ベトナム・中国などで公開され、すべての国と地域でデイリーランキング1位を獲得。

特に中国では、4月4日までに興収6.11億元を突破。前作『君の名は。』(5.74億元)を上回り、中国で公開された日本映画史上トップの記録の更新した。

同じく韓国でも、4月15日まで累計観客数448万2051人を記録。日本映画トップの記録であると同時に、『君の名は。』『すずめの戸締まり』が、韓国公開の歴代日本映画興行トップ3入りを果たした(外部リンク)。

『すずめの戸締まり』が海外興収歴代1位の映画作品に

新海誠監督のツイートによれば、「国内で興収100億を超えた作品で、海外一国がそれをさらに上回るというのは史上初」。加えて、海外での興収歴代1位の日本映画になったという。

たとえば、日本の興収歴代トップとなる404.3億円を達成した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、日本に次ぐ数字を記録した米国で約66億円(4950万ドル)(外部リンク)。 全世界で約517億円を叩き出し、2020年公開の映画で世界トップの興収を記録しても(外部リンク)、国内100億円超えの興収を海外で上回ることは難しい。

ちなみに国内100億円未満の作品では前例がある。2014年に公開された『STAND BY ME ドラえもん』は日本で興収83.8億円を記録。中国では約116億円を達成した(外部リンク)。

1990年代では、98年公開の『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』が日本で72.4億円。米国では約115億円を記録している(外部リンク)。

なぜ中国・韓国でヒットするのか 新海誠人気の土壌

なぜ『すずめの戸締まり』は中国と韓国でこれほど人気を集めるのか。

アニメジャーナリスト・数土直志さんは著書の中で、制作会社のコミックス・ウェーブ・フィルム常務取締役・角南一樹さんの言葉を紹介している。

(韓国における新海誠人気について)若者が感じる息苦しさ、受験戦争の厳しさに代表されるような生活環境が、新海誠の描く青春像の理解につながっている。「主人公は自分でないか」と。それは日本、韓国、中国といった東アジアで特に感じられているのではないか。 数土直志『日本のアニメ監督はいかにして世界へ打って出たのか?』(星海社新書)

韓国の苛烈な競争社会は日本でもよく知られ、世界1位の深刻な少子高齢化国家でもある。日本が抱える課題をより先鋭化させたような印象もある。

中国も社会主義的な監視国家として、その閉塞感が報道などで伝えられることが多い。そういった「息苦しさ」への共感から出発した新海誠監督の物語は、アジア圏の抱える課題とリンクするのかもしれない。

『君の名は。』の大ヒットがあった中国では、それ以前から新海誠監督作品の人気は高い。

同著によれば、中国のアニメスタジオ・ハオライナーズとコミックス・ウェーブ・フィルムが共同制作したアニメ映画『詩季織々』も、そうしたつながりを象徴すると指摘。 実際、2018年に日本でも公開された同作は、中国側の制作会社の代表であるリ・ハオリンさんが、『秒速5センチメートル』(2007年)を観て新海誠監督に憧れ、熱烈なオファーを送り続けたことで始動したプロジェクトだ。

3本の短編からなるオムニバスという構造に加えて、3本のうち1本では、淡い初恋を瑞々しく繊細に描くなど、『秒速5センチメートル』へのオマージュが散りばめられている。
『秒速5センチメートル』予告編
『詩季織々』予告篇
一方、韓国での人気について同著では、新海誠監督を世に知らしめた『ほしのこえ』(2002年)から始まっており、以降の新海誠作品全てがライセンスされていると紹介。

新海誠監督が海外のイベントや映画祭に本格的に訪れたのも、韓国が最初だという。
『ほしのこえ』予告編
2000年代から積み上げてきた信頼と人気が、最新作『すずめの戸締まり』の中国・監督における大ヒットにつながっている。

©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

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