“ずつき”で毒を注入? 有毒生物は20万種以上
改めて。「毒」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか?毒きのこ、青酸カリ、ケシの実(モルヒネ)、etc……実際に見たり聞いたりした毒から、アニメや漫画で知った毒まで、意外とその数は多いはず。
その中でも気になるのは、毒を持った生き物たち。ちなみに、地球上には20万種類を超える有毒動物がいるといわれています。多ッ!
特別展「毒」の会場には、トビズムカデやヒトスジシマカ、キョクトウサソリなど、人を咬んだり刺したりすることで、皮膚のかゆみやかぶれ、痛みなどを引き起こす生き物・通称「毒虫(どくむし)」の展示も。
よだれ(唾液)に含まれた血液凝固阻害(血液毒)や血圧低下を引き起こす成分で、水牛のような獲物すらも捕食するコモドオオトカゲ(有毒爬虫類)。頭骨にある鋭い棘を“頭突き”で突き刺し、毒を注入してくるブルーノイシアタマガエル(両生類)など、毒を持った生き物たちのオールスターゲームの様相を呈しています。 もちろんハブクラゲやトラフグ、もはや名前を聞くと夏を感じると言っても過言ではない(個人の感想です)カツオノエボシといった海洋生物、数少ない毒を持つ哺乳類・カモノハシ、きのこをはじめとした菌類なども展示されていますよ。
意外なのは、有毒生物のイメージが強いヘビですが、実際に毒を持つのは全体の5分の1程度という事実。クサリヘビ科とコブラ科の全種、ナミヘビ科やイエヘビ科の一部などに限られているそうです。
不死身の肉体で何度でも毒を飲む人間たち
毒の歴史は人類の歴史……と言っても過言ではありません。やや勇み足に豪語しましたが、実際に毒を毒として解明するまでには、人間は古くから体当たりによる検証を続けてきました。あくまでも伝承や伝説であり、特別展「毒」では紹介されていませんが、一日一種さんが教えてくれたのが「神農(しんのう)」という人物。
紀元前3000年頃、古代中国の伝承に登場する神農または炎帝神農(えんていしんのう)は、草や木といった植物の薬効を調べるために、自らそれらを体内に摂取。
何度も中毒症状に見舞われてはその度によみがえる。文字通り伝説のような不死身の身体で、人々に薬としての効能を伝えたとされています。
また、古代エジプトを代表する存在のひとり・クレオパトラ7世は、自死に使う毒を極めるために、何人もの奴隷で様々な毒のテストを行った──そんな怖い言い伝えも。 とはいえ、これらはあくまでも伝承。
特別展「毒」では、人間が毒を使った最古の証拠をはじめ、ドクニンジンで処刑されたギリシャの哲学者・ソクラテスや、世界最古の百科全書『博物誌』を手がけたプリニウスなど、中世から近世、現代に至る毒と人類の歴史が紹介されています。
あなたの隣にあるものは毒ですか? 薬ですか?
「あらゆる物質は毒である。毒になるか薬になるかは、容量によるのだ」1490年代から1540年代にかけて実在した、医師で化学者で錬金術師でもあったパラケルススの言葉です。現代の「用法・用量を守って正しくお使いください」に通じる名言が、当時すでに確立されていたとは!
毒の性質を理解し、毒の正体を見抜いていたと評されるパラケルススは、当時流行していた梅毒に対する治療薬に水銀を提唱。 水銀が人体に対して有害であることを理解しつつも、適切な量を仕えた有効な薬になると考えた結果、前述の名言が導き出されました。
そうなんです。あらゆる物質は、毒なんです。もちろん今も。 タマネギ、ニンニク、ブドウ、チョコレート、ピーナッツなども、イヌやネコにとっては有毒な食べ物になります(もちろんヒトにとっても食べ過ぎはよくないですよ!)。
タバコに含まれるニコチンや、身近なアルコールも神経毒の一種。お刺身が美味しいマグロもメチル水銀を含むため、妊婦や幼児等は食べ過ぎに注意が必要とされています。
パラケルススの名言を噛み締めて生きていきましょう。
毒からは逃げられない、だから「正しく知って、正しく恐れる」
特別展「毒」を通じて強く感じられるのは、「毒からは逃れられない」ということ。「身の回りにはこんなにも毒であふれてるのか!」と驚くと同時に、「意外と毒とうまく付き合ってるんだな」とも実感できるはず。
もっと言うと、地球の温暖化などの気候変動や国際的な物流は、新たな環境へ毒生物の分布を広げる一因となっています。つまり、私たち人間の活動が新たな毒を生み出してもいます。
いったいどうすればいいんだ……!
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