可不がボカロシーンにもたらした変化
あらき 歌う人が増えたのもそうですが、「マーシャル・マキシマイザー」って明らかにそれまでの曲と方向性が違うじゃないですか。実は、どういう目論見であの曲を出したか聞きたかったんです。柊マグネタイト あれは……ちょっとまだ話せない背景もあるんです。いつかどこかでちゃんと明かせたらと思っています。
──リリースがあの順番でなければならない理由が、ご自身の中にあったんですね。
あらき 曲を書いてる人って、おそらく流行りとか、どういう曲がウケるとかって、ある程度は把握されていると思うんですよね。基本はああいう1枚絵で尺は3分ちょっと、サビではパキッとしたわかりやすい音で……みたいな。
「マーシャル・マキシマイザー」はそういう要所は確実に押さえてるんですけど、完全に流行りに流されるわけではなくマグネタイト節はしっかりと効いている。 あらき 初めて聴いたときは「今度からこっち路線に行くのかな?」と思ったんですけど、よくよく聴いてみると、「自分のスタイルにすげえうまいこと組み込んできたんだな」って。斬新ですごくよかったです。
──最近は可不にはじまり、バーチャルシンガーのボイスを使用した音声ソフトも出てきています。実際に使われてみてどうですか?
柊マグネタイト 選択肢が増えたことで、つくれる曲調が増えた人は多いんじゃないかなと思います。
VOCALOIDももちろんすごく好きなんですが、CeVIO AI、特に音楽的同位体(※)が出て、できることがかなり広がりました。CeVIO AIはVOCALOIDよりも人間に近いけど、人間とも違う。VOCALOIDはすごく高い音域も低い音域も出るんですけど、CeVIO AIは高い音域にいくとちゃんと声が苦しそうになるんです。
そのリアルさが逆によくて。人間が歌える音域の曲に自然と仕上がるので、歌い手さんも歌いやすかったりするのかもしれない。
※音楽的同位体:KAMITSUBAKI STUDIOに所属するバーチャルシンガーたちのボイスを用いて制作された人工歌唱ソフトウェア。現在は花譜さんをもとにした「可不」、ヰ世界情緒さんをもとにした「星界」、理芽さんをもとにした「裏命」が発表されている。
あらき めっちゃ理にかなってますね。歌う側としても、原曲が音楽的同位体を使っているものを選べば、歌いやすいものが多いってことですね。
あらきが考える、ボカロ楽曲を人間が歌う楽しさ
──ボカロ楽曲を人間が歌う。あらきさんがその難しさを感じるのはどんなときですか?あらき 難しいのは、滑舌ですかね。特に自分で歌わずにつくる人の場合、めっちゃ厄介な歌詞の組み合わせになっていることがあるんです。その上でテンポが速かったり高音だったりすると、人間の我々にはもう全然発音できないんですよ。
たとえば、極端な例ですけど「かかかかか」って「か」が5回続く歌詞があるとします。そういうのが高速かつ高い音域だと、どう頑張っても発音できない。そういう難しさを持つ曲が昔はよくあったんです。最近のボカロ曲は歌いやすいものが多いですね。 ──では逆に、ボカロ楽曲を歌って楽しいと感じるポイントも教えてください。
あらき 完全にシンガー目線の表現なので適切かわかりませんが、「その曲を塗り替えられたかどうか」みたいなところですね。
「この無機質な世界にどう自分の個性と生命を入れ込むか」という挑戦をしている感じです。それこそ可不、あるいはv flowerとかを使っている曲はかなり人間っぽいので、原曲から癖がある場合もありますが。
もちろん歌ってみたは原曲のパワーがあってこそのものですけど、その上で曲を自分色に染め上げられたのであれば、それはもう楽しいですよね。
1件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:10153)
コラボしてたんまじか