花譜「不可解」完結編ライブレポ──カンザキイオリとの“別れと出発の物語”

“これは、別れと出発の物語”──「不可解参（想）」

圧巻のステージングを披露した花譜さんの足元に魔法陣のような光が浮かび上がると、そのまま舞台ごと空へ浮かび上がっていく。天井に空いた穴へ吸い込まれるように更なる高みへ上っていくと、カメラが概念武道館の外側を映し出した。花譜さんが昇っていったその先、概念武道館の上にはその何倍も巨大な建造物が繋がっており、加速していく上昇と共に花譜さんによる語りが始まった。「今宵世界は繋がる。これは、別れと出発の物語」その言葉と共に映し出されたのはライブタイトル「不可解」の文字。いくつもの感動を生み出した概念武道館での一幕は、まだプロローグに過ぎなかったのだ。

辿り着いた新たな空間は「記憶の器」。衝撃的な展開の連続に心臓のストックが尽きかけた観測者たちに「一緒に踊ってくれませんか？」と声をかける花譜さん。そのまま軽やかに言葉を紡いでいくと、両手を大きく広げて「花譜第四形態　雉」へと変化した。 エレベーターのようにステージが上昇を始める。そして「僕らのパーティを始めよう」という宣誓から始まったのは前回のライブでも繰り広げられたDJタイム「K.A.F DISCOTHEQUE（DJMIX）」。「フォニイ」から「マーシャル・マキシマイザー」、「きゅうくらりん」と音楽的同位体・可不の楽曲が矢継ぎ早にリミックスされていき、それに合わせてルンルンでステップを踏んだり腕を振り上げたりと、誰より楽しそうな花譜さんにほっこりさせられていると、まさかのイントロが轟く。

雷のように鳴る電子音から始まったのは「ラムのラブソング」だ。日本音楽史にその名を刻むハイパーポップソングで踊る花譜さんの姿は観測者を一人残らずメロメロに。つづく「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」では、所狭しと空間内を駆け回って幸福感をばらまいていく。

TVアニメ『うる星やつら』ソングの連打で和やかになったかと思えば、一転レーザーが飛び交う強烈な空間へと変わっていく。大気圏くらいは軽く越えたであろう勢いで上昇し続けるステージ。続いて届けられたのは「ノンブレス・オブリージュ」のカバー。ダンサブルにアレンジされた楽曲に合わせて、花譜さんはぴょんぴょん跳ねて可愛さを振り撒き、もはや歌わずともオーディエンスの感情を揺さぶるエンターテイナーっぷりを見せつけた。

KAMITSUBAKI STUDIOレーベルメイトたちとの協奏

永遠のように感じられた上昇が終わり、頂上へとたどり着くと、そこは様々な機材の並ぶ薄暗い空間「観測所」であった。全貌を見渡せぬままはじまった次なる曲は、花譜さんにとっての始まりの歌「糸」だ。デビューに際してつくられた最初のオリジナルソングを堂々と歌い上げると、お立ち台に上がってウィンクする余裕まで見せ、観測者たちのハートを一つ残らず撃ち抜いてみせる。 豊か過ぎる表情変化に呆気にとられていると、ステージ上に光の輪が現れ、その中からKAMITSUBAKI STUDIOの仲間であるゲストのCIELさんが合流。スペシャルなコンビで極上のポップチューン「私論理 feat.CIEL」を披露し、景色を一気にピンク色に染め上げると、向かいあって笑顔を交わしたり、跳ねるようなリズムに合わせてステップをシンクロさせたりと、最高の化学反応を生み出した。 余韻に浸る間もなく、続いてはKAMITSUBAKI STUDIOの姉妹レーベル・SINSEKAI STUDIOからAlbemuthの存流さんと明透さんが登場し、「戸惑いテレパシー feat.Albemuth」へ。相反する個性を持った2人に花譜さんの歌声も共鳴し、才能がスパークしてが眩い輝きを放つ。

MCを挟み披露されたのは、先日発表された新プロジェクト「prompt αU」のテーマ曲「あるふぁYOU feat.EMA」。「『prompt αU』とは一体なんなんだ？」と満面の笑顔と共に首を傾げて、真意を掴み取ろうとする観測者たちを軽く煙に巻くと、今度は隕石のような球体フォルムのDUSTCELL・EMAさんがオンステージ。 バーチャルとリアル、異次元が交差するセッションを通し、2人が才能をぶつけ合う様は破滅的なまでに美しく、螺旋のように重なり合う歌声が宇宙の果てまで伸びてゆく。あまりの迫力に耐えきれなかったのか「観測所」の壁が崩れ落ちていくと、砕け散ったバックディスプレイの先から射す橙色の光の中から、神出鬼没のバーチャルサーカス団・VALISが襲来。アバタースタイルで降臨した6人と披露したのは「神聖革命バーチャルリアリティー feat.VALIS」だ。

一糸乱れぬフォーメーションを展開するVALISを指揮者のように操りつつ、時には振りを合わせて、壮大な革命の凱歌を形作っていく花譜さん。ステップのキレにも成長を感じさせたところで、舞台は再び上の次元へと上昇を始める。