シンガーソングライター・大石昌良(オーイシマサヨシ)さんが12月23日、東京・中野サンプラザホールで「大石昌良の弾き語りラボ2022」を開催した。
ステージでは「東京ドームで弾き語りライブをやるまでは日本一を語れない」と大いなる野望を明かす場面も。今回はそんなワンマンライブのオフィシャルレポートをお届けする。
執筆:オグマフミヤ 撮影:大参久人
弾き語りラボの名の通り、弾き語りの向こう側を目指して研究を続けるという一見仰々しいテーマが掲げられているが、その中身はサービス精神旺盛なシンガーソングライターが、ハートフルなオーディエンスと共に誠心誠意を込めてつくりあげるエンターテイメントショーである。
全国9か所を巡る大型ツアーとなった「大石昌良の弾き語りラボ2022」、東京会場の中野サンプラザホールでの開催は3年ぶり。 前回の全国ツアーはコロナ禍以前で、音楽ライブを取り巻く環境はそれから大きく変わってしまったが、大石昌良さんの弾き語りへのこだわり、そして活動を支えるファンへの愛は、変わらないどころか益々燃え上がっていることを再確認させられた。
賑やかな音楽に誘われて、軽やかなステップでステージに躍り出た大石昌良さんが繰り出した1曲目は「ファイヤー!」、初っ端から遠慮なしのフルスロットルでオーディエンスのハートに火を点けると、「ピエロ」へと繋げてオープニングをゴージャスに彩る。
今回のライブは日常会話レベルでの声援が解禁された形での開催、念願のコール&レスポンスを煽って、以前のようにとはいかないものの確かに同じ空間で音楽を共有するライブの醍醐味を味わい尽くす。
ステージからの観測では6割が新規層というオーディエンスに対して、「弾き語りで日本一を目指すための研究機関」というライブコンセプトを丁寧に説明して次なる曲へ。
メロウな雰囲気を醸し出して突入したのは「幻想アンダーグラウンド」。ギター1本から繰り出されているとは思えない複雑なアンサンブルを奏でると、親戚であるアニソンシンガー・オーイシマサヨシの楽曲「楽園都市」のカバーも披露し、一気に大人の空気漂う都会の夜を演出してみせた。 「弾き語りには色んなスタイルがあるんですよ」と、長渕剛の「乾杯」を弾き語るスタンダードなフォークスタイルから、アコギを叩いてビートも刻むスラム奏法を紹介したところで、そんな数々のテクニックを駆使してつくった曲として「パラレルワールド」と「ボーダーライン」を披露。
色とりどりライトに照らされる中、何重にも折り重なる幻想的なサウンドを響かせると、さらにギアを上げて「トライアングル」へ。力強いストロークから放たれる鮮やかな旋律がオーディエンス一人ひとりの鼓動をさらに速める。欲しがりな視線をバラ撒いてシンガロングを煽れば、声は小さくとも確かにある一体感が空間の幸福度を底上げした。
ファンだけでなくアーティストの心も癒していた弾き語り配信からインスピレーションを受けて行われたのが「弾き語りリクエストコーナー」だ。
配信ライブではコメント欄からリクエストを募っていたが、今回は会場に集うファンからリクエストを募集するスペシャルバージョンで実施。
一人目からのリクエストのSuperfly「タマシイレボリューション」はさすがの大石昌良さんでも苦戦したが、その後SMAPの「夜空ノムコウ」やMr.Childrenの「抱きしめたい」、サンボマスターの「ラブソング」をとても即興とは思えない完成度で披露。
最後は自らの要望でキリンジの「エイリアンズ」を情感たっぷりに歌い上げると、ラボ本来の目的である弾き語りの研究を大いに前進させてみせた。
すっかり今夜の楽しみ方を心得たホールに、「オトモダチフィルム」から「君じゃなきゃダメみたい」とオーイシマサヨシの必殺ナンバーのカバーを連続で投下。 弾き語りに特化したスペシャルアレンジを施されたポップソングの惜しみない連打によって、ファンから抑えきれない歓声が上がると、それを受けて加速度的にパフォーマンスの強度を上げていく大石昌良さん。やはりこの男には、人々の歓声を浴びながら歌う姿が一番似合っているようだ。
天井知らずで熱気を高めるフロアをさらに燃え上がらせるように、間髪入れずに披露されたのは「ようこそジャパリパークへ」。もはや大石昌良さんのライブでも定番のスーパーキラーチューンに合わせ、オーディエンスからの「がおー」コールも鳴り響いて極上のハーモニーをつくりあげる。
煌びやかに展開した直前のブロックから一転、一条の光のみが照らす中で披露されたのは「耳の聞こえなくなった恋人とそのうたうたい」だ。静まりきったステージの上で愛の正体に迫る渾身のバラードを歌う様はまさしく絶唱と形容するしかなく、まるで目の前で一人ひとりへ向けて歌われているかのように、真っ直ぐな気持ちのこもった歌声がそれぞれの胸へ突き刺さる。
命を削るような全身全霊のパフォーマンスを繰り出す大石昌良さんの目にも涙が見えたが、そんな自身の様を「自分の歌で泣けるってヤバいね、キモいね。でも俺ずっとキモいヤツでいたいわ」と自虐しつつも誇る。 楽しいだけでなく涙腺まで刺激し、感情を激しく揺さぶる最高のショーを披露してなお進化を止める気配のない至極のエンターテイナーに万雷の拍手が送られる中、本編ラストとして届けられたのは「ただいま」。シンガーソングライターとしての本領が遺憾なく発揮された優しいメロディがホールの隅々にまで染み渡ると、何度も更新された最高の瞬間を再び塗り替え、颯爽とステージを後にした。
本編閉幕から一瞬たりとも収まらないクラップを受けて、Tシャツ姿に着替えた大石昌良さんが再び登場すると、アンコール1曲目はデビュー曲「ほのかてらす」を披露。ギター1本と身一つで情景を克明に描き出す、弾き語りの魅力を全開に表現して真なるフィナーレを「ストーリー」で飾る。
ステージの背後には夕空を映したようなオレンジの光が灯り、それぞれの日常へと繋がっていく特別な夜の終わりをドラマチックに演出した。やり切った表情の今夜の主役へ大きな拍手が降り注ぐ中、「さみしいけど、このさみしい気持ちを来年に繋げていきたい」と宣誓し、名残惜しそうにしつつも最後は笑顔で手を振って今宵の研究会は幕を閉じた。
ステージでは「東京ドームで弾き語りライブをやるまでは日本一を語れない」と大いなる野望を明かす場面も。今回はそんなワンマンライブのオフィシャルレポートをお届けする。
執筆:オグマフミヤ 撮影:大参久人
目次
大石昌良の弾き語りへのこだわりを再認識
「大石昌良の弾き語りラボ」は、アニソン作家にしてバンドマン、そしてシンガーソングライターとしても活躍する大石昌良さんが定期的に開催しているワンマンライブシリーズ。弾き語りラボの名の通り、弾き語りの向こう側を目指して研究を続けるという一見仰々しいテーマが掲げられているが、その中身はサービス精神旺盛なシンガーソングライターが、ハートフルなオーディエンスと共に誠心誠意を込めてつくりあげるエンターテイメントショーである。
全国9か所を巡る大型ツアーとなった「大石昌良の弾き語りラボ2022」、東京会場の中野サンプラザホールでの開催は3年ぶり。 前回の全国ツアーはコロナ禍以前で、音楽ライブを取り巻く環境はそれから大きく変わってしまったが、大石昌良さんの弾き語りへのこだわり、そして活動を支えるファンへの愛は、変わらないどころか益々燃え上がっていることを再確認させられた。
賑やかな音楽に誘われて、軽やかなステップでステージに躍り出た大石昌良さんが繰り出した1曲目は「ファイヤー!」、初っ端から遠慮なしのフルスロットルでオーディエンスのハートに火を点けると、「ピエロ」へと繋げてオープニングをゴージャスに彩る。
今回のライブは日常会話レベルでの声援が解禁された形での開催、念願のコール&レスポンスを煽って、以前のようにとはいかないものの確かに同じ空間で音楽を共有するライブの醍醐味を味わい尽くす。
「弾き語りには色んなスタイルがあるんですよ」
声援の解禁を不安に感じるファンに対しては隔離された特別席を設けるという細やかな配慮もあり、誰も置いていかないピースフルな雰囲気でライブがスタートしたところで「あなたの弾き語りピエロ、大石昌良です!」と改めて自己紹介。ステージからの観測では6割が新規層というオーディエンスに対して、「弾き語りで日本一を目指すための研究機関」というライブコンセプトを丁寧に説明して次なる曲へ。
メロウな雰囲気を醸し出して突入したのは「幻想アンダーグラウンド」。ギター1本から繰り出されているとは思えない複雑なアンサンブルを奏でると、親戚であるアニソンシンガー・オーイシマサヨシの楽曲「楽園都市」のカバーも披露し、一気に大人の空気漂う都会の夜を演出してみせた。 「弾き語りには色んなスタイルがあるんですよ」と、長渕剛の「乾杯」を弾き語るスタンダードなフォークスタイルから、アコギを叩いてビートも刻むスラム奏法を紹介したところで、そんな数々のテクニックを駆使してつくった曲として「パラレルワールド」と「ボーダーライン」を披露。
色とりどりライトに照らされる中、何重にも折り重なる幻想的なサウンドを響かせると、さらにギアを上げて「トライアングル」へ。力強いストロークから放たれる鮮やかな旋律がオーディエンス一人ひとりの鼓動をさらに速める。欲しがりな視線をバラ撒いてシンガロングを煽れば、声は小さくとも確かにある一体感が空間の幸福度を底上げした。
SMAPにミスチル、ファンからのリクエストに応える
コロナ禍からの歩みを振り返り「(コロナ禍になって)歌う場所がなくなってしまった、あれはキツかった。向こう一カ月の仕事も全部なくなってライブも飛んでしまって、どうしようかなと思っていた時に救ってくれたのが、自分のチャンネル(YouTubeチャンネル「大石昌良の弾き語りラボ」)だった」と語る。ファンだけでなくアーティストの心も癒していた弾き語り配信からインスピレーションを受けて行われたのが「弾き語りリクエストコーナー」だ。
配信ライブではコメント欄からリクエストを募っていたが、今回は会場に集うファンからリクエストを募集するスペシャルバージョンで実施。
一人目からのリクエストのSuperfly「タマシイレボリューション」はさすがの大石昌良さんでも苦戦したが、その後SMAPの「夜空ノムコウ」やMr.Childrenの「抱きしめたい」、サンボマスターの「ラブソング」をとても即興とは思えない完成度で披露。
最後は自らの要望でキリンジの「エイリアンズ」を情感たっぷりに歌い上げると、ラボ本来の目的である弾き語りの研究を大いに前進させてみせた。
オーイシマサヨシの必殺ナンバーをカバーで連続投下
音楽史に煌めく名曲たちから繋いだのは「ダイヤモンド」。「この季節にピッタリな曲を」と届けられたラブソングに合わせてオーディエンスからのクラップが鳴り、大石昌良さんもいつになく楽しそうにユラユラと音の波に身を任せる。すっかり今夜の楽しみ方を心得たホールに、「オトモダチフィルム」から「君じゃなきゃダメみたい」とオーイシマサヨシの必殺ナンバーのカバーを連続で投下。 弾き語りに特化したスペシャルアレンジを施されたポップソングの惜しみない連打によって、ファンから抑えきれない歓声が上がると、それを受けて加速度的にパフォーマンスの強度を上げていく大石昌良さん。やはりこの男には、人々の歓声を浴びながら歌う姿が一番似合っているようだ。
天井知らずで熱気を高めるフロアをさらに燃え上がらせるように、間髪入れずに披露されたのは「ようこそジャパリパークへ」。もはや大石昌良さんのライブでも定番のスーパーキラーチューンに合わせ、オーディエンスからの「がおー」コールも鳴り響いて極上のハーモニーをつくりあげる。
「東京ドームで弾き語りライブをやるまでは日本一を語れない」
すっかり盛り上がりきったところで「東京ドームで弾き語りライブをやるまでは日本一を語れない」と大いなる野望も打ち明け、いよいよクライマックスへ。煌びやかに展開した直前のブロックから一転、一条の光のみが照らす中で披露されたのは「耳の聞こえなくなった恋人とそのうたうたい」だ。静まりきったステージの上で愛の正体に迫る渾身のバラードを歌う様はまさしく絶唱と形容するしかなく、まるで目の前で一人ひとりへ向けて歌われているかのように、真っ直ぐな気持ちのこもった歌声がそれぞれの胸へ突き刺さる。
命を削るような全身全霊のパフォーマンスを繰り出す大石昌良さんの目にも涙が見えたが、そんな自身の様を「自分の歌で泣けるってヤバいね、キモいね。でも俺ずっとキモいヤツでいたいわ」と自虐しつつも誇る。 楽しいだけでなく涙腺まで刺激し、感情を激しく揺さぶる最高のショーを披露してなお進化を止める気配のない至極のエンターテイナーに万雷の拍手が送られる中、本編ラストとして届けられたのは「ただいま」。シンガーソングライターとしての本領が遺憾なく発揮された優しいメロディがホールの隅々にまで染み渡ると、何度も更新された最高の瞬間を再び塗り替え、颯爽とステージを後にした。
本編閉幕から一瞬たりとも収まらないクラップを受けて、Tシャツ姿に着替えた大石昌良さんが再び登場すると、アンコール1曲目はデビュー曲「ほのかてらす」を披露。ギター1本と身一つで情景を克明に描き出す、弾き語りの魅力を全開に表現して真なるフィナーレを「ストーリー」で飾る。
ステージの背後には夕空を映したようなオレンジの光が灯り、それぞれの日常へと繋がっていく特別な夜の終わりをドラマチックに演出した。やり切った表情の今夜の主役へ大きな拍手が降り注ぐ中、「さみしいけど、このさみしい気持ちを来年に繋げていきたい」と宣誓し、名残惜しそうにしつつも最後は笑顔で手を振って今宵の研究会は幕を閉じた。
「大石昌良の弾き語りラボ2022」中野サンプラザホール公演 セットリスト
2022.12.23.(FRI)
「大石昌良の弾き語りラボ2022」中野サンプラザホール公演 セットリスト
01 ファイヤー!
02 ピエロ
03 幻想アンダーグラウンド
04 楽園都市
05 パラレルワールド
06 ボーダーライン
07 トライアングル
【リクエストコーナー】
08 タマシイレボリューション
09 夜空ノムコウ
10 抱きしめたい
11 ラブソング
12 エイリアンズ
13 ダイヤモンド
14 オトモダチフィルム
15 君じゃなきゃダメみたい
16 ようこそジャパリパークへ
17 耳の聞こえなくなった恋人とそのうたうたい
18 ただいま
Encore
01 ほのかてらす
02 ストーリー
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