「歌い手がいるから、ボカロPは孤独じゃない」あらき×柊マグネタイト対談

「歌い手がいるから、ボカロPは孤独じゃない」あらき×柊マグネタイト対談
「歌い手がいるから、ボカロPは孤独じゃない」あらき×柊マグネタイト対談
2020年の冬から、ドワンゴがニコニコ動画上で年2回、春と秋に開催しているボカロの祭典「The VOCALOID Collection」(ボカコレ)。

すでにボカロシーンでは有数の大規模イベントであり、「The VOCALOID Collection ~2022 Autumn~」が前夜祭も含めて10月7日(金)から10日(月)にかけて開催される。

前回のボカコレからは「歌ってみた Collection(歌コレ)」が、今回からは「踊ってみた Collection(踊コレ)」が新設され、ボカロをベースにカルチャーを越境する企画を展開中だ。

記念すべき初回のボカコレで見事ルーキーランキング1位に輝き、今やボカロシーン随一のヒットメーカーであるボカロP・柊マグネタイトさん。歌い手としての活動歴は9年を超え、前回の「歌コレ2022春」では2位にランクインし実力を見せつけた歌い手/アーティスト・あらきさん。

実は楽曲提供などを通して接点も多い両者が、「ボカコレ2022秋」を前に初対談。「惹かれ合っていた」という2人のトークは白熱。お互いの魅力から、ボカロP・歌い手双方の視点から見たシーンの現状へと発展した。

柊マグネタイトさん:2020年9月から活動を開始。2020年のボカコレでは「終焉逃避行」でルーキーランキング1位を獲得した。その後は「マーシャル・マキシマイザー」などを手掛け、ボカロシーン随一のヒットメーカーとして知られる。

あらきさん:2013年に活動を開始。ニコニコ動画・YouTubeの総動画再生数は2億回を超える。ソロ名義での活動のほか、同じく歌い手のめいちゃんさん、nqrseさんとユニット「あらなるめい」としても活動している。

取材・文:ヒガキユウカ 撮影:稲垣謙一 編集:小林優介 ヘアメイク:竹内 奈奈 (M’s hair&make-up)

目次

昔から惹かれ合っていた、あらきと柊マグネタイト

Zoomなどでは顔を合わせたことがあっても、実際に会うのは初めてだというあらきさん(写真奥)と柊マグネタイトさん(写真手前)

あらき わあ、本物だ……!

柊マグネタイト いやいや、こっちのセリフです(笑)

──あらきさんは、柊マグネタイトさんが第1回ボカコレでルーキー1位になる以前に、柊マグネタイトさんの楽曲「旧約汎化街」を歌われていましたね。

柊マグネタイト めちゃくちゃびっくりしました。動画を見たときは「あらきさんが旧約汎化街歌ってる!」って、嬉しくて家の中で踊ってました。
あらき マグネタイトさんの1作目「或世界消失」も知ってはいたんです。難しくて歌えなかったんですけど……。

一人だけ作品の毛色が違いすぎて、俺からするとボカコレで名を上げる前から印象的だったんですよ。他にない曲調や雰囲気、ブランド力みたいなものがすでにあると感じてました

歌詞も語彙力があって、自分も一応詞を書くときは辞書を引いて調べているのに、こんな単語見たことねぇなっていうワードが入ってくる。特殊な造語っぽい読ませ方をしていることもあるんで音や韻の響きを重視していると思うんですが、そこに深い意味も隠れてるならすごいなと思って聞いてます

柊マグネタイトさんの魅力を語るあらきさん

柊マグネタイト 両方ありますね。韻の響きや音楽的な響きはすごく大事にしつつ、読みと表記を変えることで、バランスを取ってます。そこを見ていただけるのは嬉しいですね。

──柊マグネタイトさんは、もともとあらきさんをご存じだったのでしょうか?

柊マグネタイト 高校生ぐらいから知ってましたね。動画タイトルに「青森出身なのに」を入れて歌ってみたを投稿されていた初期の頃から見かけていたんですけど、ちゃんと聴き始めたのは2017年の「スーサイドパレヱド」からです。

自分もこんなふうにかっこよく歌えたらいいな」と思って、カラオケで真似して歌ってました。あらきさんの歌声って、自分が一番好きなタイプのかっこよさなんです

柊マグネタイトさんも昔からあらきさんのファンだったと熱弁

あらき いやあ、嬉しいですね。俺は基本すべてにおいてかっこよければいいと思っていて、それが自分の中の芯にもなってます

その「かっこいい」の基準は俺の脳内にしかないんですけど。これまで9年活動してきて、それが徐々に伝わってきてるんだなと感じますね。

あらきが確信した柊マグネタイトのヒット

──その後2021年には、柊マグネタイトさんがあらきさんのアルバム『UNKNOWN PARADOX』に楽曲「夢現境界層」を提供されています。

あらき 「旧約汎化街」の歌ってみたを上げた後、すぐに自分からお声がけしました。絶対にヒット作を生む人物だろうと確信していたので、「先につばつけておかなきゃ!」と(笑)。

アルバムのコンセプトともマッチする作風の方だと思っていたので、タイミングもよかったですね。

柊マグネタイト 本当にすぐでしたよね。めちゃくちゃ嬉しかったです。 ──2022年8月にリリースされたアルバム『IDEA』収録の「リロード」もご一緒されています。柊マグネタイトさんに依頼するとき、どんなオーダーをされるのでしょうか?

あらき 作家のみなさんに対してなんですけど、基本的には個々の特色を活かしてもらいたいんですよ

マグネタイトさんの場合は、エレクトロで硬質なイメージを受けるザクザクしたような音使いと難解な歌詞。そういったところが特性だと思っていたので、そこは潰してほしくなかった。

アルバムのコンセプトはお伝えしましたけど、あんまり気にせずつくってもらえたら、というスタンスでしたね。

──柊マグネタイトさんは、「夢現境界層」のお話があった時点で楽曲提供のお仕事はまだそんなに?

柊マグネタイト はい、あらきさんが初めてでした。

あらき えー! 光栄です。

「光栄です」と、あらきさんが思わずお辞儀する場面も

柊マグネタイト 初めての楽曲提供があらきさんですごく嬉しかったです。『UNKNOWN PARADOX』の世界観は、自分でも相性がいいと思っていました。

あらき 最近のご活躍を見ていると、楽曲を提供されることが増えてますよね。なんだか自分も嬉しいです。

柊マグネタイト それはあらきさんが歌ってくださったことで、知ってくださった方がかなり多いんだと思います。「そもそも、柊マグネタイトの曲って人間に歌えるんだ」という意味でも。

あらき 俺もそうですが、ウォルピスカーターも「終焉逃避行」の歌ってみたを投稿してましたね。それでもやっぱり、「マーシャル・マキシマイザー」から柊マグネタイトさんの曲を歌う人が増えたと思います。

1
2
3

SHARE

この記事をシェアする

Post
Share
Bookmark
LINE

1件のコメント

※非ログインユーザーのコメントは編集部の承認を経て掲載されます。

※コメントの投稿前には利用規約の確認をお願いします。

匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:10153)

コラボしてたんまじか

コメントを削除します。
よろしいですか?

コメントを受け付けました

コメントは現在承認待ちです。

コメントは、編集部の承認を経て掲載されます。

※掲載可否の基準につきましては利用規約の確認をお願いします。

POP UP !

もっと見る

もっと見る

よく読まれている記事

KAI-YOU Premium

もっと見る

もっと見る

音楽・映像の週間ランキング

最新のPOPをお届け!

もっと見る

もっと見る

このページは、株式会社カイユウに所属するKAI-YOU編集部が、独自に定めたコンテンツポリシーに基づき制作・配信しています。 KAI-YOU.netでは、文芸、アニメや漫画、YouTuberやVTuber、音楽や映像、イラストやアート、ゲーム、ヒップホップ、テクノロジーなどに関する最新ニュースを毎日更新しています。様々なジャンルを横断するポップカルチャーに関するインタビューやコラム、レポートといったコンテンツをお届けします。

ページトップへ